おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

文字の大きさ
33 / 69

033 籠絡

しおりを挟む
日が暮れた教会で壮年の神父エンリケは机の上で神に祈るように両手を組み合わせ、懺悔するように大きく項垂れていた。
対面に座るのは精悍な顔つきの筋骨逞しい三十代の男性だ。
不遜な態度で椅子に座り、机の上に銀貨の入った袋を置いて不敵な笑みを浮かべている。

「これだけあれば教会を修繕してもお釣りがくるだろう。救いを求める者に施す身銭くらいはな」

シャークウッドが暗に答えを求めるとエンリケはビクッと身震いした。
気苦労を窺わせる白髪頭の細面神父は深いシワが刻まれた手にグッと力を込め。

「しかし、しかし・・・」

激しい葛藤が躊躇いとなって細面に表れる。
二の句を紡げないのは背信行為に及ぶ恐れか。
しかし目の前の銀貨に視線は留まり、冷や汗を浮かべて生唾をゴクリと飲み込む。

「別に告発や讒言を求めてる訳じゃない。敬虔な信徒の良心と教会の教義に則って判断を求めているだけだ。背信行為を行っている不敬な信徒が誰なのか。隠し立てする事こそ神様に対する背信行為じゃないのか?」

「そ、それは・・・しかし、なんの確信もなく疑うのは」

「本当に確信が無いと?何の疑念も不審も無かったと言うのか?」

エンリケは沈黙した。
シャークウッドの指摘が胸に突き刺さったのだ。
ロジャーノの不審極まりない行動。
思い当たる節が無い訳ではない。
むしろ不貞な噂の信憑性を確信させるに足る現状にあった。
ロジャーノが訪れる夜は必ず教会から締め出されて明け方まで戻る事を許されない。
容認しているのは来訪の度に運営資金を置いていくからだ。
見捨てられたに等しい下町の教会を維持するには寄付だけでは足らず、ロジャーノの支援がどうしても必要な現実があった。

だから躊躇い、言葉を濁すのだ。

しかしエンリケの心は激しく揺れていた。
神に対する背信行為。
その一言がエンリケの良心に響いたのだ。
敬虔な信徒であるエンリケだけに神に対する背信行為だけは容認する事ができない。
しかしロジャーノが断罪されれば教会を維持できなくなる。
もはやどうして良いか分からなくなっていたのだ。

「心配しなくてもいいぜ。アンタの名前は出さないしバレないようにも配慮する」

「で、ですが・・・教会を維持するには。やはり、いや、しかし・・・」

あと一歩という所だ。
ここが決め手と見たシャークウッドは一枚の下級紙を差し出した。

下級紙は銀貨の入った袋に入れてあったものだ。
なんだろうと確認したシャークウッドは目を通すなり「あのガキには敵わん」と大笑いした。
その内容は教会の維持費を毎月寄付するという証文だった。

(この展開を読んでたってわけか。本当に末恐ろしいガキだぜ。まんまと思惑通りの展開になりやがった)

証文を差し出しつつシャークウッドはエルロンドの才覚に肝を冷やした。
エンリケの表情が一気に赤味を帯びて迷いが払拭されるのを感じる。
そこからは話が早かった。
シャークウッドはエンリケから必要な情報を引き出すと。

「くれぐれも他言無用にな。それと、施しも程々にした方がいい」

「なんのことでしょう?」

身に覚えがないのか。
エンリケは小首を傾げて否定した。

「孤児院に毎月寄付しているんじゃないのか?」

「まさか、教会を維持するだけでも必死なのです。とても寄付する余裕など。ただ、貰った作物をお裾分けした事は何度かありますが」

「そうか。いや、だったらいい。俺の勘違いだ。気にするな」

「はぁ・・・」

間違いだと告げられエンリケは一応納得した。
シャークウッドは読みが外れて軽く舌打ちすると。

(エンリケじゃないだと。だったら毎月寄付してる奴は誰だ?くそっ!簡単な調べだと思ったのによ)

エルロンドに毎月寄付している者の捜索を追加依頼されたシャークウッドは宛が外れて少し苛立った。
とはいえ収穫は上々である。
とりあえず寄付人の捜索は後回しにしてエルロンドに報告に向かうことにしたのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...