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心配のやり方
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まずは、誤魔化すように「んん゛っ」と咳払いして、気持ちを落ち着かせた。
ジルヴェスターは黙ってこちらの応えを待っているし、言葉を濁したら濁したで余計な好奇心が生まれてしまう。
「……なにか誤解があるようですが、向こうが勝手にしているだけで、私もその意思を尊重しているだけです」
間違ったことは言っていないが、ジルヴェスターは首を傾げている。
「そうなった要因は?もし良かったら聞かせてくれないか?」
「別にいいですけど……大した話じゃないですよ?」
「構わない」
そこまで言われたらこちらも話さない訳にはいかなず、ロゼはカルラ毒物事件の詳細を話して聞かせた。
アネットの誤解を解くために疑惑のクッキーを口にしたこと。無事に誤解は解けたが、グィードの機嫌が悪くなり今に至ることを……
「そもそも、私は元からアネットさんを疑ってはいなかったんです。だから躊躇いもなく口にしたのに……結果的に無事だったんだから、結果オーライで円満に終える所じゃないですか!?」
いつの間にか話す方にも力が入り、力説するロゼにジルヴェスターは「ん~…」と苦い顔をしている。
「まあ、君の言ってることも分かる」
「でしょ!?」
「だが、グィードの気持ちもよく分かる」
ロゼは「えぇ?」と納得いかないと言った表情を浮かべている。
「私も大切な人が同じ事をしたら、グィード同様に叱りつけるだろうな」
「殿下も?」
「ああ、今回は無事であったが、もし違えば一大事になっていた所だ。大切な人が目の前で倒れてみろ。私なら、一生悔やんでも悔やみきれない。きっとアイツも同じ気持ちだと思うぞ」
諭す様に一段と柔らかい口調で語りかけてくる。
「……あの人にとって、私は大切な人じゃないですよ?」
「それは君が決めることじゃない」
決めることじゃないが、決めつけることでもない。
「君はまだ知らないと思うが、アイツは誰よりも臆病で面倒な男だ」
「臆病?」
思わず顔が歪む。
「ふふっ、臆病だよ。その癖、素直になれない。……な?面倒だろ?」
臆病の概念が全く機能していないのだが?あの男を臆病だとすると、世の中臆病者で溢れてしまうが?
(面倒という点は否定しませんけど)
「はっ」と鼻で笑うロゼに、ジルヴェスターは暖かい視線を向けている。
「今はまだそれでいい。気付いた時には手遅れかもしれないけどな」
この人はまた、不安を煽るような言葉を投げつけてくる……
仏頂面で睨みつけると「ふはっ」とジルヴェスターが吹き出した。
「本当に君は面白い子だ。アイツが気に入るのも頷ける」
「くくくっ」と笑う姿は新しい玩具を見つけた子供のように無邪気で、こんな表情もするのかと思わず魅入ってしまった。
「あ」
突如、ジルヴェスターが何かに気が付き声を上げ、ロゼの肩を指さした。
「君の肩に毛虫」
「えっ!?」
この世で虫と名の付くものが大嫌いなロゼは「取って取って!」の軽いパニックに陥っている。
「落ち着け、大丈夫だ。ゆっくり息を吐いて、目を瞑れ」
言われるがまま、深呼吸して目を閉じた。
「そう、いい子だ」
目を閉じているせいか、殿下の声が凄く近くに聞こえる。気持ちを落ち着かせようとすればするほど、殿下を近くに感じてしまって、全然落ち着かない。
「ヒャッ!」
「ああ、すまない。手が触れてしまったか?」
「あ、だ、大丈夫……」
視界を失った身体は、神経が剥き出しになっているんじゃないかと思うほど敏感で、頬に指が触れただけでドキドキしてしまう。
(早く…早く取ってぇ!)
これ以上は心臓が持たない!
