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後日談と日常の幸せ
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近くのカフェに移動して少し休憩して、ようやく落ち着いた頃。
「えっと、詩さん。本当にありがとうございました。おかげでいろいろ無事でした」
「ほんとうに間に合って良かったわ」
「ところであの人達はどちらさまなんでしょう?」
「まぁ、その筋の人たち、かしら?」
「もしかして詩さんも、その筋の方だったり、するんですかね......?」
彼らの正体は予想通りではあったが、そんな彼らを呼べる詩が何者なのか、非常にに気になっていた。
「うふふっ。違うわ。私は一般人。ただたまたま知り合っただけよ」
「あんな人たちと出会うことなんてあります!?」
「えっと、神夏磯くんを監s......じゃなくて遠くから護るために、あるお店でいろんなグッズを定期的に買ってたの。
彼らもそこの常連で仲良くなった、って感じかしら」
「え、えぇ~?」
困惑する梨樹人をよそ目に、優雅にコーヒーに口をつける詩。
そんな詩を見て、ここまであまりに怒涛の展開であったためにすでに多少のことは気にならなくなっていた梨樹人は、助けてくれた詩に嬉しい気持ちだけが湧いてくる。
「えっと、なにか、なにか御礼をさせてもらいたいんですけど!」
「そうねぇ」
考え込むそぶりを見せる詩だったが、すぐに答えが見つかったようで。
「うん、決めたわ」
「なんでしょう、僕にできることなら、マジでなんでもやりますよ!」
「そう?じゃあ、遠慮なく言わせてもらうわね?」
「は、はい!」
「まずは、これから私に敬語を遣わないこと」
「そ、そんなことでいいんですか?」
「えぇ、前から距離があるみたいでいやだったの。それと......」
「それと?」
「今晩と明日、お休みよね?」
「あ、えぇ、まぁそうですね」
「敬語」
「あっ!すみません!......じゃなくて!ごめん!」
「ふふっ。まぁ少しずつ慣れていきましょう?それで、もう1つお願いなのだけど......」
「この後、私を女にして?」
頬に朱がさした可愛らしい顔でこてっと首をかしげながら、梨樹人にとってご褒美としか思えない質問をしてくる。
そんなん、答えは言うまでもないだろうけど。
「よろこんで」
*****
時は流れ、梨樹人は今年で36歳になる。2年前、なんとか業績が認められて准教授への昇進が叶い、ようやく少し落ち着いてきたところである。
これまでいろいろあったわけだけど、この数年間の詩(うた)さんと過ごす日々はまさに幸せと形容する他ないものだった。
「あのさ詩さん。最近疲れてるみたいだからしばらくご飯と掃除の当番は俺がやっちゃってもいいかな?」
「だめよ!あなたも仕事で疲れてるんだから分担しているところは私がやるの!」
「僕は全然だいじょうぶ!むしろ詩さんにご奉仕させてもらうことで体力が回復するんです!」
「も~っ、そんなわけないでしょぉ~。でも、気を使ってくれてありがとうね。優しいポイントあげちゃいます!」
「詩さんはそうやってすぐポイントくれようとする!」
「だってホントに優しさに溢れてるんだもん♫」
「くぅ~やっぱり詩さんは最高だぜ!」
読者諸氏におかれましては、突然なんの茶番が始まったのか不思議に思っているところであろう。
現在、梨樹人と詩は結婚して6年目。付き合い始めたころから考えるとすでに10年が経過しようというにも関わらず、このバカップルっぷりは衰えるどころか加速度を増して、宇宙速度へと到達せんばかりに膨れ上がっている。
それから敬語、丁寧語は、未だに抜けきれないまま、ラブラブになっている。
とはいえ、当然こんなお花畑なやりとりばかりをしているわけではない。たま~には真面目な話もする。
「でもさ、あんまり気を遣われちゃうとさ、信用されてないのかなとか、思っちゃいそうなんだよね。
そうじゃないってのはわかってるんだけどさ。
だから、やっぱり信用を形で示すために僕に家事任せてもらえたりしないかな?」
「あなたこそ、私の仕事を奪って私なしでも生きていけるようにするつもりなのかなぁ、とかありえないことも考えちゃうの......だから私にドロドロに甘えてほしいの!だめかしら......?」
「ぐはぁ!!!」
すみません、真面目な話じゃありませんでした。
「どうしたの!?」
急に吐血する梨樹人に、心配そうに駆け寄る詩。
茶番とわかっていてもノってくれる。
こういう部分に梨樹人はどうしようもなく惹かれてしまう。
「あまりにも素敵過ぎる!素敵なお嫁さんポイントを進呈いたします!
