指南役とお妃教育

甘寧

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波乱のお茶会

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 数日後──……

「本日は妃候補方と交流の為に、お茶会を開きます」
「ンぐっ!?」

 朝食を食べている最中に言われ、喉に詰まらせて思わず死にかけた。

 それが数時間前の話。そして、今現在──

 城の中庭で妃候補6人が集まり、テーブルを囲んでいる。
 ロゼの正面には公爵令嬢のカルラが、その圧倒的な存在感を放ちながら座ってる。
 その左隣のキーカは心配になるほど顔面蒼白で、今にも倒れそう。背後に控えているエリスも心配そうだ。
 右隣にはアネットが、ヨアンと楽しげに話をしていて、その姿を睨みつけているのが子爵令嬢のクララ。

 そして、謁見の場以来の男爵令嬢のフローリア・ダフィ。階級は一番低いものの、肝が座っているのか随分と落ち着いている。

 彼女の相手は確か医官。白衣を着た、優しそうで穏やかな笑顔を向ける男性だった。

(なんで私だけ……)

 チラッとグィードを見れば「大人しくしてなさい」と厳しい言葉が投げ掛けられる。

(うちはこれだもんなぁ)

 どうしても不満が漏れる。

「ロゼさん?」
「え、はい!」

 急に声をかけられ、驚いて声が上擦った。

「ふふふっ、上の空でしたわよ?折角のお茶会ですもの。楽しみましょう?」

 上品な笑みを浮かべたアネットに指摘されてしまった。何だかんだ、アネットは私のことを気にかけてくれる。

「ヤダヤダ。いい子ちゃんアピールですか?」

 アネットに牙を剥くのはクララ。謁見の場以来、この二人は犬猿の仲となっている。

「あら、貴女ほどじゃないわよ?」
「私は元から気が利くんですぅ!」
「それは初耳でしたわ。気が利くと言うより、周りの空気を読めないのではなくって?」
「ッ!!」

 相変わらずの二人の様子に苦笑いを浮かべた。

「キーカ様」
「!」

 キーカに声をかけたのはカルラ。声をかけられたキーカは息が止まりそうなほど驚いている。

「お父様はお元気かしら?」
「え……と、はい」
「そう。それはようございました。てっきり貴女も生物学者の道に進むと思っておりましたが……」
「……」

 カルラの言葉にキーカは顔を俯かせて小さくなっている。

 生物学という道ではなく、妃という道を選んだことに対する嫌味。そして、自分の意思を貫き通さない事に対する失望が込められている。

(これだから女の巣窟は……)

「お言葉ですが……」とロゼが口を開いた。

「彼女の気持ちは彼女しか分かりません。他人が勝手に決めつけるのはあんまりだと思いますよ?」

 空気が重くならないように笑顔でカルラに物申した。

 カルラは暫く黙っていたが「ふぅ」と小さく息を吐いた。

「そんなつもりで言ったのではないのですけど、気を悪くさせたのなら謝ります」
「い、いえ、私は大丈夫です!」

 カルラは素直に頭を下げようとしたが、それをキーカが止めた。

 どうなるかと思ったけど、公爵令嬢だけあって懐が深いなと思いつつお茶を口にした。

「……わたくし、ずっと気になっていることがあるのですけど」

 アネットがカルラに問いかけるように口を開いた。

「カルラ様のお相手は騎士団長のライ様でしょう?そんなお忙しい方がお相手では、妃教育どころではないのでは?」

 ああ、それは私も気になっていた。

 ライ団長と言えば、その名を知らない者はいないと言われる程の腕前の持ち主。歳は40に近いと聞くが体力は全く衰えておらず、若い騎士からの憧れと尊敬は凄まじい。

「ですって、私の世話は大変かしら?ライ団長?」
「はぁ~……」

 クスッと意味ありげに微笑みながらライに問いかけると、腰に手を当てながら盛大に息を吐いた。

「俺はカルラ嬢の護衛役として選ばれただけだ。そもそも、彼女は一連の教育はすでにマスターしている」

「「え!?」」

 これには5人の候補らが驚いた。それと同時に「もう決まってるじゃん」と全員が思った。

 最後まで完遂した者が妃になると陛下が宣言していた。これはもう確定したとも言える。そして、ここまで妃教育を頑張って来た私達は道化に過ぎない。

(最初から踊らされていたんだ)

 本気で妃になれるとは思っていなかったが、こんな結末は酷すぎる。人の気持ちを何だと思ってるんだ。

 アネットは怒りをカルラにぶつける様に睨みつけ、クララは本気で妃を狙っていたと見えて可哀想なほど絶望している。キーカは……元より妃に興味がなかったのだろう。この蟲毒から抜け出せると顔が明るい。そして、フローリアは顔色ひとつ変えずに真っ直ぐとカルラを見据えている。

「はい。注目」

 パンッと手を叩き、視線を集めたのはグィード。

「皆さん何か誤解をしているようですね」
「え?」
「カルラ嬢は確かに一連の教育は終了しておりますが、陛下も仰っていたでしょう?妃教育を終えた者にと」

「いや、だから──」

 それが終わってると言いかけた時「そう言う事……」とアネットが眉間に皺を寄せながら呟いた。

「なるほど」「分かりました」と続いて声が上がる。この時点で気づいていないのは私だけ。

「え、どういう事?」

 教えを乞おうとグィードに問うが、ゴミを見るような目で見られた。

「その目はやめて!」
「もうかける言葉すらありません……」
「なんなのよぉ!」

 頭を抱えるグィードに、ロゼの嘆くような声がその場に響いた。



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