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誰かがエイルリスを呼んでいる。しかも耳元で。その声が少しずつ大きくなっていく。うるさい。聞こえているから黙ってくれ。
「ルリス!」
「うるさいっ」
エイルリスは怒りながら起きた。起きて瞬時に悟る。ここはベッドの上だ。部屋の様子からして医務室だ。そして目の前に、安堵した顔のアレンがいる。
「よかった…。手を切っただけなのに、あまりにも目を覚まさないから、傷口から毒か菌が入ったのかと心配したよ…」
「手…?」
エイルリスは、ぼんやりとアレンを見て、次に手のひらを見た。
右手には包帯が巻かれている。そうだ。割れたガラス瓶で切ったのだった。アレンに運ばれて医務室に来たのか。あの時の状況を思い出すと恥ずかしくて腹が立つから触れないでおこう。と思ったが、アレンが見つめてくるから嫌でも思い出してしまう。
エイルリスは、小さく息を吐き出した。
「…りがと」
「ん?なに?」
「…ありがとう」
「あ、ここまで連れてきたこと?全然余裕だよ。だってルリス、軽いからさ」
「誰かに見られたか?」
「えー?どうだろう。俺はルリスのことしか見てなかったけど、見られたかなぁ」
「……」
絶対に見られている。しかもかなり目立っていただろう。くそが。静かな学園生活を望んでいたのに。今後、他の生徒が絡んでこないことを祈る。
「どうしたの?痛い?鎮痛薬を飲ませたんだけど…効きが悪いのかな?」
「…別に痛くない」
エイルリスは、アレンから顔を背けた。
こんな傷、平気だ。切り傷くらいなら、力を使えば治せる。エイルリスは人ではないのだから。
でも使わない。アレンに知られたくないからではない。知られたって構わない。それでアレンが気味悪く思って離れてくれたなら、清々する。力を使いたくないのは、力を溜めているからだ。ある理由のために。
その時ベッドが軋み、エイルリスが低い声を出した。
「何をしている」
「え?何が?」
あろうことか、アレンがベッドに腰かけ、エイルリスの肩を抱き寄せた。そしてエイルリスの頭に唇をつけて囁いた。
「なあ、ルリスのきれいな手…傷が残るって。しばらくは傷を消毒して包帯を変えないといけないんだけど、俺がルリスの部屋に行っていい?」
「…なんでだ」
「俺が変えてあげたいから。それともルリスが俺の部屋に来る?ブルースター寮なんだけど。ルリスはポインセチア寮だよな?」
「なぜ知ってる」
「調べた。ルリスのこと知りたいから」
「ストーカーかよ。それに包帯くらい自分でできる。だから絶対に来るなよ」
「えー、残念」
「残念じゃねぇし早く離れろ」とアレンを睨む。
アレンは名残惜しそうにしながらも、素直にエイルリスから離れベッドを下りた。
その時、鐘の音が聞こえた。
エイルリスは壁の時計を見て驚く。
「うそだろ…十四時?」
「うんそう。あまりにもよく眠ってるから、心配したんだよ。でもきっと、ルリスは疲れてたんだな。よく眠って疲れは取れた?」
「信じられない…」
「ルリス?」
エイルリスの耳に、アレンの声は入っていない。よく眠ったことに衝撃を受けていたから。
悪夢も見なかった。学園に来て初めてのことだ。どうしてよく眠れたのかもわからない。傷口に消毒液を塗られたから?薬を飲まされたから?そのせいか?
