狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「ギデオン様、おはようございます。起きていらっしゃいますか?」

 最後にチュッと音を鳴らして顔を離すと、ギデオンはベッドを降りた。
 リオもベッドから出て、窓の近くの長椅子で寝そべっていたアンの傍に行く。
「何用だ」と部屋を出ていくギデオンの後ろ姿を見送って、アンの顔を見た。

「アン、ありがとう。熱が下がったよ」
『リオの体調管理は俺に任せろ。あやつは薬が効いたと思ってるようだが』
「薬も効いたと思うよ?」
『俺の治癒力の方が優れている』
「アンって負けず嫌いだよね」
『神獣だからな』
「そうなの?」
『そうだ』

 リオは「ふふっ」と笑って、着替えるために立ち上がった。
 アンを拾った時は、小さくて可愛くて愛おしく思っていたけど。中身はこんなにも不遜ふそんな性格だったなんて思いもしなかった。そのことが何だか可笑しくて、つい笑ってしまう。
 着替えと洗顔が終わり、朝餉あさげを食べるためにアンと部屋を出て食堂へ行く。食堂にはアトラスとジス、家や領城に戻らずにここに残った数名の騎士がいた。
 リオを見つけるや否や、アトラスが走り寄ってくる。そしてリオの腕を引っ張り、ジスもいる席へと座らせた。
 ジスがリオに軽く手を挙げる。

「おはようリオ。アンも」
「おはよう、アトラス、ジス。なに?何かあったの?」
「何かあったのはリオだろぉ。熱が出たんだろ?もう大丈夫か?」
「うん、大丈夫。でもなんで知ってるんだよ」

 アトラスがジスと顔を見合せ、ニヤリと笑う。

「だってさ、昨夜ギデオン様が慌ててたからね。いつも冷静沈着、冷酷非情なギデオン様が、寝ていた医師を叩き起して薬を受け取っていたからね。これはリオに何かあったなって思ってさ」
「おまえ…冷静沈着はいいとしても、冷酷非情は怒られるぞ」

 ジスが呆れたようにアトラスをたしなめた。
 アトラスは「え?」と慌てて周囲を見回し、ふぅと息を吐く。
 相変わらず落ち着きがないと、リオはホッとした。昨日の辛い記憶が、アトラスを見ていると少し和らぐ気がする。それに昨日、リオとギデオンがいなかったことは、アトラス達は知らないようだ。ニコラがうまく立ち回ってくれたのかもしれない。

「リオ、食事を取ってこいよ。元気になったなら、たくさん食え」
「うん。ありがとう」

 ジスに言われ、リオは自分とアンの食事を取りに行き、トレイを持って戻り、食事を始めたところでジスが話を切り出した。

「ところで、今朝早くに領城から手紙が届いたそうだ」
「手紙?ゲイルさんからかな?」
「そう。だからすぐに、ここを出ることになるぞ」
「ふーん。何があったんだろ」

 パンを口に入れ咀嚼そしゃくしながら、リオは思う。
 もうアシュレイはいない。だから国境に敵兵が現れたという心配はないはずだ。だとしたら何だろう。今回のことで、また報告しろと王様からギデオンに招集がかかったのかな。

「でも、領城に戻れるのは嬉しいね」

 リオがそう言うと、アトラスとジスも頷いた。

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