異世界で次の人生を

ゴンべえ

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006 初めてのスキル発動

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青年に案内されてリシュナのいる建物に向かった。
ちなみに青年の名はフェイムという。
なんとリシュナの婚約者でエルフで一番の戦士らしい。
だからだろう。
俺を牢から出しても誰も咎めないのは。

「本当にリシュナを助けられるのか?」

半信半疑のフェイムは何度も聞いてくる。
諦めていただけに信じられないのだろう。

「たぶん、大丈夫だ」

しつこく聞かれて少々自信がなくなってきた。
フェイムにしてみれば藁にもすがる思いだろう。
でなければ人間を居住区に入れる決断を下せるものではない。

「フェイム!そいつは人間じゃないか!なんで牢から出して居住区に入れたんだ!」

「緊急事態なんだ。何かあっても責任は俺が取る」

「いや、しかし」

「どいてくれ」

フェイムは難色を示すエルフ達を強引に突破していった。
そしてリシュナの住居にたどり着くと。

「ここで少し待ていてくれ」

フェイムに言われた通り黙って待つ。
するとリシュナの住居から怒号が飛び交い、激しい言い争いが響いてきた。
あわや喧嘩かと思うほど激しい言い合いが続いたと思いきや、突然怒号が静まり、嘘のように静寂に包まれる。

「え?なに?どうなったの?」

猛烈な不安に襲われていると何事もなかったかのようにフェイムが戻ってきた。

「さあ、行こう」

「なあ、さっきまでメチャクチャ言い争ってなかったか?」

「気にするな。責任は俺が取る」

嫌な予感しかしないフレーズだ。
俺は戦々恐々としながら住居に足を踏み入れる。
すると身なりの良い壮年の男女が意識を失って倒れていた。

「おいおい、これって」

「エルフの王様と后様だ。リシュナの両親といえばいいかな」

リシュナってエルフのお姫様だったの?
そんで、婚約者ってことはフェイムは次期王様ってことじゃないか。

あれ?……でも、王様と后様が気を失っているってことは。

「他に人は居ないよな?」

「当然だ。王族の住居だぞ」

「じゃあ、2人が倒れてるのは?」

「説得する時間が惜しかったんでな。気絶してもらった」

なにやってんだコイツは!
単純に反逆罪じゃないか。
仮にリシュナが助かったとして罪は免れないだろう。

「リシュナが助かるなら俺はどうなってもいい」

「フェイム……」

男だなコイツ。
こうなったら、なにがなんでもリシュナを救わないと。
俺は同じ男としてフェイムの男気に感銘を受けた。

リシュナの寝室に到着すると想像以上の悪い状態に目を疑った。

止血しているものの流血は収まっていない。
恐らく毒による影響だろう。
薬草など色々と手を尽くした跡が見受けられるが効果はなかったようだ。
白いベッドには血が滲んで大きなシミができ、むせ返るほど生臭い匂いが漂っている。
リシュナの顔は血の気が引いて青く、衰弱してやつれて弱々しい吐息を繰り返していた。

このままでは長くは持たないだろう。
一刻の猶予もない。
俺はステータスウインドウを開くとスキル【等価交換】を発動させた。

「頼む、リシュナを助けてくれ!」

両手を組んで祈るフェイム。
ここまで苦労したフェイムの男気を無駄にしてなるものか。
俺は入力欄に必要な情報を入力すると、対価となる大金貨を1枚入金した。

『対価を確認しました』

無機質な言葉が聞こえると同時にウインドウがパッと輝く。
するとアイテムバックに指定したアイテムが収納されていた。
俺はすぐさま長筒の瓶を取り出すと栓を開け、青息吐息のリシュナに中身の液体をぶちまけた。

「おおおおおっ!!」

フェイムが驚きの声をあげた。
信じられないものを見る目で光景を眺めている。

リシュナの傷は瞬く間に塞がっていった。
鋭利に裂けた傷口は何事も無かったかのように繋がり、傷痕の形跡すら見受けられない。
血の気の引いた顔色も、みるみる内に赤みを帯びて生気が戻っていく。
弱々しかった吐息も、すでに健やかな寝息に変わり、危険な状態を脱した事を物語っていた。

「き、奇跡だ……」

フェイムは大粒の涙を浮かべ、眠るリシュナの傍らに座った。
細く長い手を握ると、安堵感からか嗚咽を漏らして泣きじゃくる。
よほど嬉しかったのだろう。
見ているだけで喜びが伝わってくる。

「おおっ!!リシュナが……リシュナがぁあぁぁぁ!!」

背後から大きな声が聞こえた。
驚いて振り替えると気絶していた王様と后様が並んで立っている。
その後ろには大勢の戦士が。
俺は悪い予感に襲われた。

「この不埒者共を捕らえよ!」

王様の号令でエルフの戦士達が俺とフェイムを取り囲む。
もちろん俺は無抵抗で捕まったが、フェイムはリシュナと離れがたいのか戦士達を睨んで牽制した。

「フェイム」

俺は頃合いだと首を横に振った。
事を荒立てては良い結果にはならない。
ここは非を認めて捕まるほうがいい。

「くっ……」

フェイムはリシュナの手を離すと大人しく捕縛された。
戦士達がホッとしている様子からフェイムは相当腕が立つのだろう。
ともあれ、俺とフェイムは戦士達に連行されると別々の牢に入れられた。




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