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一難去ってまた一難(2)
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目を光らすラウルの前で、何があったのかを事細かに説明中。
「なるほど…話を纏めると、外に倒れていた男性を助ける為に決まりを破ったと?」
「…そうです」
「で?目が覚めたら、姿がなかったと?」
「はい…」
顔を俯かせながら答えた。
完全に、取り調べを受ける容疑者。心を覗くように鋭い視線で睨まれ、生きた心地がしない。
人を助けたんだから少しぐらいは目を瞑ってくれてもいいじゃない。そう思うが口には出せず、不貞腐れたように頬を膨らませて顔を背けていた。
「──ということは、私以外の男性をこの家にあげたという事ですね?」
ゾクッと背筋に悪寒が走った。
ヤバい!と思った時には、視界が反転。ベッドに押し倒されていた。
両手を拘束し、異様に殺気立っだ瞳を向けてくる。
「貴女は、自分が力の弱い女性だと言うことすら忘れてしまった様ですね」
「痛ッ!」
握られた手に力が込められ、痛みに顔が歪む。
「ご覧なさい。簡単に組み敷かれてしまう。…危機管理能力が足らなすぎて、見ているこちらは苛立って仕方ないんです」
あれ?…心配じゃなくて、苛立つんですか?
こういう場合、心配するのがお決まりだと思っていたが、この人に限っては違うらしい。
「いい機会です。危機感というものをその身体に教えてあげます」
「はぁ!?い、いえ、結構──ッひゃぁ!」
首筋に息を吹きかけられ、思わず声が出た。
脳内に警報が鳴り響く。逃げろと本能が訴えてくるが、この状況から逃げ出せる術がない。
訴えるばかりじゃなくて、逃げ出せる策をくれ!と自分の本能に問う。
「考え事とは、随分余裕ですね」
そう言うなり、首筋にキスされた。「ひっ!」なんて、色気のない声しか出てこない。
「あ、ああああああああぁぁぁあのッ!!」
ようやく出た言葉は、何を言いたいのかまったく分からない。ラウルは唇に指を当てて「シッ」と制止してくる。
セレーナは焦りと気恥しさと混乱で、どうにかなりそう。そんな中、ラウルの手はゆっくりと下に伸びていく。太腿に手が触れた瞬間、いい加減セレーナがキレた。
「……かげんに……しろ!!!」
ゴンッという大きな音共に、セレーナの頭突きが炸裂した。
「いくら騎士で団長だろうとやっていい事と悪い事があるわ!合意のない行為は暴行だっつーの!それともなんだ?俺に迫られて嫌がる女でもいないと思ったか!?ふざけんな!」
痛む額を押さえ蹲るラウルに、ここぞとばかりに言ってやった。
屈強な騎士だろうと無防備な状態で頭を攻撃されれば、そりゃ痛いだろうね。ざまぁみろ。
内心勝ち誇ったようにほくそ笑んでいたが、いつまで経ってもラウルが顔を上げてこない。流石に心配になり声をかけた。
「えっと…大丈夫?」
肩に手を置こうとした時「ふっ」と声が聞こえ、手が止まった。
「ふ…ふふ……あはははは!!」
高々とラウルの笑い声がその場に響く。
(あれ?頭の打ち所悪かった?気でも触れたか?)
自業自得だと思う一方、こんなことがお上にバレたらそれこそ一大事。団長になんてことを!的な感じに責められて牢に出戻るに決まってる。
(……逃げるか?)
逃げ道などないのだが、窮地に追い込まれると何処でもいいから隠れなけきゃいけないという気持ちになるから不思議だ。
「逃がしませんよ」
逃げる間もなく、我に返ったラウルに捕まった。
「女性から頭突きを貰ったのは生まれて初めてですよ。まあ、そのおかげで分かった事があります」
褒められているのか怒っているのかよく分からない表情で詰め寄られたが、この言い回しはあまり良くないものだという事だけは分かる。
「どうやら私は貴女の事が気に入っているらしい」
「は?」
空耳かと疑うほど、信じられない言葉が聞こえた。
「貴女が私ではなく、他の男の事を想っていると考えると腹の奥底から苛立ちと憎しみが込み上げてくるんです。貴女には私しかいない、それなのに縋る相手を違えるなんて、とね。それが例え殿下だとしても…」
私を映す瞳の奥には恐ろしい想いが潜んでいた。こんなの常識的な考えじゃない。
「ちょ、ちょっと待って。おかしいおかしい。だって、貴方ヒロイン…じゃなかったアイリーンの事が好きなんじゃないの!?」
「誰がそんなことを言いました?」
「・・・あれ?」
乙女ゲームの中の団長って言ったら必然的にヒロインに惹かれるものじゃないの?
(あれ?)
