炎の国の王の花

明樹

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番外編 炎の国の王カエン

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俺は、報告を聞いて、すぐにリオが手当を受けている部屋に駆けつけた。
「リオ!」と叫んで部屋に飛び込むと、すでにローラントおじさんとシアンがいた。

「カエン様、リオが心配なのはわかりますが、臣下の手前、落ち着いて行動してください」
「わかってるけどっ、リオがっ…」

リオが寝かされているベッドに飛びつく俺に、シアンが注意をする。
俺を立派な王にする為にだけど、シアンは宰相になってから厳しい。

「まあまあ。シアンも慌ててたじゃないか。カエン、リオは大丈夫だよ。背中をかなり大きく斬られてはいるが、深い傷ではないようだから」
「本当に?…よかった」

ホッと安堵の息を吐いた俺の頭を、ローラントおじさんが撫でてくれた。

ローラントおじさんは、いつも穏やかで優しい。それに何かと俺を支えてくれる。
頭も良くて王になるのに相応しいと思うのだけど、その話を出すとすごく怒るんだ。
そして俺のことを様づけで呼ぼうとするから、そこは俺も頑として認めなかった。

「一体何があったんだろう…。海辺の城から戻って来る途中で、賊に襲われたのかな…」
「いえ、それは考えにくいと思われます。我が炎の国に、現在賊はほとんどおりません」
「でもっ、他の国から侵入して来たのかもしれない」
「まあ…それは考えられないこともないですが…。 ここ数年は、他国との関係も安定しています。でも賊ではないなら、誰に斬られたのか…」
「とりあえず、リオが目覚めるまで休ませてやろう。カエン、リオが目覚めたらすぐに呼ぶから、部屋で休んでおいで」

俺は、首を振って、ベッドの横にある椅子に座った。

「ここにいるよ。何があったのか気になって、どうせ休めないから…。父さまに連絡は?」
「すぐに使いの者を向かわせました」
「そう。シアンとローラントおじさんも休んでよ。ここには俺がいるし」
「いえ、俺もここに残ります。ローラント様は、部屋へお戻りになってください」

シアンが、ローラントおじさんに頭を下げる。
ローラントおじさんは、顎を擦りながら「そうだな」と呟いた。

「リオが目覚めたら話を聞いたり、襲った者がいるなら、その者の捜索もしなければならない。忙しくなりそうだし、今は部屋で休ませてもらうよ。リオが目覚めたら知らせて欲しい」
「承知致しました」

ローラントおじさんが、もう一度俺の頭を撫でて、出て行った。
俺は、両手を握りしめて、リオの顔を見つめた。
中央の城に戻る道中で襲われたなら、被害者はリオ一人だ。
だけど、もし海辺の城が襲われていたなら?
父さまに命令されて、リオだけ逃げて来たのだとしたら?そうだとしたら、父さまは…。

自分の考えに怖くなって、俺はゾクリと身震いをした。



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