でも家事は譲れません!でも詩さんが心配ということなら、その分、夜にいっぱいヨシヨシさせてもらって、それから...ぐふふ。そういうことでいかがでしょうか!」
「うふふ♫
全くもぅ。りきくんったら相変わらずいやらしいんだから♫
わかりました、じゃあちょっとだけお願いしてもいいかしら?」
「はい!よろこんで~!」
これもただのイチャつきに見えるかもしれないし、実際にそういった側面も否定できない。
ただ、2人にとってこの会話にはそれなりの意味がある。
「自分が思っていることや不安に感じていることを互いに言葉にして伝えること」が、お互いを気遣い合える関係を築く上でいかに大事か、認識を共有しているのである。
その上で、こうしてお互いの弱みを赤裸々に話し合って、自分が思ってることをぶち撒けあってなお、完全にわかり合って信じ切るのは原理的に難しいことも共有している。
それでも、それを理解しようとする努力をしよう、という共通認識を築いており、このイチャつきはそれを実践しているだけなのだ。
やっぱり言葉で言ってもらわないと、未だに詩さんの考えてることもわからないことが多いからなぁ......。
梨樹人が感傷に浸っていると、詩が顔つきを少し真面目なものへと変えて少し小さな声で話し出す。
「ねぇ梨樹人くん、ちょっと大事話があるんだけど」
「どうしたの?結構真面目な話な感じ?」
「うん......結構真面目な話」
「言いづらいことなんだ?」
「そうなの」
2人の間に沈黙が流れる。しばらくして、梨樹人が口を開く。
「さては..................とうとうデキちゃった!?」
「ふえぇ!?なんでわかったの!?」
「ふっふっふっ~。詩さんが話し辛そうだけど、なんだか嬉しそうな感じがにじみ出てる気がしたからそうなのかなーって思ってさ!」
わからないとか言ったけど、昔に比べてよく分かるようになりましたわ~。
「すごいすごーい!よくわかったね」
「いやぁ~愛の力ですよ~。何も言われなくても全部わかっちゃいますよ~。Love is greatだわ~。」
「もう、調子に乗らないの。ちゃんと言われないとなにですれ違っちゃうかわからないんだからね!」
「そうだね。そうだよね」
「じゃあまずは、この子の名前から、一緒に話し合っていきましょうか」
「えっと、詩さん。本当にありがとうございました。おかげでいろいろ無事でした」
「ほんとうに間に合って良かったわ」
「ところであの人達はどちらさまなんでしょう?」
「まぁ、その筋の人たち、かしら?」
「もしかして詩さんも、その筋の方だったり、するんですかね......?」
彼らの正体は予想通りではあったが、そんな彼らを呼べる詩が何者なのか、非常にに気になっていた。
「うふふっ。違うわ。私は一般人。ただたまたま知り合っただけよ」
「あんな人たちと出会うことなんてあります!?」
「えっと、神夏磯くんを監s......じゃなくて遠くから護るために、あるお店でいろんなグッズを定期的に買ってたの。
彼らもそこの常連で仲良くなった、って感じかしら」
「え、えぇ~?」
困惑する梨樹人をよそ目に、優雅にコーヒーに口をつける詩。
そんな詩を見て、ここまであまりに怒涛の展開であったためにすでに多少のことは気にならなくなっていた梨樹人は、助けてくれた詩に嬉しい気持ちだけが湧いてくる。
「えっと、なにか、なにか御礼をさせてもらいたいんですけど!」
「そうねぇ」
考え込むそぶりを見せる詩だったが、すぐに答えが見つかったようで。
「うん、決めたわ」
「なんでしょう、僕にできることなら、マジでなんでもやりますよ!」
「そう?じゃあ、遠慮なく言わせてもらうわね?」
「は、はい!」
「まずは、これから私に敬語を遣わないこと」
「そ、そんなことでいいんですか?」
「えぇ、前から距離があるみたいでいやだったの。それと......」
「それと?」
「今晩と明日、お休みよね?」
「あ、えぇ、まぁそうですね」
「敬語」
「あっ!すみません!......じゃなくて!ごめん!」
「ふふっ。まぁ少しずつ慣れていきましょう?それで、もう1つお願いなのだけど......」
「この後、私を女にして?」
頬に朱がさした可愛らしい顔でこてっと首をかしげながら、梨樹人にとってご褒美としか思えない質問をしてくる。
そんなん、答えは言うまでもないだろうけど。
「よろこんで」
*****
時は流れ、梨樹人は今年で36歳になる。2年前、なんとか業績が認められて准教授への昇進が叶い、ようやく少し落ち着いてきたところである。
