悪役の烙印を押された令嬢は、危険な騎士に囚われて…

甘寧

文字の大きさ
16 / 17

愛憎とヤンデレ(2)

「セレーナ?」

 その声の主を目の前に、セレーナはただただ戸惑いを見せたのと同時に『逃げなきゃ』という警告が脳内を巡る。

「なぜ貴女がここに?」

 ゆっくりと近付いてくるラウルに、堪らずセレーナは逃げ出した。後ろから名を呼ぶ声と引き止める声が聞こえるが立ち止まっては駄目だと自分に言い聞かせて無我夢中で走った。

 あとちょっと、あとちょっとで城を出られる。そう思った所で強く腰を引かれた。

「捕まえましたよ」
「あ、れ?」
「私から逃げられるとでも思いました?」

 いや、そりゃ、騎士と令嬢じゃ体力の差があるから無理なのは承知の上だったし、ワンチャンいけるかと思って…

「ちょ、ちょっと待って!まずは私の話を聞いて!」
「ええ、聞きますよ?私の部屋でね」

 スゥと目を細めて言われれば『ヤバイ』の三文字が浮かび上がる訳で…

「ここで話すから!離して!」

 ジタバタと暴れるが「遠慮はいりませんよ」なんて涼しい顔をしているだけでビクともしない。こういう時に限って周りには人気がなくて助けも呼べない。

 助けを呼んだところで、不審者と不審者を取り押さえた団長の絵図だが、この際不審者で牢にぶち込まれた方がマシだとすら思えてくる。

「いい加減諦めなさい」
「嫌よ!誰があんたなんかの言う事を聞くもんですか!」
「ほお?随分と威勢のいいことを言いますね…そこまで言われたら私も黙ってはいられませんよ?」

 纏っている空気が変った事に気付き、言い過ぎたと後悔したが時すでに遅し。セレーナが声をかけても黙ったまま足早に部屋に向かい、部屋に着くなり乱暴にベッドに投げられた。

「ちょっと待って!私も言い過ぎた!謝るから、一旦落ち着いて!」

 上着を脱ぎ棄て、ギシッとベッドに上がってくるラウルを止めるが聞く耳を持たない。

「もう黙って」

 甘い言葉と甘い香りが鼻と脳を刺激してくる。昨晩の事を思い出し、すぐに顔が熱くなる。

「あ」

 ラウルの綺麗な顔が近づき、唇が触れる。優しく蕩けるようなキス。昨晩の貪るようなキスとは大違い。

「ふふっ先ほどの勢いが嘘の様ですね」
「なッ!」

 小馬鹿にしたように言われてカチンとした。

「だ、だって、昨日と、その、違うから…」
「ああ、昨晩のように激しいのがお好みでしたか?それですと、気を失うかとおもいまして」
「え?」
「おや、覚えていませんか?昨晩、貴女気を失ってそのまま眠ってしまったんですよ?」
「そうなの?」

 確かに、キャパ的にも限界だったのは自覚してる。いくら薬を盛られたからとはいえキスだけで気絶って、生娘じゃないんだから…ってセレーナこの体は生娘だったわ。

 あれ?という事は、彼とはまだ未遂という事になるよね?てっきり情事後かと思ったが、これは嬉しい誤算!この人と既成事実なんて作った日には人生終了の鐘が鳴る。

「ちょ、ちょっとストップ!」

 どさくさに胸元のボタンを外そうと手を掛けていたラウルを突き飛ばして止めた。

「何です?今更止めれませんよ?」

 不機嫌全開で睨みつけてくるが、そこは全力で止めにかからせていただく。

「いやいや、おかしいって。こういう行為って、お互いを知ってお互いに愛があるって分かって初めてするものでしょ?貴方だって、自己満だけの行為は空虚感があると思うわよ?」
「……」
「貴方の気持ちは十分に分かった。だけど、私は貴方の事がよく分からない。正直、恐いし信用ならないと思ってる」
「随分はっきり言いますね」
「遠回しに言っても伝わなきゃ意味がないでしょ?」
「それもそうですね」

 ラウルは私から少し離れた所に座り「それで?」と話を聞いてくれる姿勢を取ってくれた。

「貴方の事を知りたい」

 真っ直ぐと瞳を見ながら伝えた。

「私は貴方に監視されている身。この先も何年続くか分からない。それなら腹を括って貴方を知ろうと思う。そもそも、罪人と騎士団長とでは身分の差があるから、知れることと言えばしれているかもしれないけど」

 果たして、この程度でラウルが折れてくれるか…賭けだった。

 ラウルは目を見開いて驚いた表情をしていたが、すぐに「あははは」と笑い出した。

「貴女は面白い事を言う。なるほど、私の事を知りたいと…くくくっ、そんな事を言ったひとは貴女が初めてですね」

 初めて見る優しい瞳。こんな風に優しく笑う事も出来るんだ…

「そうですね。私も配慮が欠けていました。なら、少し手を出せばすぐに喰らいつくと思ったんですが、違ったようですね」

 それは、俺なら簡単に堕とせてヤれるという意味だろうか?どんだけ自分に自信がおありで?まあ、以前のセレーナなら喜んで喰われただろう。

「どうやら、貴女は私が思っている以上におこちゃま純情のようだ」

 純情かどうか問われたら違うと即答するところだがこの場合、否定せずに肯定しておくのが最善だと、この世界に来て学んだ。

「いいでしょう。時間をかけてゆっくり教えて差し上げます」

 鋭い眼光を向けながら言われたら宣戦布告のように感じる。

「お、お手柔らかにお願いします」

 とりあえずこの場を切り抜けることには成功した。…多分?

感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。