転生者ゴブリン初の貴族を目指します

滝川 海老郎

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第4話 メスゴブリン

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 さて、俺たちオスゴブリンが狩りをしている間、メスたちが何をしているかというと、色々だった。
 主には草を編んでいる。

 近くの少し下ったところにメルセ川があり、そこにアシのような背の高い草が群生している。
 一年中そこから草を刈って洞窟に持ってきては陰干しをする。
 乾燥したところで割と雑に編んでいく。
 これが上着、スボン、リュック、布団になるのだ。

 ただ適当なのと草であるため、耐久性はないに等しく、すぐ駄目になる。
 人数分確保することを考えたら、すぐ予備が必要になって一年中終わらない。

「マッマ、ママ」
「はいはい」

 もちろん、子どもたちの面倒を見ながらだ。

 ただ、俺が魔道具の火魔法の棒を開発してから少し変化があった。
 まず、いままでオオカミが出たときはほぼ逃げ帰ってきていた。それがいまではご馳走に変わった。
 それから大きな違いは、オオカミの毛皮が手に入るようになったのだ。もちろんところどころ焦げていて損傷はあるが、そもそもないのとは違う。
 順番に毛皮の服が与えられるようになったのだ。

「グレア、ほーれ」
「きゃっきゃっ」
「高い、高ーい」
「ごぶぅ! きゃうう」

 グレアが楽しそうに声を上げる。
 午前中でオオカミを倒した日には、もうその日はお休みだ。
 最近では、獲物が多いので肉が余る程になってきている。
 ゴブリンの巣で遊んだりする時間ができた。
 本当に遊んでいる時間はあまりないが、前より余裕が生まれた。

 オオカミ狩りをした日は先にモツなどを食べる。
 余った肉は今度から塩を振り、陰干しすることで、ジャーキーに仕上げるようになった。
 今まで食料の備蓄などほぼなかったことを考えると格段の進歩だ。

「もぐもぐ、ジャーキーうまっ」
「よかったわね」
「おう、ほら、リーリアも食うか?」
「うん、ありがとう」

 仲睦まじく、オヤツにする。
 きゃっきゃっとグレアが笑った。
 ゴブリンでも思ったりずっと幸せである。

 グレアが生まれるより、だいぶ前の話だが、俺はある提案をした。

「洞窟内は排泄禁止にしよう」
「ゴブゴブ!」
「そ、そうか」
「俺が中心になってトイレ作るからそこでしてくれ」

 今までは割とそのへんで適当に排泄していた。
 しかし洞窟内でされると後で臭う。
 衛生的に考えてよくないだろう。

 洞窟のすぐ脇に穴を掘った。
 木の棒くらいしかないので苦労したが、なんとか完成させた。
 穴の上に木の板を渡して真ん中を空ける。
 ゴブリン村に文明の一つ、トイレができた瞬間であった。

 実は地球でも発展途上国を中心にまだトイレが普及していない地域は普通にある。
 ゴブリンも鼻が高い。どやあ。

 ということでグレアが生まれる前には衛生環境の改善が行われていたのだ。
 そのおかげか、グレアも元気いっぱい、すくすく育っている。
 ママのリーリアもびっくりの成長速度だ。
 人間ちゃんはこんなにすぐ大きくならないからね。
 どちらかというと、ペットや家畜に近い成長速度だろう。

 まだ生まれてそれほど経っていないのに、すでに片言にしゃべるし、もうハイハイを通り越して、よちよち歩き回る。
 ママのミルクもごくごく飲む。成長速度が早い分、大食漢なのだろう。
 お腹はゴブリンよろしくちょっと出てる。
 顔はママ、リーリアの影響なのか、ゴブリンにもかかわらずかなりかわいい。
 最近、乳歯の小さな前歯が生えてきた。かわいい。

「マッマ、パパ」
「ほーい。パパでちゅよぉ」
「きゃっきゃ、ママ、リーリア」
「そうよ、私はリーリア」
「パパ、ドゥル」
「おう、ドルだぞぉ」
「グレア!」
「そうだ、そうだ」
「みんにゃ、ゴブリン」
「そだ。俺たちはゴブリン」
「「「うおおおお」」」

 グレアを囲んで談笑する。
 本当に頭がいい。これでまだ生まれて三か月程度だってんだから。

「ファイニャ」
「うぉっと」

 グレアが指先に火を灯して見せてくれる。
 俺が適当に火魔法を見せてみたらすぐに真似したのだ。
 天才だ。この子は天才。完全に親バカだった。

 普段は割とおとなしい。
 リーリアと一緒に、草を編んだりする。

「んしょ、んしょ」
「ほら、こうやって交互に」
「ん、ううう」

 見様見真似で編んでいく。
 なんというか、やっぱり天才かな。すぐにできるようになった。
 手も小さいため、網目も普通より細かい。
 目が詰まっているため、これはこれで高級品みたいに見える。

「できた!」
「えらいわ」

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