これまでいろいろあったわけだけど、この数年間の詩(うた)さんと過ごす日々はまさに幸せと形容する他ないものだった。
「あのさ詩さん。最近疲れてるみたいだからしばらくご飯と掃除の当番は俺がやっちゃってもいいかな?」
「だめよ!あなたも仕事で疲れてるんだから分担しているところは私がやるの!」
「僕は全然だいじょうぶ!むしろ詩さんにご奉仕させてもらうことで体力が回復するんです!」
「も~っ、そんなわけないでしょぉ~。でも、気を使ってくれてありがとうね。優しいポイントあげちゃいます!」
「詩さんはそうやってすぐポイントくれようとする!」
「だってホントに優しさに溢れてるんだもん♫」
「くぅ~やっぱり詩さんは最高だぜ!」
読者諸氏におかれましては、突然なんの茶番が始まったのか不思議に思っているところであろう。
現在、梨樹人と詩は結婚して6年目。付き合い始めたころから考えるとすでに10年が経過しようというにも関わらず、このバカップルっぷりは衰えるどころか加速度を増して、宇宙速度へと到達せんばかりに膨れ上がっている。
それから敬語、丁寧語は、未だに抜けきれないまま、ラブラブになっている。
とはいえ、当然こんなお花畑なやりとりばかりをしているわけではない。たま~には真面目な話もする。
「でもさ、あんまり気を遣われちゃうとさ、信用されてないのかなとか、思っちゃいそうなんだよね。
そうじゃないってのはわかってるんだけどさ。
だから、やっぱり信用を形で示すために僕に家事任せてもらえたりしないかな?」
「あなたこそ、私の仕事を奪って私なしでも生きていけるようにするつもりなのかなぁ、とかありえないことも考えちゃうの......だから私にドロドロに甘えてほしいの!だめかしら......?」
「ぐはぁ!!!」
すみません、真面目な話じゃありませんでした。
「どうしたの!?」
急に吐血する梨樹人に、心配そうに駆け寄る詩。
茶番とわかっていてもノってくれる。
こういう部分に梨樹人はどうしようもなく惹かれてしまう。
「あまりにも素敵過ぎる!素敵なお嫁さんポイントを進呈いたします!
でも家事は譲れません!でも詩さんが心配ということなら、その分、夜にいっぱいヨシヨシさせてもらって、それから...ぐふふ。そういうことでいかがでしょうか!」
「うふふ♫
全くもぅ。りきくんったら相変わらずいやらしいんだから♫
わかりました、じゃあちょっとだけお願いしてもいいかしら?」
「はい!よろこんで~!」
これもただのイチャつきに見えるかもしれないし、実際にそういった側面も否定できない。
ただ、2人にとってこの会話にはそれなりの意味がある。
「自分が思っていることや不安に感じていることを互いに言葉にして伝えること」が、お互いを気遣い合える関係を築く上でいかに大事か、認識を共有しているのである。
その上で、こうしてお互いの弱みを赤裸々に話し合って、自分が思ってることをぶち撒けあってなお、完全にわかり合って信じ切るのは原理的に難しいことも共有している。
それでも、それを理解しようとする努力をしよう、という共通認識を築いており、このイチャつきはそれを実践しているだけなのだ。
やっぱり言葉で言ってもらわないと、未だに詩さんの考えてることもわからないことが多いからなぁ......。
梨樹人が感傷に浸っていると、詩が顔つきを少し真面目なものへと変えて少し小さな声で話し出す。
「ねぇ梨樹人くん、ちょっと大事話があるんだけど」
「どうしたの?結構真面目な話な感じ?」
「うん......結構真面目な話」
「言いづらいことなんだ?」
「そうなの」
2人の間に沈黙が流れる。しばらくして、梨樹人が口を開く。
「さては..................とうとうデキちゃった!?」
「ふえぇ!?なんでわかったの!?」
「ふっふっふっ~。詩さんが話し辛そうだけど、なんだか嬉しそうな感じがにじみ出てる気がしたからそうなのかなーって思ってさ!」
わからないとか言ったけど、昔に比べてよく分かるようになりましたわ~。
「すごいすごーい!よくわかったね」
「いやぁ~愛の力ですよ~。何も言われなくても全部わかっちゃいますよ~。Love is greatだわ~。」
「もう、調子に乗らないの。ちゃんと言われないとなにですれ違っちゃうかわからないんだからね!」
「そうだね。そうだよね」
「じゃあまずは、この子の名前から、一緒に話し合っていきましょうか」
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