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5 第4回入院(薬物療法5コース目)

父を思いやれる息子

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 仙台で予備校生をやっている息子が病院に見舞いに来てくれた。
 目標の大学に入るためとはいえ、テレビもない住み込みの寮に住んで孤独に勉強しているであろう息子を思うと、電車で半日かけて見舞いに来るのは迷惑だろうと思いつつ、久しぶりに会えると思うと親としては嬉しい気持ちが勝ってしまう。我が心ながら、いくつになっても感情というのはコントロールしにくいものなのだなあと一人で苦笑いしてしまった。

 さて、家から電車で来ると話している息子から病院に着いたとLINEで通知が入った。窓口で見舞い患者の受付をして入院病棟の8階に来てと伝え、横手の街が一望できるロビーでゆっくり待っていると、向かいのエレベーターが開き、何ヶ月ぶりかの息子の姿を見ることができた。
 嬉しくて「よく来たな~」などと明るく話しかけて隣に座るよう促すが、なんだか元気がない・・・。
 息子に遠くから見舞いに来てくれたことに感謝していろいろ話しかけるが、引き続きしょんぼりしている。息子に「どうした・・・元気ないんじゃないか?」と話しかけると、息子は「本当に癌になって入院しているんだね・・・」と涙を浮かべているではないか!!

 息子が私のことを心配してくれていることに言いようの無い幸福感を感じたものの、涙目の息子を慰める立ち位置となり、「がんと言っても投薬で治る見込みなんだよ」「がんと言っても手術無し、投薬だけで治る見込みなんだよ」などと何故か私が息子を慰めるような状況になってしまった。家族に心底心配してもらうところを間近で見ると、不謹慎ながら嬉しさがこみ上げてくる。「これも家族を持ったから体験できた気持ちなんだな」と心のなかで苦笑いしてしまった。

 泣いてくれている息子に投薬治療のみとはいえ、再発の危険性や5年生存率など、考えると暗く落ち込む日々を話すなどとは当然できなかったが、まだ一人前になっていない息子を悲しませるには早いと考え、「死ぬにはまだ早すぎる」と希望を誓いに変えるべく息子の涙の思い出を胸にそっとしまったのであった。(縁起の悪い話になるかもとは思うが、棺桶に一緒に入れておく記憶になった。)
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