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第9話
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私は今、人生の正念場を迎えているかもしれない。
その原因は、私の首かけられているネックレス。
私が全力で家に戻ったまでは良かった。
汗だくで帰ってきた私に母が「すぐお風呂に入りなさい!!」って言ってくれたから有難くお風呂に入ろうと服を脱いだの。
そしたらね、首からチャリッと金属音が……
見て見ると、あったよね……ルカリオが手にしていたネックレス……
もうね、本当ホラーよ!!一瞬で肝が冷えたって言葉そのもの!!
だって、返したネックレスが戻ってきたのよ!?ホラー以外の何物でもないわ!!
(……まあ、落ち着いて考えればホラーでも何でもないんだけどさ)
相手はあのウィザードマスターだ。
ネックレスぐらい特定の場所に飛ばせるだろうよ。
(ホラーはないけど、魔法がある世界だもんな……)
とまあ、このネックレスは返しても戻ってくる事が判明したので、返品はできない。
だが、着ける訳にもいかない。
……リリアンにバレた日にゃ大変だっつーの。
「それにしても綺麗な色……」
蒼?翠?変わった色の石。ルカリオの目と同じ色の石。
あの人がなんの為に私にくれたのか分からないけど、こんなバレバレのモノ持っていられない。
「……着けろとは言われてないもんね」
私はソッと机の引き出しに閉まった。
◆◆◆
「ア~ルエ!!」
うちの店の常連客と化したリリアンが、今日も店が終わる頃合で登場。
「……また来たんですか?」
「何よ、子分のくせに生意気よ。主をもっと労りなさいよ」
その設定まだ継続中なのね。
でも、何だかんだ今日のリリアンは機嫌が良さそうだ。
「何かいい事でもあったんですか?」
そう私が尋ねたら、気持ち悪いほどの笑顔で私に一枚のチケットを見せてきた。
「ジャーーーーン!!このチケットが目に入らぬか!!」
「……いや、なんです?これ?お芝居?」
見たところ普通のお芝居のチケットの様だが?
「チッチッチッ!!ただのチケットじゃないわよ。これはね、宰相フリッツとのイベントの鍵よ!!」
ルカリオの次は宰相様ですか?二頭追う者は一頭も得ずって言葉知らないのか?
まあ、リリアンは元々逆ハーエンドを狙っていたからな。
王子が堕ちないと分かった今、他の3人を何としてでも攻略したいのだろう。
「このお芝居は本当は殿下からチケットを貰って、殿下と一緒に鑑賞しに行くんだけど、館内で迷子になった私をフリッツが見つけてくれるってシナリオよ」
なるほど。──……ん?本当は殿下からチケットを貰う?じゃあ、このチケットの入手方は?
「リリアン。つかぬ事を聞きますが、このチケットは何処でどうやって入手したんです?」
「………………企業秘密よ………………」
リリアンはマズいと思ったのか顔を背けながら言いずらそうに言っていた。
怖いっ!!このヒロイン怖い!!
「本当はアルエの分も欲しかったんだけど、一枚が限界だったの……」
残念そうに私に伝えてきたリリアンだったが、私をそんな裏社会に引っ張りこまないで頂きたい。
「でも、まあ、しっかり攻略してくるから楽しみにしてて!!」
そう言いながら、店を出て行った。
今回、私は巻き込まれることは無さそうだと思って完全に安心しきって、鼻歌交じりに店を閉める準備を始めた。
店の扉の鍵を締めようとした。その時、勢いよく扉が開かれフードを被った人が飛び込んできた。
全力で走ってきたのだろう、息が切れ額には汗が滲んでいた。
(やだ、この人、追い返したい……)
だって、正体を知っているから。
この国の王子で時期国王のジェフリー・カルヴァートその人だもの。
だけど私には王子を追い返すほどの度胸は持っていない。……私はまだ命が欲しい。
それに、目の前で苦しそうに息を切らしている人をただ見ているのは忍びない。
私は裏から椅子を持ってきて座らせると、コップに一杯の水を渡した。
「毒は入っていないんで安心して飲んでください」
「……すまない……」
王子は一気に水を飲み干すと、フードを取った。
初めてちゃんと顔を見た王子は、まあ、王子だなって容姿だった。
綺麗な金髪に目鼻の整った美しい顔。気品漂う振る舞いに、誰が見ても『王子様』って感じ。
「あの、急いで来て頂いて申し訳ないんですけど、本日のパンは売り切れてしまって……」
店内を見渡しながらパンは無いですよアピールをしたが、どうやらパンが目的ではなかったらしい。
「いや、今日はパンを買いに来たんじゃない」
(あっ、嫌な予感……)
最近私の予感はことごと当たる。
いっその事占い師でもやろうかと思ってしまうほどだ。
「この間の礼が遅くなってしまったが、これを是非君に……」
王子は胸ポケットから一枚の紙を出てきた。
それは、リリアンが持っていたものと類似していた。
「……あの、これは……」
「あぁ、今流行りの芝居らしい」
知ってる。数分前に見た、聞いた、それ。
だからこそ受け取れない。
(これは絶対ダメなヤツや!!)
