「悪役令嬢は愛おしきモフモフ♡へ押しかけたい‼︎」(完結)

深月カナメ

文字の大きさ
6 / 32

ルイの話

しおりを挟む
 洞窟の奥に向かいながら俺は困惑していた。
 なぜ、あの子は俺を怖がらないと……人食い虎が出ると噂がある森で平気に眠り。甘い匂い垂れ流し、小さなお尻を向けて、俺の足元でまるまった可愛い女の子。

 俺の姿を見て怖がり、叫んだのかと思ったが違った。まさか叫んだ理由がコルセットがキツいって……ふふっ、面白いことを言う子だな。

(ますます興味が湧いた)

 既に噛んだ後だ、手放す気はないのだけどね。


 +


 僕の名前はルイ。いや本名はルケーイ・ラルテもとこのラルテ国の第一王子で王太子になる予定だった。俺は音楽の天才とも言われていたんだ。俺が奏でる楽器はプロ級。魔法と勉強もやればやるほどに何できた。いや、そうなる様に陰で努力をして見せていた。

 やがて15歳になり念願の音楽学園に入る前に高熱で倒れた。それから5日間もの間、熱が下がらず医者に見せても原因不明で分からないと言われた。  

(嫌だ、まだ俺は死にたくない)

 そう強く願ったときに声が聞こえた。『私がお前を助けてやろう』誰かが伸ばした手を握った。
 次、目が覚めると体が嘘のように軽い、奇跡にも俺の熱は引いたんだ。しかし、部屋に看病しにやってきたメイドは俺を見て悲鳴をあげた。

「きゃぁーーっ…ルケーイ王子!!」

 その声に駆けつけて声を失う父上と、次に俺を見た母上は悲鳴を上げて倒れた。

 いったい何が起きているんだ? 

「ルイ……助かったのだな」

 父上は何も言わずに俺を抱きしめてくれた。今日はそのまま寝ていなさい。まだ体もだるかった俺は父上に言われたとおり眠った。

 翌朝、俺に怯えるメイドに鏡を取ってもらった。その鏡に写ったのは……

「虎だ…」

 どうやら熱が下がると俺は虎の獣人に変わっていた。この国で獣人はめずらしい種族。あんなにメイドが怯えるんだと父上に「周りを怖がらす」と伝えて、楽しみにしていた音楽学園の入学を諦めた。

 使用人たちも顔には出さないが、みんなは怖がっている。俺はもう王族としてもやってはいけないのだろう。ここにいてはダメなんだ。

(城を出よう)

 そう考えたのは母上の化け物を見るような目だ。お前はもう私の子ではないとそう母上の瞳は言っている。気になったから、城を出る前にどうしてこうなったのか、原因を書庫で調べた所、このラルテ国を作った初代は獣人だったと記されていた。

 先祖返りか? いや、高熱で倒れた俺を助けたは、初代獣人の国王だ。唯一残っていた書物の肖像画に「あなたのお陰で助かりました」とお礼をした。

 これで、ここに未練はない。これから先、俺は獣人として生きていくと決めた。出ていく前に父上の部屋で2人キリで話ができた。

「父上、俺は近々この城を出て行くよ」

「どうしてだ、ルイ?」

「わかるでしょう父上! みんなが俺を見て驚く……もうここに俺はふさわしくない……母上にあの目で見られるのも耐えきれない」

「ルイ……私はお前はどんな姿になろうとも大事な息子だ。それは変わらぬ」

「ありがとう、父上……」

 嬉しくて涙を流した、父上はソファーから立ち上がり、俺を両手で抱きしめてくれた。この城の中でただ一人、俺を今も昔も大事にしてくれる。「住む場所だけは一緒に決めさせてくれ」と言い。時間を見つけて父上と一緒にこれから住む場所を選んだ。

「この街に屋敷を立てるか?」

「ダメです、この街の人が驚いてしまいます」

「そうか……」

「ここは?」と見つけたのが国の西外れの森。その森の奥に大きな洞窟を見つけた。ここにしますと伝えると、父上はすぐさま魔導師を呼び寄せ。洞窟の奥にいまの俺の部屋を魔法で移動させて、1人でも快適に暮らせる空間を作ってくださった。

