悪役の烙印を押された令嬢は、危険な騎士に囚われて…

甘寧

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一難去ってまた一難

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 改めて、自分の置かれた立場を理解したセレーナは、頭を抱えるようにしてテーブルに突っ伏していた。

「久しぶりにあんな冷たい目見たな…」

 訝しげな目や奇異の目で見られる事はあったものの、ここ最近のラウルは随分と落ち着いていて、親しみが持てていた。

 それが全部自分の勘違いだったと思い知らされた。

「これからは気をつけなきゃ」

 折角残ったこの命、無駄にする訳にはいかない。 

「うん」と気合を入れつつ椅子を立った。

 すると、外からドサッと音がした。どうせ、ラウルが荷物を持って来たのだろう。そのぐらいに思っていた。

 しかし、いつまで待ってもノックされない扉にセレーナは違和感を覚え、そっと開けてみた。

「んなっ!?」

 そこには男の人がうつ伏せで倒れていた。

「大丈夫ですか!?」

 声をかければ、ピクっと指が動いた。

(良かった、生きてる!)

 ホッとしたの束の間、男性が倒れているのは敷地から少し離れた所。そして、私は敷地から出られない…

 出来れば這ってでもいいのでこちらまで来て欲しい所だが、それも難しい状態…

「んもう!迷っている場合か!人の命がかかってるんだ!規則は破る為にある!」

 後のことは考えるな!そう自分に言い聞かせ、一歩踏み出した。

「──痛ッ!」

 鋭い痛みが足に走り、見てみると足首に草の蔦のような痣が出来ている。

「何これ」

 触ってみるが、盛り上がっている様子もなければ痛みもなくなっている。不気味な感じはしたが、今はそんな場合じゃないと、倒れている男性の元へ駆け寄り、家の中へ運んだ。

 ベッドへ寝かすと、ゆっくりと水を飲ませた。

 怪我を負っている様子は無いし、貧血か何かで倒れただけだろう。少し寝かしておけば、目が覚めるはず。

(それにしても…)

 この人は何処の人だろう。見たところ、やんごとない感じが漂っているが…

(……あ、れ……?)

 なんか……目が…まわ……

 急に視界がぼやけ始め、意識を保っていられなくなったセレーナはその場で気を失ってしまった。





 しばらく経った頃、セレーナの家に一羽の小鳥が迷い込んできた。
 小鳥は真っ直ぐに寝ている男の元へ行くと、頭を突き始めた。

『師団長、師団長』

 口を聞く小鳥とは珍しい。

「あぁ~、もう、やかましいなぁ!」

 顔の周りで執拗に飛び回っていれば、嫌でも起きる。

『貴方を探すのにどれ程苦労したと思っているんですか!魔力不足で行き倒れるなんて前代未聞!早いとこお戻りを!』

 小鳥に説教される人間も珍しい。

 大きな欠伸をしながら、固まった体を解す様にゆっくりと伸びをした。

「おや?」

 ここでようやく、ベッドの脇で気を失っているセレーナに気がついた。助けて貰った礼は言わねばと、肩を揺らして起こそうとしたが、すぐに眉間に皺が寄る。

「これは、あかんなぁ」

 苦しそうに息を吐き、高熱で全身発汗している。足元を見れば、黒い蔦が蛇のように絡みついている。

 強力な呪いの一種。このまま放置しておけば、数時間で死に至るだろう。

『…どうしますか?』
「いつもなら放っておくとこやけど、このお嬢さんには助けてもろうた恩義があるからなぁ」

 小鳥の方も心配して声をかけると、面倒臭そうに頭を掻きながら答えが返ってきた。それに驚いたのが、問いかけた鳥の方。

『えっ!?なんと言いました!?恩義とか義理という言葉を知らない貴方が!?』
「うっさいわ。シバくぞ」

 キツイ言葉で言い返すとセレーナに向き合い、頭を優しく撫でた。

「辛いな。すぐに楽にしたる」

 呪文を唱えながら手をかざすと、淡い光がセレーナを包み込んだ。
 足に絡まる蔦が徐々に薄れていき、同調するように息は整い、熱と汗も引き始めた。

「おっしゃ。これで大丈夫やね」

 規則正しい寝息を立てるセレーナをベッドへ寝かすと、額に軽くキスをした。

「またね、心優しいお嬢さん」

 それだけ伝えると、小鳥と共に家を出た。


 ***


 ドンドンドンッ!!

 激しく打ち付けられる扉に、セレーナは重い瞼を開けた。

「ん…あれ…?私は、一体…」

 頭は痛いし、体が信じられないほど重い。

 そういえば、あの人は?

 寝かせていたはずのベッドに姿はなく、なんならセレーナ自身が寝ていた。あれ?と夢かまぼろしでも見ていたのかと首を傾げていると

 ドンッ!

 物凄い音ともに、扉が吹き飛んだ。その後すぐに、ラウルが勢いよく飛び込んできた。

「セレーナ!」
「はい?」

 額に汗を浮かべ、珍しく焦った表情を見せるラウルにセレーナは間の抜けたような返事を返した。

「なッ、貴女、何故無事なんです!?」

 目を見開いて驚いた。まるで化け物にでも遭遇した時のよう。…寝起きの私に失礼じゃないか?

「貴女、言いつけを破りましたね?」
「え?」

 静かに物々しく言われ、顔が引き攣る。覚悟はしていたが、いざとなると言葉が出てこない。

「あの陣はこちらに報告が来るとの同時に、破った者に呪いが掛かるように細工がされているのです」
「は!?」
「…とても強力なもので、ものの数時間でその者の命を奪うものです」
「何ですって!?」

 サァーと全身の血の気が引く音がした。

 あの、草のような蔦はそう言う意味だったのか…って言うか、そう言うことは最初に教えておいてよ!危うく死ぬところ…って

「あれ?なんで?」

 自分が何故生きているのか疑問に思い、ラウルに問いかけた。

「私にも分かりません。あれは易々と解けるような代物ではないはず…私にも解けるか難しい所です」

 この人にも解けない呪いって…エグくない?そんな呪いが、いつの間にか消えてる…どういう事?

「はっ!もしかして、無意識の内に私が自分で!?」
「貴女は私に解けないものが解ける自信がおありで?」
「その莫迦にするような眼はやめて」

 …けど、あんな汗をかくほど慌てて来るなんて…もしかして、心配してくれた…?──いや、この人に限ってそれは無い。

「まあ、不具合で上手く起動しなかったのでしょう。ですが、次はありませんよ?」

 全身が凍てつくような視線で言われたら「はい」以外答えようがない。

「それで?何故、言いつけを破ったのか聞いても?」

 尋問の始まりのようです…
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