「ふふっ、本当に貴女は喜怒哀楽が分かり易い。そんなんでは、悪い狼にあっという間に食べられてしまいますよ?」
「い゛ッ!!」
首元を思い切り噛まれた。
「少しは危機感が持てましたか?」
唇を拭いながら微笑む姿は傍から見れば妖艶で見惚れるんだろうが、意味もなく首元を噛まれた方かすれば腹立たしいことこの上ない。
指でなぞれば、歯形がくっきり残っている。どんだけ強く噛んだんだよ…
「いいですね…その眼。殺ってしまいたくなる」
「……」
恍惚とした表情で殺害予告。気になる女に掛ける言葉じゃない。
どうやら、私はとんでもない相手に目を付けられたらしい。
「なるほど…話を纏めると、外に倒れていた男性を助ける為に決まりを破ったと?」
「…そうです」
「で?目が覚めたら、姿がなかったと?」
「はい…」
顔を俯かせながら答えた。
完全に、取り調べを受ける容疑者。心を覗くように鋭い視線で睨まれ、生きた心地がしない。
人を助けたんだから少しぐらいは目を瞑ってくれてもいいじゃない。そう思うが口には出せず、不貞腐れたように頬を膨らませて顔を背けていた。
「──ということは、私以外の男性をこの家にあげたという事ですね?」
ゾクッと背筋に悪寒が走った。
ヤバい!と思った時には、視界が反転。ベッドに押し倒されていた。
両手を拘束し、異様に殺気立っだ瞳を向けてくる。
「貴女は、自分が力の弱い女性だと言うことすら忘れてしまった様ですね」
「痛ッ!」
握られた手に力が込められ、痛みに顔が歪む。
「ご覧なさい。簡単に組み敷かれてしまう。…危機管理能力が足らなすぎて、見ているこちらは苛立って仕方ないんです」
あれ?…心配じゃなくて、苛立つんですか?
こういう場合、心配するのがお決まりだと思っていたが、この人に限っては違うらしい。
「いい機会です。危機感というものをその身体に教えてあげます」
「はぁ!?い、いえ、結構──ッひゃぁ!」
首筋に息を吹きかけられ、思わず声が出た。
脳内に警報が鳴り響く。逃げろと本能が訴えてくるが、この状況から逃げ出せる術がない。
訴えるばかりじゃなくて、逃げ出せる策をくれ!と自分の本能に問う。
「考え事とは、随分余裕ですね」
そう言うなり、首筋にキスされた。「ひっ!」なんて、色気のない声しか出てこない。
「あ、ああああああああぁぁぁあのッ!!」
ようやく出た言葉は、何を言いたいのかまったく分からない。ラウルは唇に指を当てて「シッ」と制止してくる。
セレーナは焦りと気恥しさと混乱で、どうにかなりそう。そんな中、ラウルの手はゆっくりと下に伸びていく。太腿に手が触れた瞬間、いい加減セレーナがキレた。
「……かげんに……しろ!!!」
ゴンッという大きな音共に、セレーナの頭突きが炸裂した。
「いくら騎士で団長だろうとやっていい事と悪い事があるわ!合意のない行為は暴行だっつーの!それともなんだ?俺に迫られて嫌がる女でもいないと思ったか!?ふざけんな!」
痛む額を押さえ蹲るラウルに、ここぞとばかりに言ってやった。
屈強な騎士だろうと無防備な状態で頭を攻撃されれば、そりゃ痛いだろうね。ざまぁみろ。
内心勝ち誇ったようにほくそ笑んでいたが、いつまで経ってもラウルが顔を上げてこない。流石に心配になり声をかけた。
「えっと…大丈夫?」
肩に手を置こうとした時「ふっ」と声が聞こえ、手が止まった。
「ふ…ふふ……あはははは!!」
高々とラウルの笑い声がその場に響く。
(あれ?頭の打ち所悪かった?気でも触れたか?)
自業自得だと思う一方、こんなことがお上にバレたらそれこそ一大事。団長になんてことを!的な感じに責められて牢に出戻るに決まってる。
(……逃げるか?)
逃げ道などないのだが、窮地に追い込まれると何処でもいいから隠れなけきゃいけないという気持ちになるから不思議だ。
「逃がしませんよ」
逃げる間もなく、我に返ったラウルに捕まった。
「女性から頭突きを貰ったのは生まれて初めてですよ。まあ、そのおかげで分かった事があります」
褒められているのか怒っているのかよく分からない表情で詰め寄られたが、この言い回しはあまり良くないものだという事だけは分かる。
「どうやら私は貴女の事が気に入っているらしい」
「は?」
空耳かと疑うほど、信じられない言葉が聞こえた。
「貴女が私ではなく、他の男の事を想っていると考えると腹の奥底から苛立ちと憎しみが込み上げてくるんです。貴女には私しかいない、それなのに縋る相手を違えるなんて、とね。それが例え殿下だとしても…」
私を映す瞳の奥には恐ろしい想いが潜んでいた。こんなの常識的な考えじゃない。
「ちょ、ちょっと待って。おかしいおかしい。だって、貴方ヒロイン…じゃなかったアイリーンの事が好きなんじゃないの!?」
「誰がそんなことを言いました?」
「・・・あれ?」
乙女ゲームの中の団長って言ったら必然的にヒロインに惹かれるものじゃないの?
(あれ?)
「ふふっ、本当に貴女は喜怒哀楽が分かり易い。そんなんでは、悪い狼にあっという間に食べられてしまいますよ?」
「い゛ッ!!」
首元を思い切り噛まれた。
「少しは危機感が持てましたか?」
唇を拭いながら微笑む姿は傍から見れば妖艶で見惚れるんだろうが、意味もなく首元を噛まれた方かすれば腹立たしいことこの上ない。
指でなぞれば、歯形がくっきり残っている。どんだけ強く噛んだんだよ…
「いいですね…その眼。殺ってしまいたくなる」
「……」
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どうやら、私はとんでもない相手に目を付けられたらしい。
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