そんな気持ちを知ってか知らずか、ジルヴェスターは頬に指を滑らすように触れてくれる。
「……君は柔らかいな」
「や、そんな、触らな……んッ」
焦らすような触り方に声が漏れるが、ジルヴェスターは止めてくれない。
それどころか、見せつけるように顔を近付けている。
ジルヴェスターは黙ってこちらの応えを待っているし、言葉を濁したら濁したで余計な好奇心が生まれてしまう。
「……なにか誤解があるようですが、向こうが勝手にしているだけで、私もその意思を尊重しているだけです」
間違ったことは言っていないが、ジルヴェスターは首を傾げている。
「そうなった要因は?もし良かったら聞かせてくれないか?」
「別にいいですけど……大した話じゃないですよ?」
「構わない」
そこまで言われたらこちらも話さない訳にはいかなず、ロゼはカルラ毒物事件の詳細を話して聞かせた。
アネットの誤解を解くために疑惑のクッキーを口にしたこと。無事に誤解は解けたが、グィードの機嫌が悪くなり今に至ることを……
「そもそも、私は元からアネットさんを疑ってはいなかったんです。だから躊躇いもなく口にしたのに……結果的に無事だったんだから、結果オーライで円満に終える所じゃないですか!?」
いつの間にか話す方にも力が入り、力説するロゼにジルヴェスターは「ん~…」と苦い顔をしている。
「まあ、君の言ってることも分かる」
「でしょ!?」
「だが、グィードの気持ちもよく分かる」
ロゼは「えぇ?」と納得いかないと言った表情を浮かべている。
「私も大切な人が同じ事をしたら、グィード同様に叱りつけるだろうな」
「殿下も?」
「ああ、今回は無事であったが、もし違えば一大事になっていた所だ。大切な人が目の前で倒れてみろ。私なら、一生悔やんでも悔やみきれない。きっとアイツも同じ気持ちだと思うぞ」
諭す様に一段と柔らかい口調で語りかけてくる。
「……あの人にとって、私は大切な人じゃないですよ?」
「それは君が決めることじゃない」
決めることじゃないが、決めつけることでもない。
「君はまだ知らないと思うが、アイツは誰よりも臆病で面倒な男だ」
「臆病?」
思わず顔が歪む。
「ふふっ、臆病だよ。その癖、素直になれない。……な?面倒だろ?」
臆病の概念が全く機能していないのだが?あの男を臆病だとすると、世の中臆病者で溢れてしまうが?
(面倒という点は否定しませんけど)
「はっ」と鼻で笑うロゼに、ジルヴェスターは暖かい視線を向けている。
「今はまだそれでいい。気付いた時には手遅れかもしれないけどな」
この人はまた、不安を煽るような言葉を投げつけてくる……
仏頂面で睨みつけると「ふはっ」とジルヴェスターが吹き出した。
「本当に君は面白い子だ。アイツが気に入るのも頷ける」
「くくくっ」と笑う姿は新しい玩具を見つけた子供のように無邪気で、こんな表情もするのかと思わず魅入ってしまった。
「あ」
突如、ジルヴェスターが何かに気が付き声を上げ、ロゼの肩を指さした。
「君の肩に毛虫」
「えっ!?」
この世で虫と名の付くものが大嫌いなロゼは「取って取って!」の軽いパニックに陥っている。
「落ち着け、大丈夫だ。ゆっくり息を吐いて、目を瞑れ」
言われるがまま、深呼吸して目を閉じた。
「そう、いい子だ」
目を閉じているせいか、殿下の声が凄く近くに聞こえる。気持ちを落ち着かせようとすればするほど、殿下を近くに感じてしまって、全然落ち着かない。
「ヒャッ!」
「ああ、すまない。手が触れてしまったか?」
「あ、だ、大丈夫……」
視界を失った身体は、神経が剥き出しになっているんじゃないかと思うほど敏感で、頬に指が触れただけでドキドキしてしまう。
(早く…早く取ってぇ!)
これ以上は心臓が持たない!
そんな気持ちを知ってか知らずか、ジルヴェスターは頬に指を滑らすように触れてくれる。
「……君は柔らかいな」
「や、そんな、触らな……んッ」
焦らすような触り方に声が漏れるが、ジルヴェスターは止めてくれない。
それどころか、見せつけるように顔を近付けている。
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