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第一章 神からの失墜
思惑
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プーアが議会から追放され、邪神に成り下がってしまった晩、神レンガイは頭を抱えながら夜道を歩いていた。
この神レンガイは、プーアのことが本気で好きだった。だからこそ、今日の、自分の意志とは明らかに矛盾していた行動をどうしようもないほどに悔やんでいるのだ。
「あれは、上層部からの指令だったんだ……。だから、仕方ないんだ。僕はひどいことをしてしまった。でも、仕方ないんだ。ごめん、ごめん、プーア……」
フラフラと歩きながらブツブツとそう呟く。そのうち、レンガイの前にある屈強な男が現れた。
「相変わらず女々しいやつだなあ、おい。たかが女1人、どうしたってんだよ」
「お前は……ゴンザ」
──嫌なヤツに会ってしまった。
その思いが顔に出ていたのだろうか、ゴンザはニヤリとし、白い歯を見せる。
「昼にアイツ関する議会が開かれたみてえだな。ま、俺はサボって出てねえけどよ。今日は6つの世界を滅ぼしてやったぜ」
自慢げに悪事を自慢するゴンザの胸ぐらを、レンガイは乱暴に掴んだ。突然の行動にもゴンザは驚かず、むしろ見下すような目を強めた。
「なんで、お前は取り締まれないんだよ!! どうしてプーアなんだ! それに、僕には分かるんだ。プーアは冤罪だ!」
必死に訴えかけるレンガイを、ゴンザは鼻で笑った。
「そんなの、決まってるじゃねえか。俺が一番強いからだろ。どんなエライヤツだって、俺に目を付けられたらどうなるかわかんねえからな。ま、あの小娘が追放されたのは、別の理由だけどな。それもこれも、全部お前が悪いんだぜ」
「どういう……ことだ」
レンガイはゴンザの胸ぐらを掴んでいた手の力を無意識的に緩めた。
「詳細はお前のような下級の神には教えるわけにはいかねえよ。アイツとの政略結婚が失敗に終わったのが原因……そうしか言えねえ」
──政略結婚だと? ふざけるな!
頭に血が上ったレンガイはゴンザに殴りかかったが、軽く受け流され、逆に地面に叩きつけられた。
「ぐう……」
苦しみ悶えるレンガイに、ゴンザは告げる。
「……お前は、アイツのことが本気で好きなんだったな。ご苦労なこった。……俺はお前と喧嘩しにきたわけじゃねえ、レンガイ。上からの指令だ」
「し、指令……?」
「邪神プーアを、誘拐しろ」
「どーいうことよ! あの役立たずのメイドはどこに行ったのよ!」
プーアは身近にあった椅子をまた乱暴に蹴った。神様議会から家に帰ってくると、1通の置き手紙と共に、メイドが姿を消していたのだ。
彼女がいないのは何かの間違いじゃないかと、プーアはもう一度置き手紙を読み返す。
『プーア様へ いろいろ大変だったみたいですね。お疲れ様です。大変申し訳ありませんが、私はお仕事を辞めさせていただきます。プーア様のお父様から契約打ち切りの連絡があったからです。これから困難がたくさんあると思いますが、陰ながら応援させていただきます』
「これって、つまりはお父様にも見限られたってことよね……」
──それは、マズい。
「だいたい邪神って何? 全く分からないわ……仕方ない、こういう時は……」
そう言ってプーアはポケットから携帯電話を取り出した。皮肉にもレンガイが管理している下界の物だが、なかなか役に立つので、プーアは愛用していた。
……本当に嫌だけど、レンガイの手を借りるしかなさそうね……。
レンガイへの電話は、たったワンコールで通じた。まるで、待機していたかのように。
『あ、ああ、プーアちゃん……こんな夜遅くにどうしたんだい。それより、嬉しいな、君に電話番号を教えて2年と7か月と24日。一回だって君からのコールは来たことないのに。いっつも僕から電話してたからねえ。ははは、は、は……』
「やっぱり気持ち悪いわね、アンタ。……なんか、落ち込んでる?」
『あはは、そんなことはないよ。君と話せることで僕の身体と精神はいくらでも回復するからね。それで、今日は何の用で?』
プーアは言いづらそうに口を動かした。
「その、邪神って、つまりはどういうこと?」
『そっか。君はもう邪神プーアちゃんなんだね。一言で言わせてもらうとかなりキツく、暗い人生を送ることになる。ああ、でも大丈夫。僕が守ってあげるから。僕と結婚しよう。僕は邪神だろうと全然ウェルカムさ』
プーアの背筋を、嫌な寒気が通り過ぎていった。同時に、相談する相手を間違えたと思った。
「ほんっとにヤダ。ごめん、じゃあね」