ブツブツと呟くエイルリスに、アレンが話しかける。
「寮まで送るよ。ルリスと俺の荷物を取ってくるから待ってて」
「…え」
エイルリスの返事を待たずに、アレンが出ていく。
エイルリスは、まだ放心状態だ。なぜ眠れたのかが、気になって仕方がない。
寮のベッドより医務室のベッドの方が良かったのだろうか。
考えに夢中で手のひらを強く握りしめていたために、包帯に血が滲んできた。
「ルリス!」
「うるさいっ」
エイルリスは怒りながら起きた。起きて瞬時に悟る。ここはベッドの上だ。部屋の様子からして医務室だ。そして目の前に、安堵した顔のアレンがいる。
「よかった…。手を切っただけなのに、あまりにも目を覚まさないから、傷口から毒か菌が入ったのかと心配したよ…」
「手…?」
エイルリスは、ぼんやりとアレンを見て、次に手のひらを見た。
右手には包帯が巻かれている。そうだ。割れたガラス瓶で切ったのだった。アレンに運ばれて医務室に来たのか。あの時の状況を思い出すと恥ずかしくて腹が立つから触れないでおこう。と思ったが、アレンが見つめてくるから嫌でも思い出してしまう。
エイルリスは、小さく息を吐き出した。
「…りがと」
「ん?なに?」
「…ありがとう」
「あ、ここまで連れてきたこと?全然余裕だよ。だってルリス、軽いからさ」
「誰かに見られたか?」
「えー?どうだろう。俺はルリスのことしか見てなかったけど、見られたかなぁ」
「……」
絶対に見られている。しかもかなり目立っていただろう。くそが。静かな学園生活を望んでいたのに。今後、他の生徒が絡んでこないことを祈る。
「どうしたの?痛い?鎮痛薬を飲ませたんだけど…効きが悪いのかな?」
「…別に痛くない」
エイルリスは、アレンから顔を背けた。
こんな傷、平気だ。切り傷くらいなら、力を使えば治せる。エイルリスは人ではないのだから。
でも使わない。アレンに知られたくないからではない。知られたって構わない。それでアレンが気味悪く思って離れてくれたなら、清々する。力を使いたくないのは、力を溜めているからだ。ある理由のために。
その時ベッドが軋み、エイルリスが低い声を出した。
「何をしている」
「え?何が?」
あろうことか、アレンがベッドに腰かけ、エイルリスの肩を抱き寄せた。そしてエイルリスの頭に唇をつけて囁いた。
「なあ、ルリスのきれいな手…傷が残るって。しばらくは傷を消毒して包帯を変えないといけないんだけど、俺がルリスの部屋に行っていい?」
「…なんでだ」
「俺が変えてあげたいから。それともルリスが俺の部屋に来る?ブルースター寮なんだけど。ルリスはポインセチア寮だよな?」
「なぜ知ってる」
「調べた。ルリスのこと知りたいから」
「ストーカーかよ。それに包帯くらい自分でできる。だから絶対に来るなよ」
「えー、残念」
「残念じゃねぇし早く離れろ」とアレンを睨む。
アレンは名残惜しそうにしながらも、素直にエイルリスから離れベッドを下りた。
その時、鐘の音が聞こえた。
エイルリスは壁の時計を見て驚く。
「うそだろ…十四時?」
「うんそう。あまりにもよく眠ってるから、心配したんだよ。でもきっと、ルリスは疲れてたんだな。よく眠って疲れは取れた?」
「信じられない…」
「ルリス?」
エイルリスの耳に、アレンの声は入っていない。よく眠ったことに衝撃を受けていたから。
悪夢も見なかった。学園に来て初めてのことだ。どうしてよく眠れたのかもわからない。傷口に消毒液を塗られたから?薬を飲まされたから?そのせいか?
ブツブツと呟くエイルリスに、アレンが話しかける。
「寮まで送るよ。ルリスと俺の荷物を取ってくるから待ってて」
「…え」
エイルリスの返事を待たずに、アレンが出ていく。
エイルリスは、まだ放心状態だ。なぜ眠れたのかが、気になって仕方がない。
寮のベッドより医務室のベッドの方が良かったのだろうか。
考えに夢中で手のひらを強く握りしめていたために、包帯に血が滲んできた。
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