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潜入捜査
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茹だったように顔を赤らめ、頭がこの状況に追い付かず大きな瞳に涙を浮かべている。訳が分からない恐怖に襲われながらも、逃げ道を模索し軽蔑するようにこちらを睨みつけてくる。
そんなロゼにグィードは、ゾクッとした高揚と衝撃を感じた。
(あぁ、まずいな……)
感じたことの無い高揚感。
女性から向けられる眼はいつも決まって恐怖か拒絶の二択だった。だが、ロゼだけは違った。
初めて会った時から彼女は私に敵意剥き出しで、突き放せばムキになって食ってかかってくる。そんな女性は初めてで、興味が湧いた。
本来なら指南役など私の仕事ではないが、彼女の相手ならという事で了承したのだが……
ボスンッと、ロゼの上に倒れ込むと「ぐげ」なんて蛙が潰れたような令嬢らしからぬ声が聞こえた。
「お、重ッ……潰れ……る!」
肩を叩きながら「退け」と訴えてくる姿があまりにも必死で、無様で憐れで……そんな姿をもっと見たいと思ってしまう。
私のようなものに魅入られてしまって同情はするが、手放すつもりは無い。
他の男が彼女に触れるのを見た時、自分の奥底に眠っていた醜い感情が溢れ出るのが分かった。正直、自分にそんな感情があった事に驚いた。
「……さて、どうしたものか」
「?」
自分に問いかけながら、ゆっくりと体を起こした。
***
その日の夜、とある屋敷でちょっとした祝賀会が行われる為、足を運んだ。
ここの主は少し変わった趣向の持ち主で、屋敷に着くなり仮面を渡された。顔を隠し、身分や地位関係なく楽しめると言うことなんだろう。
広間に通され、思わず足を止めた。
薄暗い室内に、むせかりそうなほど甘ったるい香が焚かれている。
入ってすぐ、目に付くのは淫らな姿で甘えるように男に抱きついたり、口付けをせがんだりして悦ばせている女性らの姿だった。
「気に入った娘がいたら、あちらの部屋をお使い下さい」
案内してくれた女がクスクスと愉しげに指をさした先には、個室になった部屋。まあ、言わずとも察しはつく。
「因みに、私でも宜しくてよ?」
真っ赤な唇が弧を描き、誘うように豊満な胸を押し付けてくる。
グィードはそんな女を蔑むように見下ろした。
「結構」
たった一言言い放つと、その冷たい視線に女の方も「ヒュッ」と息を飲み手を離した。
呆然とする女をその場に残し、目的である人物を探した。
(まったく、何故私が……)
事の始まりは昼まで遡る──……
「グィード。少しいいか?」
殿下に呼び止められ話を聞くと、妃選考に紛れてきな臭い噂があるから調べてくれ。との事。
「所詮は噂だが、火のないところに煙は立たない。どうせ、何処ぞの貴族らが自分の娘を私に充てがおうとしているのだろう。妃候補に危害を加える事は許さん」
殿下に頼まれたら嫌だとは言えず、潜入捜査へとやって来た訳だが……
(こういう役目はあの方の仕事でしょうに)
自分には不向きだと文句を唱えつつ、辺りに目を向ける。
(ああ、いましたね)
視線の先には、煙管を吹かしながら妖艶な姿で男を侍らかせている女主人の姿があった。彼女はこの屋敷の主、マルティーナ・デアボロ。裏世界を牛耳るデアボロ商会の女主人だ。
中々のやり手で、交渉一つ成立させるにも一筋縄ではいかない事で有名。ただ、請け負った仕事は完璧にやり遂げる。どんなに危険だと分かっていても、犯罪だと分かっていても請け負ったものは責任を持って完遂する。
そして、彼女はその道の情報網にも大変詳しい。今回彼女の元に来たのは、その情報を得る為。
「失礼いたします」
「ん?」
グィードが声をかけると、切れ長の目を細めて「おや」と口角を吊り上げた。
「これはこれは、珍妙な客が紛れたようだ……この方のお相手は私がしよう」
