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第二章 組織
ハッカーvs…………
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「……もう、10分は経った。もう少しで、時空転移装置が、起動する」
自動音声のような声の調子で、神ヒナノは言う。
プーアは、この絶望的な状況を抜け出す方法を必死に考えた。しかし、軟弱なプーアが自分の力のみでヒナノに打ち勝つ手段は、どうしても思いつかなかった。殴ったり蹴ったりしようにも、両腕を掴まれて身動きが取れない。自分とヒナノの位置をレンガイに伝えることができればよいのだが、視力と聴力を惑わされているレンガイに対してできることは何もない。プーアは悔しそうに舌打ちをした。
「……あと、3分くらい。そろそろ、準備をして。邪神プーア、お前を、上界に、連れていく」
「アナタが任されている任務って、『邪神プーアと神レンガイを捕らえてこい』だったわね。レンガイはいいの?」
暗闇のせいで、表情を確認することは全くできない。プーアがヒナノの様子を知る手段は、ヒナノの口から発せられる声しかなかった。
「…………………………神レンガイは、とりあえずは、いい」
いつもと比べて異常な間をおいて、ヒナノは言った。プーアはその長い間に、強い違和感を覚えた。
「もしかして、レンガイがいると不都合なことでもあるのかしら?」
「……………ないと言えば、嘘になる。まずは、確実に、邪神プーアを、捕らえる」
確実に?。
「別に、あの変態が1人いたって何も変わらないわよ。だって、ただただ気持ち悪いだけで、貧弱だし。……スキルも戦闘には役立たないようなものだし――――」
あ。
スキルだ。プーアは、急に目の前が明るくなった気がした。そうだ、ヒナノのスキルは『五感を惑わせる』能力だったはず。このスキルは相手の視界、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を使い物にならなくさせ、情報を全て混乱させることができる、かなり強力なスキル。発動さえしてしまえば、戦闘では勝ちが確定するようなスキル。今回のような、人を攫う場合にもかなり有効な能力のはず。なのに。
なぜ自分には使わない?
プーアはそれがとても気になった。どうせなら、五感の全てを乱し、何が起こったか分からない状態で誘拐してしまえばいいのに。
プーアはある仮説を立てた。
「……ねえ、もしかして、触れている相手にはスキルが発動しないのかしら?」
「……………………どうして、わかった。……いや、わかったところで、どうすることも、できない、はず」
ヒナノは、腕を掴む力を強めた。絶対に逃さない、その強い気持ちの表れだった。プーアはまた舌打ちをした。そうだ、そうなのだ。『五感を乱す』スキルの弱点を見抜いたところで、この状況から逃れる決定打にはならない。
時空転移装置は起動を開始したのか、爆音を立て始めた。あまりの音量に、ボロい隠れ家の窓ガラスがガタガタ揺れる。プーアはその音たちを聴いて、諦めの言葉を呟いた。
「ここまでのようね――――」
「このプーアちゃんは、偽物だあああああーーーーー!」
プーアとヒナノのいる位置から少しだけ離れたいところから、レンガイの叫びが聞こえてきたのもその時だった。プーアもヒナノも、どういうことだ、という顔をする。
「クソ! 僕は騙されてしまったようだ……なんて失態を犯してしまったんだ僕はあああああ!! 幻だ、幻を見せられていたんだ! 姿も、声も、触り心地も、プーアちゃんだった! でも!」
「「……でも?」」
「この幻の匂いは、プーアちゃんの匂いじゃない!」
「「……は?」」
「どーいうことよ、神ヒナノさん? 視覚と聴覚を惑わせたって、つまりはアタシの幻影を見せていたってことね。ご丁寧に触感まで再現してくれて。どこ触られたかわかんないけど。でも、嗅覚を惑わせることを忘れていたのね」
「……まさか、そこで、見抜くとは、考えて、なかった」
そりゃそうだ。 プーアは思った。
「本物のプーアちゃんは……ここだあ!!」
声の主の変態がこちらに走ってきていることを、暗闇の中でも感じ取ることができた。プーアは体が震えるほどの悪感がした。その瞬間、レンガイはプーアに勢いよく抱きついた。
「どこの誰が見せた幻影かは知らないが、僕の愛の力には敵わない!プーアちゃん、1人で真っ暗の中にいて、寂しかっただろう!? ごめんね、プーアちゃん……ん? 誰かな、プーアちゃんの後ろにいる人は」
レンガイが勢いよく抱きついてきたことで、手が少しだけヒナノに触れたようだ。そのせいで、ヒナノがレンガイにかけていたスキルが解除されたらしい。レンガイはプーアの姿も、ヒナノの姿も捉えることができた。
プーアは、ヒナノが呆気を取られているのを察した。つかさず、叫ぶ。
「レンガイのアホ! そいつが、あの声の主の女! ついでに上界からの刺客! アタシが許可するわ、ぶん殴って! あと抱きつくのをやめて!」
