強がりな邪神ちゃんのストーカーは僕

おかだしゅうた。

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最終章 伝えたい言葉

君の為なら

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「さっき、姉ちゃんから聞いたぜ。『予言』は正確さに欠けるって。だから、レンガイの兄ちゃんのヤツは嘘だよな?」
 やはり信じられないヒュウガは、冷や汗をかきながらもう一度聞く。
「人に予言を頼んどいて端から疑うってどんな神経してるのよ」
 左脚を小刻みに動かしながら、ノエルは腕組みをした。何だかプーアに似ているな、と頭の中で考えたヒュウガは、あろうことか口に出してしまった。すかさず異議の声が飛ぶ。
「どこが似てるっていうの? いい? 私はね、あの小娘と似てるって言われるのが大ッキライなの……だから、今すぐ前言を撤回しなさい」
 ノエルは壁を殴って怒りを表現した。やべーやべー、ヒュウガが口ずさむ。

 話がまた脱線しそうだ、それと、また好ましくない雰囲気になる予感がしたヒナノは言う。
「……それで、その『予言』の、意味を、詳しく教えて、ほしい」
「てかさ、オイラの予言のイメージと実際のヤツが違ったんだよな。なんかこー……ズバアッ! って感じかと思ってたんだけど、ぶつ切りのワードが3つだけ。しかも地味な感じで。なんか詐欺っぽいぞ」
 ノエルは端から疑いにかかっているヒュウガを睨みつける。
「アナタ、協力を仰ぐ立場だっていうの忘れてるわね。 『予言』はね、ヒントとなる断片的な言葉から未来を表すの。つまり、まだ『予言』は完了してない」
「えーと、つまりはタロット占いみたいな感じか? ……思うんだけど――」

「『予言』に正確性が無いのって、?」



 ――オレサマがコワクなってシマッタクセに、スグにトリダスなんてナ。ワラッチャうゼ。
 自身が懐から取り出した短刀『神殺し』の囁きを無視し、構えの姿勢をレンガイは取った。レンガイは、自分の視界に5人程の人影を写していた。その目に写る人影の正体を、彼は直感的に察する。
「……こんなに敵が多くちゃ、無視したままだとプーアを助けられないんだ」
 ――ククク、スキナオンナをタスケルタメに、オレサマというツルギをフルウのカ。
 コクコクと頷き、一呼吸置いた瞬間。レンガイは地面をこれでもかというほど強く蹴り、一瞬で敵との距離を詰めて全力で斬りつけた。悲痛な叫び声を上げる傷を負った男、返り血を浴びるレンガイと『神殺し』、仲間が倒れたというのに無表情を貫く洗脳された神たち。
 平和なはずの地球の片田舎は、信じられない程に混沌と化していた。

 ――サイノウがアルナ。マエのシヨウシャのアイツより、ヨッポド。まあ、アイツは『心眼』がナイからアタリマエではアルンダけどナ。コンナに『カンジョウ』をコメレルヤツはヒサシブリダ。
「……」
 自身が倒した神たちにも目もくれず、レンガイは一目散に駆け出す。ゴンザとの戦いで負った傷が痛む上、『神殺し』で全力以上の力を出しているせいで、彼の体力は限界に近かったが、それでも走り続ける。そんな彼を不思議に思った『神殺し』は、何気なく問う。
 ――オマエほどガンバルやつはホカにイナイナ。……タンジュンなギモンなんだケド、コレ、ドコにムカッテるんダ?
「プーアの家だよ」
 ――ハ? サッキマデのハナシをキクかぎりダト、ソイツ、カミンダロ? ダッタラ、イエだって『ジョウカイ』にアルダロ。いくらハシッタって、タドリツカないゾ。
「君は時空転移装置の存在を知らないのか……もっと丁寧に説明しよう。まず、この下界にある僕の隠れ家に向かう。おそらく、そこにヒナノさん僕の仲間がいるはずだから、その人に時空転移装置を貸してもらう」
 こう話していると、身体中がひどく痛むし、息も上がる。そもそも、『神殺し』との会話なら声に出す必要もないんじゃないか。そう思ったレンガイはもう口を開くことを止めた。
『神殺し』もつまらなそうにため息をついたあと、レンガイのことをぼうっと眺めるだけだった。



