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5話
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「うぅぅぅ~……気持ち悪い……」
咲は一心不乱に走った。
その結果、気がついた時には街中を通り過ぎ、薄気味悪い森の中だった。
適当な切り株に腰掛け、先程触られた腕を拭いながら辺りを見回した。
森の中は薄暗く、ジメッとした風が肌に触れる。更に森の奥からは鳥か獣か分からない鳴き声が響いているし、足元の草は普通に歩いて移動してる。
こんな訳の分からない場所で完全に袋小路状態。
さて、どうしたものかと考えた。
「私が帰ってない事に気づいたララさんが探してくれるかもだけど……」
問題はいつ発見されるかだ。
正直、こんな不気味な森の中で野宿は嫌だなぁ……
と、思っていると背後の茂みから唸り声が聞こえた。
その声があまりにも苦しそうで、思わず茂みの中を覗いてしまった。
「えっ!?」
そこにいたのは騎士の格好をした人が倒れていた。
見た感じ普通の人間の様だが、何故ここに人間が?なんて事が頭を掠めたが、今はそれどころでは無い。
「ちょっと!!大丈夫ですか!?どこか具合が悪いんですか!?」
声をかけるが返事がなく、慌てて体を揺すってみても返事はない。
「──ぬおッ!!!?」
体に触れた時、ヌメっとした感覚があり自分の手を見てみるとその手が真っ赤に染まっていた。
よくよく体を見ると鋭いもので胸から腹にかけてザックリ斬られており、そこから止めどなく血が溢れていた。
「ちょっ!!やばいやばい!!!えっ、えっ、こういう時どうすればいいの!?気道確保!?心臓マッサージ!?あっ!!119番!!」
人間焦るとまともな思考が出来ないものである。
咲が一人で狼狽えている間にも、血が溢れ血溜まりが出来ていた。
助けを呼びに行く!?例え人を呼んだとしても、この場所に戻ってこれる自信が無い。それ以前にこの人がそこまで持ちそうにない。
今まさに人が死にそうだと言うのに、何も出来ない自分が非力で不甲斐なくて自然と涙が溢れてきた。
「うぅぅぅ……ごめ、ごめんなさい……」
どうする事出来ず、力の無い大きな手を握りしめ謝るしか出来なかった。
すると、握っていた手が光り出し全身を淡い光に包まれた。
「な、な、な、なに!?!?!!!」
何が起こっているのか分からず、狼狽えていると光がスゥと消えた。
それと同時に今まで握っていた大きな手に力が加わり、咲の手を握り返してきた。
「えっ!?」
驚いた咲が倒れている騎士を見ると斬り傷は綺麗に塞がっていて、血も止まっていた。
大変喜ばしい事だが、咲は何故だかやっちまった感が拭えない。
(何だかここにいたらまずそうな気がする……)
怪我も治って血も止まったとなれば、この場にいる意味は無い。
咲はソッとその場から逃げようと、握られた手を離そうとしたその時、倒れている騎士がゆっくり目を開けた。
「わ、私は──……」
今まで死にかけていた人とは思えない早さで体を起こし、何が起こったのか確認するように体を触っていた。
「えっと……あの、大丈夫……みたいですね」
咲が恐る恐る声をかけると、騎士は信じられないものを見るような目でこちらを見ていた。
「聖女様!!!」
「はっ!?」
一番自分とは無縁の単語を言われた。
「あんな傷を綺麗に跡も残さずに治すことが出来るのは聖女様だけです!!」
「いえ、違います!!私はただの通りすがりですから!!」
「間違いありません!!貴方が我が国を救ってくれる聖女様です!!」
嫌な予感が的中。
目の前の騎士は興奮気味で咲に詰め寄ってきた。
「あの!!聖女云々は一旦置いといて、何があったのか話してくれませんか?貴方、人間ですよね?」
とりあえず誤解を解きたい所だが、今この人に何を言っても聞いてくれなさそうなので一旦落ち着くように促した。
「あぁ、私とした事が申し訳ありません。私は王立騎士団第一部隊隊長のフレデリック・レーマンと申します。確かに私は人間です。そういう聖女……ゴホンッ。貴方も人間ですよね?」
「えぇ……まあ、種族的には……?あ、私の名前はサキです」
聖女と言う単語を出そうとした瞬間、咲が思いっきり睨みつけると、言い直してくれた。
「私の率いる部隊は魔族専属部隊で、今回人間界へ降りてきた魔族を追っていたらこの森に誘い込まれ、隙を突かれあの様な怪我をした次第です。サキ様が現れなければ私はここで魔物の餌となっていた事でしょう」
フレデリックは改めて頭を下げて感謝を述べた。
「それで、サキ様は何故魔界などに?本来ならば教会で手厚い保護を受けているはずですが……?」
ドキッと心臓が縮み上がった。
本来ならば聖女として召喚される所が、手違いで魔界に召喚されました。なんて馬鹿正直に話したら強制連行の上、聖女と言う硬っ苦しい役職を持ち、教会と言う檻へ入れられ、最終的に王子と結婚…………
嫌だァァァァァァ!!!!!!
