おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

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066 台頭する勢力

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王都ヘルメールにある豪邸の一室に中堅所の商人が一堂に会して密談を交わしていた。
ムンジェスの失脚により裏社会の権益をあらかた掌握した者達である。
いち早く手を打ち、動いた事で大幅な権益を得た、そこまでは良かったのだが。
肝心要の莫大な利益を生み出す商品に関しては全く掴めずにいた。

「おのれムンジェスめ!」

恰幅の良い中年男が苛立たし気にテーブルを叩いた。
卓上に並ぶ料理の皿が振動で揺れ動く。

「落ち着きなされコダム殿」

「そうじゃ、苛立っても仕方なかろう」

細面の中年と長い顎髭を伸ばした老人がなだめた。
注意を受けたコダムはフンッと鼻を鳴らして不快感を露わにする。

「そう言うがな、一番欲しい商品が未だに手掛かりすら掴めていないのだぞ!ムンジェスが贅沢三昧する莫大な資金源だというのにだ!」

「噂では貴族が関わっているらしいからのう」

老人は仙人のような白い顎髭を撫でつつ言った。
落ち着き払った態度でいるが、その表情には若干の焦りが伺い知れる。

「デグメットも手掛かりすら掴めていない様子ですな。それだけムンジェス達も用心深いという事なのでしょう。ならば、なんとしても奴より先に商品の入手先を掴まなければ」

細面の中年男はワインを口に含み舌で転がした。
焦っても仕方ないという態度で二人より余裕を感じさせる。

「あまり時間は無いぞ。デグメットはレミントンに接触しておる。もしレミントンがムンジェスの後釜に就けば我々の計画は水の泡だ」

「そうじゃのう。我々が成り上がるには権力の庇護が必要不可欠じゃ。ムンジェスには散々な目に合わされたからのう。今度はワシらがムンジェスに取って代わらねばならん」

「露骨な物言いはどうかと思いますよバールム殿」

「ここには儂等しか居らん。心配は無用じゃよノリントン殿 」

「そうだとも。この屋敷の警備は万全だ。曲者が忍び込む隙などありはせんよ」

コダムは自信満々でガハハッと笑った。
そういう態度が心配だとレミントンは憂慮するのだが。
コダムとバールムは意に介す様子はない。

「まあ、いいでしょう。それよりシュキンベル様はなんと?」

「うむ、我々の助力を大いに喜んでおられた。やはりムンジェスの腹心だった事が災いしておったらしい。協力を申し出る商人が全くおらなんだ」

「資金が物を言うからな。そりゃあ喜ぶだろう。それにしても先を見る目が無い連中ばかりだな。こんな千載一遇の好機に食い込まないなど商人じゃないぞ」

「リスクの高い賭けですからね。デグメットが相手では尻込みするのも致し方ありません」

手強い相手だとノリントンは評価した。
実際にデグメットは大手の豪商である。
そのため中堅所のノリントン達では分の悪い相手ではあった。

「だが勝てば一攫千金だ。デグメットが相手でも決して分の悪い賭けではない。問題はムンジェスの隠している莫大な資金源の大元だ。そこを突き止めればデグメットなど敵ではなくなる」

「シュキンベル様も詳細を知らぬと仰ってたからのう。ムンジェスに関わっておる貴族はかなり用心深いようじゃ」

「屋敷に出入りした貴族を調べても駄目だったのですか?」

「うむ、屋敷に出入りした貴族は全て調べ上げた。かなりの人数になったがな。徹底的に調べ上げたが全く関係ない奴等ばかりだった」

コダムは無駄骨を折ったと嘆いた。
費やした資金が無駄になったと愚痴を漏らす。

「おかしいのう。ムンジェスは何処で貴族と会っておったのか?」

バールムは不可解だと低く唸った。
商売をする以上、必ず打ち合わせを行う必要がある。
使用人を介するにしても尻尾が掴めないのは異常としか言えない。

「輸送方法すら分からないほど巧妙な手口なのです。本人同士で打ち合わせを行わねば必ずボロが出るハズですが」

「だからこそ妙なのじゃよ。出入りした者は小間使いに至ってまで調べ上げたのじゃ。かなりの時間と金を使ってな。それでも尻尾を掴めずにおる。全く不可解な事じゃて」

三人は腕組みして頭を悩ませた。
どこかに謎を解くカラクリが必ずあるはずだ。
それを解き明かさないと裏の利権を掌握する事はできない。
是が非でも解き明かす必要に迫られていた。

「失礼します」

使用人が丁寧な所作で来訪者を告げた。
主人であるコダムは襟を正すと使用人に案内するよう指示を出した。

「これはこれは皆さんお揃いで」

軽い挨拶と共に来訪者が入室した。
ゴブリンが現れたか、と思いきや赤い枢機卿の法衣を着た人間だった。
その人物はムンジェスに負けず劣らずの賎しい品性が面に出ている。
誰あろうコダム達が話していた枢機卿シュキンベルその人だ。

「シュキンベル様。御用があれば私共がお訪ね致しますのに」

コダム達は立ち上がると丁寧に頭を下げた。

「いやいや、たまには私から足を運ぶのも良いかと思ってな。ところでムンジェスの資金源は特定できたかね?」

シュキンベルは椅子に座ると使用人から酒盃を受け取った。
高級なワインが注がれる。
芳醇な香りを楽しむと一口含んで喉を潤し、コダム達の言葉に耳を傾けた。

「いえ、未だに特定できておりません。手掛かりすら掴めない状態でして」

「さもあろう。ムンジェスめ、肝心な事は腹心だった私にすら隠しておったからな。まあ、奪われるのを恐れておったのかもしれんが」

「屋敷を出入りした貴族や使用人は残らず調べ上げたのですが。全員が関わっていない様でして」

「他に怪しい者でも居れば良いのですがのう」

ムンジェスの腹心として仕えていたシュキンベルに何か手掛かりは無いかと期待した。
しかしシュキンベルも該当する存在に心当たりが無いと首を振る。

「ムンジェスめ、どこで貴族と会っておったのか。貴族と使用人で無いとするならば……」

他に出入りした者がいないか記憶の糸を辿る。
すると盲点だった可能性に行き当たった。

「そういえば性奴隷が頻繁に出入りしておったな。客を招いては派手に淫行を催しておった」

「なんと!では、その中に偽装しておった可能性がありますな」

「ありうる話じゃ。これだけ調べ上げて見つからぬ以上、そう考えるのが自然じゃろうて」

「ですが性奴隷は女性ばかりなのでしょう?紛れ込むとして、男では目に付くと思うのですが」

「確かに、その点は疑問だな。やはり有り得んか」

コダムが残念そうにワインを飲み干した。
謎解きの糸口になるかと期待しただけに落胆も大きい。

「いや、そうでもないぞ」

シュキンベルは口角を上げて笑った。
歯を見せて笑うその様はゴブリンを彷彿とさせる。

「可能性のある者が一人だけおる。調べるにはかなり危険が伴う人物ではあるがな」

「誠で御座いますか!」

コダムはテーブルに両手を着いて身を乗り出した。
バールムとノリントンも期待の眼差しを向ける。

「誠だ。その人物はな」

シュキンベルの言葉を聞いた三人は驚愕して耳を疑ったのだった。
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