狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「なんだ。俺達は今から領地に帰るところなのだが」
「わかっている。だが火急の事態だ。ギデオン、領地に戻ったら、すぐに腕の立つ者数名を率いて西の国境に迎え。俺も行く。王命だ」
「なぜ?」
「俺も詳しくはわからんが…こちらへ」

 ビクターが、ギデオンを建物の陰に呼ぶ。
 顔を寄せて話している二人の顔が、険しくなる。しばらくしてギデオンが戻り、ビクターは「頼んだぞ」と険しい顔のまま言うと、王城へと去って行く。
 リオもアトラスも、ジスもニコラも、他の者たちも、皆不安そうにギデオンを見ている。
 ギデオンは「街を出たら話す」とだけ告げ、馬に乗った。

 街を出て森に入り、拓けた場所で馬を降りて集まった。近くに人がいないことを確認して、ギデオンが静かに話し出す。

「緊急事態だ。西の国との国境沿いに、また強大な魔獣が現れた。それも数体だそうだ」
「なんとっ!」

 ニコラが驚きの声を出す。
 一番に声を出しそうなアトラスは、驚きのあまり固まっている。

「先ほどのビクター様は、そのことを告げに来たのですね」
「そうだ。まだ魔獣による人的被害はないが、急ぎ行かねばならぬ。そしてどうやら、魔獣を操っている人物がいるらしい」
「魔獣を操る?」

 リオ以外の者が、一斉に声を出した。魔獣を操るなんて聞いたことがないからだ。

「魔獣の近くに人がいたらしい。報告によると、高貴な身なりをしていたそうだ。まさかとは思うが、王族かもしれぬ」

 話を聞いたリオは、衝撃で全身が熱くなる。
 高貴な身なり、きっとアシュレイだ!だとしたら、デックに連れ去られた時に聞いた話と違うじゃないか。魔獣を利用するが、少しずつこの国を乱すのではなかったのか。アシュレイとデックの二人で、少しずつ侵略する計画ではなかったのか。
 それなのに、数体もの魔獣を動かした?それって、デックはどれほどの魔法を使ったのか。
 リオの握りしめた拳が震える。
 デックはそれでいいのか?生まれ育った国が、民が、壊されても平気なのか?助けられた恩があるからって、なぜそこまでアシュレイに協力するんだよ。自分の身体に、とんでもない負担もかかるのに。
 考え込んでいたリオは、ギデオンの声に顔を上げる。

「領地に戻るとすぐに準備をして国境へ向かう。皆もそのつもりで行動してくれ」
「承知いたしました」
「リオは…」
「行く!」
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