すぐにグィードの正体に気付き「奥の部屋へどうぞ?」と人払いをした後、部屋に通された。そこは先ほどまでの雰囲気とは打って変わって、普通の執務室と言った部屋。
「ふはっ、なんだい?期待でもしてたのか?」
「まさか」
マルティーナはドサッと中央にあるソファーに腰かけると仮面を外した。グィードも、向かい合うように座ると仮面を外した。
その姿を見て、マルティーナはニヤッと微笑んだ。
「流石、堅物の宰相殿だ。顔色一つ変えないね。……で?その宰相殿が何用だい?」
「単刀直入にお聞きしますが、今回の妃選考に手を出そうとしている者が?」
マルティーナは耳を傾けながら酒を注ぐと、グィードの前に差し出した。
「……それは、確証があって来たのかい」
「いいえ。今はまだ仮説です」
「それじゃあ、私が言えることはないね」
グイッと一気に酒を呷りながらあっさり言い返した。
聞きようによっては肯定してるとも取れる言葉だが、相手は癖者のマルティーナ。決めつけるには早すぎる。
「妃候補は正当な方法で選出されてます。彼女たちに手を出すようであれば、手を貸した貴女もタダでは済みませんよ?」
「脅しか?」
「いいえ。忠告ですよ」
「へぇ?」
肌に当たる空気がピリつくのが分かる。マルティーナが何を考えているのか分からず、グィードも次の言葉に困っていた。
そんな中「ふ」とほくそ笑だマルティーナが、ゆっくり腰を上げるのが見えた。
「そうだな。交換条件といこうか?」
ソファーに手を置き、覆い被さるように見下ろしながら問いかけてくる。
頬に長く艶やかな美しい髪が当たる。甘い香水の匂いと煙草の匂いが鼻につく。
顔を上げれば、息のかかりそうな距離にマルティーナの顔がある。
「この場は男も女も本能のまま楽しむ場。折角の機会だ。私を満足させる事が出来たら教えてやってもいい」
そっとグィードのシャツのボタンを外し、肌に沿うように手を滑らせ、首筋を舐めるように唇を当ててくる。
「ん」と思わず声が漏れる。
マルティーナは快楽に抗うグィードを恍惚とした表情で見ると、その唇を奪おうと顔を近づけた。
そんなロゼにグィードは、ゾクッとした高揚と衝撃を感じた。
(あぁ、まずいな……)
感じたことの無い高揚感。
女性から向けられる眼はいつも決まって恐怖か拒絶の二択だった。だが、ロゼだけは違った。
初めて会った時から彼女は私に敵意剥き出しで、突き放せばムキになって食ってかかってくる。そんな女性は初めてで、興味が湧いた。
本来なら指南役など私の仕事ではないが、彼女の相手ならという事で了承したのだが……
ボスンッと、ロゼの上に倒れ込むと「ぐげ」なんて蛙が潰れたような令嬢らしからぬ声が聞こえた。
「お、重ッ……潰れ……る!」
肩を叩きながら「退け」と訴えてくる姿があまりにも必死で、無様で憐れで……そんな姿をもっと見たいと思ってしまう。
私のようなものに魅入られてしまって同情はするが、手放すつもりは無い。
他の男が彼女に触れるのを見た時、自分の奥底に眠っていた醜い感情が溢れ出るのが分かった。正直、自分にそんな感情があった事に驚いた。
「……さて、どうしたものか」
「?」
自分に問いかけながら、ゆっくりと体を起こした。
***
その日の夜、とある屋敷でちょっとした祝賀会が行われる為、足を運んだ。
ここの主は少し変わった趣向の持ち主で、屋敷に着くなり仮面を渡された。顔を隠し、身分や地位関係なく楽しめると言うことなんだろう。
広間に通され、思わず足を止めた。
薄暗い室内に、むせかりそうなほど甘ったるい香が焚かれている。
入ってすぐ、目に付くのは淫らな姿で甘えるように男に抱きついたり、口付けをせがんだりして悦ばせている女性らの姿だった。
「気に入った娘がいたら、あちらの部屋をお使い下さい」
案内してくれた女がクスクスと愉しげに指をさした先には、個室になった部屋。まあ、言わずとも察しはつく。