その原因は、私の首かけられているネックレス。
私が全力で家に戻ったまでは良かった。
汗だくで帰ってきた私に母が「すぐお風呂に入りなさい!!」って言ってくれたから有難くお風呂に入ろうと服を脱いだの。
そしたらね、首からチャリッと金属音が……
見て見ると、あったよね……ルカリオが手にしていたネックレス……
もうね、本当ホラーよ!!一瞬で肝が冷えたって言葉そのもの!!
だって、返したネックレスが戻ってきたのよ!?ホラー以外の何物でもないわ!!
(……まあ、落ち着いて考えればホラーでも何でもないんだけどさ)
相手はあのウィザードマスターだ。
ネックレスぐらい特定の場所に飛ばせるだろうよ。
(ホラーはないけど、魔法がある世界だもんな……)
とまあ、このネックレスは返しても戻ってくる事が判明したので、返品はできない。
だが、着ける訳にもいかない。
……リリアンにバレた日にゃ大変だっつーの。
「それにしても綺麗な色……」
蒼?翠?変わった色の石。ルカリオの目と同じ色の石。
あの人がなんの為に私にくれたのか分からないけど、こんなバレバレのモノ持っていられない。
「……着けろとは言われてないもんね」
私はソッと机の引き出しに閉まった。
◆◆◆
「ア~ルエ!!」
うちの店の常連客と化したリリアンが、今日も店が終わる頃合で登場。
「……また来たんですか?」
「何よ、子分のくせに生意気よ。主をもっと労りなさいよ」
その設定まだ継続中なのね。
でも、何だかんだ今日のリリアンは機嫌が良さそうだ。
「何かいい事でもあったんですか?」
そう私が尋ねたら、気持ち悪いほどの笑顔で私に一枚のチケットを見せてきた。
「ジャーーーーン!!このチケットが目に入らぬか!!」
「……いや、なんです?これ?お芝居?」
見たところ普通のお芝居のチケットの様だが?
「チッチッチッ!!ただのチケットじゃないわよ。これはね、宰相フリッツとのイベントの鍵よ!!」
ルカリオの次は宰相様ですか?二頭追う者は一頭も得ずって言葉知らないのか?
まあ、リリアンは元々逆ハーエンドを狙っていたからな。
王子が堕ちないと分かった今、他の3人を何としてでも攻略したいのだろう。
「このお芝居は本当は殿下からチケットを貰って、殿下と一緒に鑑賞しに行くんだけど、館内で迷子になった私をフリッツが見つけてくれるってシナリオよ」
なるほど。──……ん?本当は殿下からチケットを貰う?じゃあ、このチケットの入手方は?
「リリアン。つかぬ事を聞きますが、このチケットは何処でどうやって入手したんです?」
「………………企業秘密よ………………」
リリアンはマズいと思ったのか顔を背けながら言いずらそうに言っていた。
怖いっ!!このヒロイン怖い!!
「本当はアルエの分も欲しかったんだけど、一枚が限界だったの……」
残念そうに私に伝えてきたリリアンだったが、私をそんな裏社会に引っ張りこまないで頂きたい。
「でも、まあ、しっかり攻略してくるから楽しみにしてて!!」
そう言いながら、店を出て行った。
今回、私は巻き込まれることは無さそうだと思って完全に安心しきって、鼻歌交じりに店を閉める準備を始めた。
店の扉の鍵を締めようとした。その時、勢いよく扉が開かれフードを被った人が飛び込んできた。
全力で走ってきたのだろう、息が切れ額には汗が滲んでいた。
(やだ、この人、追い返したい……)
だって、正体を知っているから。
この国の王子で時期国王のジェフリー・カルヴァートその人だもの。
だけど私には王子を追い返すほどの度胸は持っていない。……私はまだ命が欲しい。
それに、目の前で苦しそうに息を切らしている人をただ見ているのは忍びない。
私は裏から椅子を持ってきて座らせると、コップに一杯の水を渡した。
「毒は入っていないんで安心して飲んでください」
「……すまない……」
王子は一気に水を飲み干すと、フードを取った。
初めてちゃんと顔を見た王子は、まあ、王子だなって容姿だった。
綺麗な金髪に目鼻の整った美しい顔。気品漂う振る舞いに、誰が見ても『王子様』って感じ。
「あの、急いで来て頂いて申し訳ないんですけど、本日のパンは売り切れてしまって……」
店内を見渡しながらパンは無いですよアピールをしたが、どうやらパンが目的ではなかったらしい。
「いや、今日はパンを買いに来たんじゃない」
(あっ、嫌な予感……)
最近私の予感はことごと当たる。
いっその事占い師でもやろうかと思ってしまうほどだ。
「この間の礼が遅くなってしまったが、これを是非君に……」
王子は胸ポケットから一枚の紙を出てきた。
それは、リリアンが持っていたものと類似していた。
「……あの、これは……」
「あぁ、今流行りの芝居らしい」
知ってる。数分前に見た、聞いた、それ。
だからこそ受け取れない。
(これは絶対ダメなヤツや!!)
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