手違いで召喚されたのはポンコツ聖女?─待っていたのは魔王からの溺愛でした─

甘寧

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4話

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本日の咲は朝から機嫌がいい。
何故なら、今日は待ちに待ったお給料日!!
本来ならお給料なんて貰える立場ではないが、貰えるもんは貰っとけ。とみんなに言われて、それならばと貰うことにした。

「はい。今月分です。お疲れ様でした」

ここは全て手渡しスタイルらしく、仕事終わりに魔王の執務室へ寄り貰って行くらしい。
咲も仕事を早急に終わらせ、レザゼルからお給料を貰った。

こちらにやって来て初めて手にするお金に感極まり涙が出そうになった。
新人の給料なんて大したことないが、それでも咲には十分だった。

「明日はお休みですし、城下へ出てみては如何です?」
「え?いいんですか?」

レザゼルの意外な提案に咲は驚いた。

魔界にも街があるのは知っていた。魔王城からよく街の賑わいを見て、一度は行ってみたいと思っていたのだ。
けれど、知らない魔族がうじゃうじゃいる街に行くのは流石の咲にも抵抗があり、中々行けずにいた。

「ええ、貴方一人という訳にはいきませんが、城の中で一人付き人として伴ってもらえば大丈夫ですよ。ただし、日が暮れる前に戻ってくる事。約束できますか?」
「はい!!」

貰ったばかりの給料を握りしめ、元気に返事を返した。


◈◈◈◈


「ほわぁぁぁぁ~~~!!!!」
「サキ!!ちょっと待って!!」

レザゼルに言われた通り、侍女仲間で咲と同じく休日だったララを半ば無理矢理連れ出して城下街へとやって来た。

「ララさん、ララさん!!あれ、あれ!!」
「ちょっと待って……こっちは夜勤明けなのよ……」

大きな欠伸をしながら咲の後をついてくるララ。
ララは夜行性の魔族なので、昼間は滅法弱いが咲に懇願され、断りきれずにここまでやって来た。

咲は念願の城下街へとやって来てテンションが爆上がりして、目に映るもの全てに興味津々の様子だった。

当然と言えば当然だが、人間は何処にもいない。
咲もフードを深く被り人間だと分からないようにしている。

前夜ゾイに城下街に出ることを伝えたら、外套に細工を程してくれた。

「顔は隠せても鼻が利く奴がおるでなぁ、人間の臭いなんて一瞬でバレてまうで?」

なんて事を言われたから用心の為に防臭と、幻影の術をかけてくれた。
それが功を奏しているのか、誰一人咲が人間だと言うことに気がついていない。

「お嬢ちゃん達!!一本どうだい!?さっき採れたてスルゴの蒲焼だよ!!」
「いただきます!!」

「おいおい!!こっちもあるぞ!!クルールの砂糖がけだ!!」
「それもいただきます!!」

街を歩く度に声をかけられ、咲の両手、口は既に一杯だ。
そんな咲をララは呆れながらも微笑ましく見ていた。

「もう、そんなに買い食いして、夕食が入らなくなるわよ?」
「大丈夫です!!歩きながら食べてるんで、蓄積と消費がプラマイゼロになる計算です」

胸を張りドヤ顔で言い切きる咲に、ララは苦笑いする事しか出来なかった。
とは言え、流石にこのまま両手に食べ物を持ったまま歩く訳には行かず、広場で休憩する事にした。

広場には沢山の子供連れやカップルまで様々な魔族がいた。
見た目は違えど、人間と何ら変わりのない風景だった。

「お嬢さん達~、暇してんなら俺らと遊ばない?」

気分よく食べている所へ、二人組の若い?魔族が声をかけてきた。
咲は口いっぱいに頬張った肉を噛み切りながら「どこの世界にもナンパってあるんだなぁ」としみじみ思った。

「あ~、申し訳ないんだけど、もう帰るところだから……」

ララがやんわりと断るが、ナンパ野郎ってのは基本執拗い。
目の前の二人も簡単には引き下がってくれないようだ。

「まあまあ、ちゃんと送ってくからさぁ」
「いや、あんたらに送ってもらう義理はないし」

ララは苛立ちながらも必死に断ろうとするが、全く聞く耳を持たない。
ララと一人が言い合いをしている内に、もう一人が咲の元へやって来た。

「ねぇねぇ、君の顔見せてよ。名前なんて言うの?」
「名乗るほどの者じゃありません」
「あははははは!!何その返し方!!」

いや、間違った返答はしていないと思うが?ダメなのか?

「君、最高!!ねぇ、僕こう見えて伯爵なんだけど、ここで会ったのも何かの縁だし、この後屋敷でお茶なんてどう?二人だけでさっ」

耳元で囁かれるように言われ、思わず鳥肌が立った。
いや、魔族だからとかじゃなく、に鳥肌が立ったのだ。

そのまま腕を掴まれ、引き摺るように連れていかれそうになり、必死に抵抗したが人間の小娘程度の力で敵う相手では無い。
咲は見知らぬ男に連れていかれるという恐怖で一杯になった。
そして、気がつけば自分の腕を掴んでいる手に力一杯噛み付いた。

「──ッ痛!!!」

手が離れた瞬間、咲は全力でその場から逃げた。

「サキ!!!!」

後ろからララが叫ぶ声がしたが、咲の耳には届かなかった。
一刻も早くこの場から逃げたい一心で走った。
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