『あ、待ってプーアちゃん、警告が──』
レンガイがそれを言い終える前に、プーアは電話を切ってしまった。
これが、別の結末に辿り着くための最後のチャンスだったとも知らずに。
この神レンガイは、プーアのことが本気で好きだった。だからこそ、今日の、自分の意志とは明らかに矛盾していた行動をどうしようもないほどに悔やんでいるのだ。
「あれは、上層部からの指令だったんだ……。だから、仕方ないんだ。僕はひどいことをしてしまった。でも、仕方ないんだ。ごめん、ごめん、プーア……」
フラフラと歩きながらブツブツとそう呟く。そのうち、レンガイの前にある屈強な男が現れた。
「相変わらず女々しいやつだなあ、おい。たかが女1人、どうしたってんだよ」
「お前は……ゴンザ」
──嫌なヤツに会ってしまった。
その思いが顔に出ていたのだろうか、ゴンザはニヤリとし、白い歯を見せる。
「昼にアイツ関する議会が開かれたみてえだな。ま、俺はサボって出てねえけどよ。今日は6つの世界を滅ぼしてやったぜ」
自慢げに悪事を自慢するゴンザの胸ぐらを、レンガイは乱暴に掴んだ。突然の行動にもゴンザは驚かず、むしろ見下すような目を強めた。
「なんで、お前は取り締まれないんだよ!! どうしてプーアなんだ! それに、僕には分かるんだ。プーアは冤罪だ!」
必死に訴えかけるレンガイを、ゴンザは鼻で笑った。
「そんなの、決まってるじゃねえか。俺が一番強いからだろ。どんなエライヤツだって、俺に目を付けられたらどうなるかわかんねえからな。ま、あの小娘が追放されたのは、別の理由だけどな。それもこれも、全部お前が悪いんだぜ」
「どういう……ことだ」
レンガイはゴンザの胸ぐらを掴んでいた手の力を無意識的に緩めた。
「詳細はお前のような下級の神には教えるわけにはいかねえよ。アイツとの政略結婚が失敗に終わったのが原因……そうしか言えねえ」
──政略結婚だと? ふざけるな!
頭に血が上ったレンガイはゴンザに殴りかかったが、軽く受け流され、逆に地面に叩きつけられた。
「ぐう……」
苦しみ悶えるレンガイに、ゴンザは告げる。
「……お前は、アイツのことが本気で好きなんだったな。ご苦労なこった。……俺はお前と喧嘩しにきたわけじゃねえ、レンガイ。上からの指令だ」
「し、指令……?」
「邪神プーアを、誘拐しろ」
「どーいうことよ! あの役立たずのメイドはどこに行ったのよ!」
プーアは身近にあった椅子をまた乱暴に蹴った。神様議会から家に帰ってくると、1通の置き手紙と共に、メイドが姿を消していたのだ。
彼女がいないのは何かの間違いじゃないかと、プーアはもう一度置き手紙を読み返す。
『プーア様へ いろいろ大変だったみたいですね。お疲れ様です。大変申し訳ありませんが、私はお仕事を辞めさせていただきます。プーア様のお父様から契約打ち切りの連絡があったからです。これから困難がたくさんあると思いますが、陰ながら応援させていただきます』
「これって、つまりはお父様にも見限られたってことよね……」
──それは、マズい。
「だいたい邪神って何? 全く分からないわ……仕方ない、こういう時は……」
そう言ってプーアはポケットから携帯電話を取り出した。皮肉にもレンガイが管理している下界の物だが、なかなか役に立つので、プーアは愛用していた。
……本当に嫌だけど、レンガイの手を借りるしかなさそうね……。
レンガイへの電話は、たったワンコールで通じた。まるで、待機していたかのように。
『あ、ああ、プーアちゃん……こんな夜遅くにどうしたんだい。それより、嬉しいな、君に電話番号を教えて2年と7か月と24日。一回だって君からのコールは来たことないのに。いっつも僕から電話してたからねえ。ははは、は、は……』
「やっぱり気持ち悪いわね、アンタ。……なんか、落ち込んでる?」
『あはは、そんなことはないよ。君と話せることで僕の身体と精神はいくらでも回復するからね。それで、今日は何の用で?』
プーアは言いづらそうに口を動かした。
「その、邪神って、つまりはどういうこと?」
『そっか。君はもう邪神プーアちゃんなんだね。一言で言わせてもらうとかなりキツく、暗い人生を送ることになる。ああ、でも大丈夫。僕が守ってあげるから。僕と結婚しよう。僕は邪神だろうと全然ウェルカムさ』
プーアの背筋を、嫌な寒気が通り過ぎていった。同時に、相談する相手を間違えたと思った。
「ほんっとにヤダ。ごめん、じゃあね」
『あ、待ってプーアちゃん、警告が──』
レンガイがそれを言い終える前に、プーアは電話を切ってしまった。
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