「僕は女性に暴力を振るうような下劣な人間ではないんだけど……プーアちゃんの為なら仕方ない! 喰らえ、ビンタ!」
「……ま、待て――」
自動音声のような声の調子で、神ヒナノは言う。
プーアは、この絶望的な状況を抜け出す方法を必死に考えた。しかし、軟弱なプーアが自分の力のみでヒナノに打ち勝つ手段は、どうしても思いつかなかった。殴ったり蹴ったりしようにも、両腕を掴まれて身動きが取れない。自分とヒナノの位置をレンガイに伝えることができればよいのだが、視力と聴力を惑わされているレンガイに対してできることは何もない。プーアは悔しそうに舌打ちをした。
「……あと、3分くらい。そろそろ、準備をして。邪神プーア、お前を、上界に、連れていく」
「アナタが任されている任務って、『邪神プーアと神レンガイを捕らえてこい』だったわね。レンガイはいいの?」
暗闇のせいで、表情を確認することは全くできない。プーアがヒナノの様子を知る手段は、ヒナノの口から発せられる声しかなかった。
「…………………………神レンガイは、とりあえずは、いい」
いつもと比べて異常な間をおいて、ヒナノは言った。プーアはその長い間に、強い違和感を覚えた。
「もしかして、レンガイがいると不都合なことでもあるのかしら?」
「……………ないと言えば、嘘になる。まずは、確実に、邪神プーアを、捕らえる」
確実に?。
「別に、あの変態が1人いたって何も変わらないわよ。だって、ただただ気持ち悪いだけで、貧弱だし。……スキルも戦闘には役立たないようなものだし――――」
あ。
スキルだ。プーアは、急に目の前が明るくなった気がした。そうだ、ヒナノのスキルは『五感を惑わせる』能力だったはず。このスキルは相手の視界、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を使い物にならなくさせ、情報を全て混乱させることができる、かなり強力なスキル。発動さえしてしまえば、戦闘では勝ちが確定するようなスキル。今回のような、人を攫う場合にもかなり有効な能力のはず。なのに。
なぜ自分には使わない?
プーアはそれがとても気になった。どうせなら、五感の全てを乱し、何が起こったか分からない状態で誘拐してしまえばいいのに。
プーアはある仮説を立てた。
「……ねえ、もしかして、触れている相手にはスキルが発動しないのかしら?」
「……………………どうして、わかった。……いや、わかったところで、どうすることも、できない、はず」
ヒナノは、腕を掴む力を強めた。絶対に逃さない、その強い気持ちの表れだった。プーアはまた舌打ちをした。そうだ、そうなのだ。『五感を乱す』スキルの弱点を見抜いたところで、この状況から逃れる決定打にはならない。
時空転移装置は起動を開始したのか、爆音を立て始めた。あまりの音量に、ボロい隠れ家の窓ガラスがガタガタ揺れる。プーアはその音たちを聴いて、諦めの言葉を呟いた。
「ここまでのようね――――」
「このプーアちゃんは、偽物だあああああーーーーー!」
プーアとヒナノのいる位置から少しだけ離れたいところから、レンガイの叫びが聞こえてきたのもその時だった。プーアもヒナノも、どういうことだ、という顔をする。
「クソ! 僕は騙されてしまったようだ……なんて失態を犯してしまったんだ僕はあああああ!! 幻だ、幻を見せられていたんだ! 姿も、声も、触り心地も、プーアちゃんだった! でも!」
「「……でも?」」
「この幻の匂いは、プーアちゃんの匂いじゃない!」
「「……は?」」
「どーいうことよ、神ヒナノさん? 視覚と聴覚を惑わせたって、つまりはアタシの幻影を見せていたってことね。ご丁寧に触感まで再現してくれて。どこ触られたかわかんないけど。でも、嗅覚を惑わせることを忘れていたのね」
「……まさか、そこで、見抜くとは、考えて、なかった」
そりゃそうだ。 プーアは思った。
「本物のプーアちゃんは……ここだあ!!」
声の主の変態がこちらに走ってきていることを、暗闇の中でも感じ取ることができた。プーアは体が震えるほどの悪感がした。その瞬間、レンガイはプーアに勢いよく抱きついた。
「どこの誰が見せた幻影かは知らないが、僕の愛の力には敵わない!プーアちゃん、1人で真っ暗の中にいて、寂しかっただろう!? ごめんね、プーアちゃん……ん? 誰かな、プーアちゃんの後ろにいる人は」
レンガイが勢いよく抱きついてきたことで、手が少しだけヒナノに触れたようだ。そのせいで、ヒナノがレンガイにかけていたスキルが解除されたらしい。レンガイはプーアの姿も、ヒナノの姿も捉えることができた。
プーアは、ヒナノが呆気を取られているのを察した。つかさず、叫ぶ。
「レンガイのアホ! そいつが、あの声の主の女! ついでに上界からの刺客! アタシが許可するわ、ぶん殴って! あと抱きつくのをやめて!」
「僕は女性に暴力を振るうような下劣な人間ではないんだけど……プーアちゃんの為なら仕方ない! 喰らえ、ビンタ!」
「……ま、待て――」
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