「因みに、私でも宜しくてよ?」
真っ赤な唇が弧を描き、誘うように豊満な胸を押し付けてくる。
グィードはそんな女を蔑むように見下ろした。
「結構」
たった一言言い放つと、その冷たい視線に女の方も「ヒュッ」と息を飲み手を離した。
呆然とする女をその場に残し、目的である人物を探した。
(まったく、何故私が……)
事の始まりは昼まで遡る──……
「グィード。少しいいか?」
殿下に呼び止められ話を聞くと、妃選考に紛れてきな臭い噂があるから調べてくれ。との事。
「所詮は噂だが、火のないところに煙は立たない。どうせ、何処ぞの貴族らが自分の娘を私に充てがおうとしているのだろう。妃候補に危害を加える事は許さん」
殿下に頼まれたら嫌だとは言えず、潜入捜査へとやって来た訳だが……
(こういう役目はあの方の仕事でしょうに)
自分には不向きだと文句を唱えつつ、辺りに目を向ける。
(ああ、いましたね)
視線の先には、煙管を吹かしながら妖艶な姿で男を侍らかせている女主人の姿があった。彼女はこの屋敷の主、マルティーナ・デアボロ。裏世界を牛耳るデアボロ商会の女主人だ。
中々のやり手で、交渉一つ成立させるにも一筋縄ではいかない事で有名。ただ、請け負った仕事は完璧にやり遂げる。どんなに危険だと分かっていても、犯罪だと分かっていても請け負ったものは責任を持って完遂する。
そして、彼女はその道の情報網にも大変詳しい。今回彼女の元に来たのは、その情報を得る為。
「失礼いたします」
「ん?」
グィードが声をかけると、切れ長の目を細めて「おや」と口角を吊り上げた。
「これはこれは、珍妙な客が紛れたようだ……この方のお相手は私がしよう」
すぐにグィードの正体に気付き「奥の部屋へどうぞ?」と人払いをした後、部屋に通された。そこは先ほどまでの雰囲気とは打って変わって、普通の執務室と言った部屋。
「ふはっ、なんだい?期待でもしてたのか?」
「まさか」
マルティーナはドサッと中央にあるソファーに腰かけると仮面を外した。グィードも、向かい合うように座ると仮面を外した。
その姿を見て、マルティーナはニヤッと微笑んだ。
「流石、堅物の宰相殿だ。顔色一つ変えないね。……で?その宰相殿が何用だい?」
「単刀直入にお聞きしますが、今回の妃選考に手を出そうとしている者が?」
マルティーナは耳を傾けながら酒を注ぐと、グィードの前に差し出した。
「……それは、確証があって来たのかい」
「いいえ。今はまだ仮説です」
「それじゃあ、私が言えることはないね」
グイッと一気に酒を呷りながらあっさり言い返した。
聞きようによっては肯定してるとも取れる言葉だが、相手は癖者のマルティーナ。決めつけるには早すぎる。
「妃候補は正当な方法で選出されてます。彼女たちに手を出すようであれば、手を貸した貴女もタダでは済みませんよ?」
「脅しか?」
「いいえ。忠告ですよ」
「へぇ?」
肌に当たる空気がピリつくのが分かる。マルティーナが何を考えているのか分からず、グィードも次の言葉に困っていた。
そんな中「ふ」とほくそ笑だマルティーナが、ゆっくり腰を上げるのが見えた。
「そうだな。交換条件といこうか?」
ソファーに手を置き、覆い被さるように見下ろしながら問いかけてくる。
頬に長く艶やかな美しい髪が当たる。甘い香水の匂いと煙草の匂いが鼻につく。
顔を上げれば、息のかかりそうな距離にマルティーナの顔がある。
「この場は男も女も本能のまま楽しむ場。折角の機会だ。私を満足させる事が出来たら教えてやってもいい」
そっとグィードのシャツのボタンを外し、肌に沿うように手を滑らせ、首筋を舐めるように唇を当ててくる。
「ん」と思わず声が漏れる。
マルティーナは快楽に抗うグィードを恍惚とした表情で見ると、その唇を奪おうと顔を近づけた。
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