咲が頭を抱えて唸っていると、心配したフレデリックが咲の肩に触れようとした。だが、その手は何かに弾かれた。
「これは……!?」
咲には何があったのか分からず「?」状態だった。
その時、咲の頭の中で声がした。
『あぁ~……やっと見つけた』
聞きなれたハスキーボイス。
その声が聞こえてすぐ、ボンッ!!と煙を立てて声の主が現れた。
「魔王様!?!?!?!!!」
咲は一心不乱に走った。
その結果、気がついた時には街中を通り過ぎ、薄気味悪い森の中だった。
適当な切り株に腰掛け、先程触られた腕を拭いながら辺りを見回した。
森の中は薄暗く、ジメッとした風が肌に触れる。更に森の奥からは鳥か獣か分からない鳴き声が響いているし、足元の草は普通に歩いて移動してる。
こんな訳の分からない場所で完全に袋小路状態。
さて、どうしたものかと考えた。
「私が帰ってない事に気づいたララさんが探してくれるかもだけど……」
問題はいつ発見されるかだ。
正直、こんな不気味な森の中で野宿は嫌だなぁ……
と、思っていると背後の茂みから唸り声が聞こえた。
その声があまりにも苦しそうで、思わず茂みの中を覗いてしまった。
「えっ!?」
そこにいたのは騎士の格好をした人が倒れていた。
見た感じ普通の人間の様だが、何故ここに人間が?なんて事が頭を掠めたが、今はそれどころでは無い。
「ちょっと!!大丈夫ですか!?どこか具合が悪いんですか!?」
声をかけるが返事がなく、慌てて体を揺すってみても返事はない。
「──ぬおッ!!!?」
体に触れた時、ヌメっとした感覚があり自分の手を見てみるとその手が真っ赤に染まっていた。
よくよく体を見ると鋭いもので胸から腹にかけてザックリ斬られており、そこから止めどなく血が溢れていた。
「ちょっ!!やばいやばい!!!えっ、えっ、こういう時どうすればいいの!?気道確保!?心臓マッサージ!?あっ!!119番!!」
人間焦るとまともな思考が出来ないものである。
咲が一人で狼狽えている間にも、血が溢れ血溜まりが出来ていた。
助けを呼びに行く!?例え人を呼んだとしても、この場所に戻ってこれる自信が無い。それ以前にこの人がそこまで持ちそうにない。
今まさに人が死にそうだと言うのに、何も出来ない自分が非力で不甲斐なくて自然と涙が溢れてきた。
「うぅぅぅ……ごめ、ごめんなさい……」
どうする事出来ず、力の無い大きな手を握りしめ謝るしか出来なかった。
すると、握っていた手が光り出し全身を淡い光に包まれた。
「な、な、な、なに!?!?!!!」
何が起こっているのか分からず、狼狽えていると光がスゥと消えた。
それと同時に今まで握っていた大きな手に力が加わり、咲の手を握り返してきた。
「えっ!?」
驚いた咲が倒れている騎士を見ると斬り傷は綺麗に塞がっていて、血も止まっていた。
大変喜ばしい事だが、咲は何故だかやっちまった感が拭えない。
(何だかここにいたらまずそうな気がする……)
怪我も治って血も止まったとなれば、この場にいる意味は無い。
咲はソッとその場から逃げようと、握られた手を離そうとしたその時、倒れている騎士がゆっくり目を開けた。
「わ、私は──……」
今まで死にかけていた人とは思えない早さで体を起こし、何が起こったのか確認するように体を触っていた。
「えっと……あの、大丈夫……みたいですね」
咲が恐る恐る声をかけると、騎士は信じられないものを見るような目でこちらを見ていた。
「聖女様!!!」
「はっ!?」
一番自分とは無縁の単語を言われた。
「あんな傷を綺麗に跡も残さずに治すことが出来るのは聖女様だけです!!」
「いえ、違います!!私はただの通りすがりですから!!」
「間違いありません!!貴方が我が国を救ってくれる聖女様です!!」
嫌な予感が的中。
目の前の騎士は興奮気味で咲に詰め寄ってきた。
「あの!!聖女云々は一旦置いといて、何があったのか話してくれませんか?貴方、人間ですよね?」
とりあえず誤解を解きたい所だが、今この人に何を言っても聞いてくれなさそうなので一旦落ち着くように促した。
「あぁ、私とした事が申し訳ありません。私は王立騎士団第一部隊隊長のフレデリック・レーマンと申します。確かに私は人間です。そういう聖女……ゴホンッ。貴方も人間ですよね?」
「えぇ……まあ、種族的には……?あ、私の名前はサキです」
聖女と言う単語を出そうとした瞬間、咲が思いっきり睨みつけると、言い直してくれた。
「私の率いる部隊は魔族専属部隊で、今回人間界へ降りてきた魔族を追っていたらこの森に誘い込まれ、隙を突かれあの様な怪我をした次第です。サキ様が現れなければ私はここで魔物の餌となっていた事でしょう」
フレデリックは改めて頭を下げて感謝を述べた。
「それで、サキ様は何故魔界などに?本来ならば教会で手厚い保護を受けているはずですが……?」
ドキッと心臓が縮み上がった。
本来ならば聖女として召喚される所が、手違いで魔界に召喚されました。なんて馬鹿正直に話したら強制連行の上、聖女と言う硬っ苦しい役職を持ち、教会と言う檻へ入れられ、最終的に王子と結婚…………
嫌だァァァァァァ!!!!!!
咲が頭を抱えて唸っていると、心配したフレデリックが咲の肩に触れようとした。だが、その手は何かに弾かれた。
「これは……!?」
咲には何があったのか分からず「?」状態だった。
その時、咲の頭の中で声がした。
『あぁ~……やっと見つけた』
聞きなれたハスキーボイス。
その声が聞こえてすぐ、ボンッ!!と煙を立てて声の主が現れた。
「魔王様!?!?!?!!!」
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