「解釈が間違いですって? ずいぶんナメたことを言うのね」
「や……じゃあさ、レンガイの兄ちゃんについての『神殺し、42人、死』についてはどう考えてるんだ?」
 そうヒュウガが尋ねると、ノエルは唸りを上げながら考え始めた。この過程にもずいぶんと時間がかかるらしく、ヒュウガとヒナノは顔を見合わせる。
 数分程かかって、ノエルは自信満々に答えを告げた。
「短刀『神殺し』を手に入れたレンガイさんとやらが42人の神々を死へと追いやった! どうかしら」
「めちゃくちゃ普通じゃん。数分も唸りながら考えた結論とは思えないぞ」
 ひょっとしたら『予言』は役立たずなんじゃないか? そんな考えがヒュウガの頭をよぎったが、それをまた口に出してしまうとブチギレられるのは絶対なので言わないでおいた。
「……それより、なぜ神レンガイが、『神殺し』を手に、するんだ」
「さあね。ただ、その武器はゴンザが持ってたみたいだけど? 奪ったりするんじゃない?」
「まてまて、そもそも予言の神殺しが『神殺し』の固有名詞とは限らないんじゃないか、姉ちゃん。もしかしたらその予言もさ――」
「神だけを狙う恐ろしい通り魔! 42人目の被害者はストーカー神レンガイ! なんとも言えないほど呆気なくぶっ刺されて死んじゃった! キラ! っていう可能性もあるぞ」
「……! なるほど、裏の、考え方も、あるのか」
「なによ、この危機的状況だっていうのにヤケにほのぼのしている光景は。それより、予言の考え方としてはもう1つ――」
 不毛な論争を繰り広げる3人。その闘いは10分ほど続いたところで、ドアをノックする音により不本意ながら中断を余儀なくされた。
 ヒナノが恐る恐るドアを開ける。

「あ、ヒナノさん。それにヒュウガくんも。……アナタは四将軍のノエルさん。ん? 今どういう状況?」
 今どういう状況?
 それは部屋の中に居る3人のセリフだった。ヒナノが開けたドアの向こうに立っていた人物はレンガイで間違いなかったが、見た人が思わず後退りしてしまう程に流血していた。しかも、手には真っ赤に染まる『神殺し』も握っている。ノエルはヒュウガに耳打ちをした。
「……これって、私の解釈が当たってるんじゃない? あれは返り血よ。右手のあれは『神殺し』だし。何人もの神を殺してきたに違いないわ」
 コクコクとヒュウガは頷く。それを横目に、ヒナノは今までの出来事をレンガイに報告していた。
「つまりは、ノエルさんはもう敵意はないと? へえ……」
 レンガイは怪訝な目でノエルをまじまじと見た。不快だ、という感情をノエルは全面に出す。
「そりゃ、今までがアレだったから信じてもらえないと思うけど、いくらなんでも、ねえ。それより、その血とかは何よ」
「あ、ああ。これは、ちょっとね。……説明している時間が惜しい。ねえ、ヒナノさん、僕に時空転移装置を使わせてくれないかな」
 レンガイは真面目な表情でヒナノに言う。いつもニコニコ(ニヤニヤ?)しているレンガイが真剣な顔をするところを3人は初めて見たので、そのギャップに圧巻された。
「兄ちゃんって本気マジになると怖ぇんだな」
「ああいうキリッとした顔はちょいイケメンかもしれないわね」
 ヤケに緊張感のない2人を他所に、ヒナノはレンガイの目をしっかりと見て忠告する。
「……神レンガイ。殺しは、するなよ」
 急になんてことを言うんだ。レンガイは首を傾げる。
「……お前は、今、自分が、だと、思って、ないか?」
「へ?」
 疑問符にいちいち反応しては埒が明かない。ヒナノは続けて口を動かす。

「……お前は、、だ。……基本的に、他人はみな、そう思ってる……つまり、いつも通りで、いい。私に、転移装置を、借りる理由は、上界に行くことだろう?」
 その問いに、レンガイは頷いた。
「……いつも通り、だ。いつも通りの、お前なら、邪神プーアも、喜ぶはず」
 ヒナノ達の耳には、邪神プーアがただの人間に成り下がったことなど届いていない。だからこそ、希望に満ちた声で言う。
「……いつも通りの、お前だったら……邪神プーアのことも、神アンナプルナのことも、任せられる」
「ヒナノさん……ありがとう……」

 いつ間にかセッティングが完了していたようだ。レンガイの立つ床から、頭に響くような作動音が鳴る。その上で、レンガイはゆっくりとまぶたを閉じ、今までの一つ一つの出来事を丁寧に思い返した。
 ――僕とプーアが組織から逃げる為に下界に降りてきて、楽しい日々を過ごす事ができた。
 ――ヒナノさん、ヒュウガくん。2人は全てが上手く終わったら夏祭りに行くのかな。
 ――はあ、僕もまたプーアと遊びに行きたいなあ。


 転移が始まるその直前、強張っていた彼はその表情を崩し、ニヤッと笑う。

 その呟きを残して、レンガイは消えた。
 レンガイは再び上界へと還る。

 全ては、プーアの為に。

 
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