「ありがとう父上、俺はここにいるから……」

「ルケーイ、たまにはコッソリと城に帰ってきなさい。来たときには私の部屋で待っているといい」

「はい、父上」

 その時はそんなやりとりをしたと思う。しかし父上は我慢できなかったらしく。毎日のように手紙を送り、騎士がコッソリ俺の好きな食べ物に本を持って来る。嬉しかったけど俺は旅に出ようと思っていた。それは獣人の仲間が欲しかった。

 旅立つ前に王城に行き、その事を父上に報告した。

「俺は仲間を探す旅に出る」

「それは本当か、本当なのか? だったら騎士を2、3人いや、10人、50人連れていきなさい」

「それでは王城の警備が手薄になります。俺は一人で平気ですよ父上。何も危ないことをするわけでないですから」

「だがしかし」と言う父上を説得して了解してもらった。獣人にはなかなか会えないと思っていたのだが…一番最初の街ですんなりと会えた。すぐに意気投合した俺た達…だか奴には欠点があった…

 オオカミのリトは無類の女好きだった。

 奴は言う「俺を受け入れてくれる女なら誰でもいい、人間でも獣人でもどんな種族でも女なら誰でもいい」と言っていた。

「はは、ルイ女はいいぞ、特に胸の大きな豊満な女は癒されるぞ」

「やめろ、リト。俺に女を押し付けるな」

 長身のリト。今日もまた女連れで酔っ払ってやがる。初めてあった獣人がこれなのか無理だ。俺は女は嫌い、恐怖に怯える母上を思い出すから嫌い。

 しばらく滞在して他の獣人を探しに、他の場所にそろそろ行こうと思っていたある日。

「よっ、ルイ」

「どうした、リト?」

 珍しく酔っ払っていないリトが俺が滞在する宿まで来た。リトは「怒らずに聞いてくれ」そう言って話しを始めた。

「本当は話を聞き。お前を見に来たんだ…王子が獣人になるなんてな面白いだろ」

 面白いだとは、なんて失礼な奴だ。

「俺は好きでこの姿になったのではない」

「そう怒るな。俺達はもう獣人仲間だろ、なあ、王子助けてくれよ」

「助けてくれだと?」

 話を聞くとリトはここから一山も二山をも越えた、かなり人里から離れた小さな村から来たと言った。ほんの数週間前までは静かな村で、獣人の仲間たちとのんびり暮らしていた。

 そこにいきなり人間どもが現れ平和だった村は焼かれ、仲間はなんとか逃げ延びた。

「仲間達はいま村の近くの洞窟で身を潜めていて、食べ物が底をつきそうなんだ」

 いつも女と酒に酔っていたリトが頭を下げた。

「頼む、助けてくれ」

 住むところを見つけにここまで来て、俺の噂話を耳にした、もしかすると頼めるかもと、探しに行こうとしていた所に、ちょうど俺が来たとリトは言った。

 俺なら俺たちのことが分かると信じてる。

「リトの話はわかった」

「よろしく頼む、本当にピンチなんだ」

 彼の顔は本当だと言っている。

「わかった。戻って父上と相談をしてくる。少し時間をくれ」

 俺は自分の洞窟にすぐに戻り、父上に手紙を送った。

 父上から、すぐに調べると返ってきた手紙から数日後、その話は本当でリトの言っていた洞窟には、身を潜め怯えていた獣人達を見つけたと、報告を受けた。

 彼らは見つけた騎士達に威嚇をしたそうだ。かなり痩せていて、人間に怯えているとの事。また、城に行き父上に相談をした、俺ではこの問題は大きすぎた。

「父上、いい案はないでしょうか?」

 しばらく父上は考えて。

「だったら、ここから南に進み海を渡った先にある、私の避暑地に連れて行くのはどうだ?」

「あの島ですか……いいですね、島はず温かいし、果物も豊富です。早速、彼に話してみます」

 すぐに隣町にも戻り、リトに話すと大いに喜んだ。喜びすぎて俺に抱きつき、リトは大泣きをした。彼の大事な母親もその洞窟にいたと後で聞いた。

「本当にいいのか?  俺達がその島に住みついても大丈夫か? 後でダメだも言わないか?」

「ああ、安心しろ。父上に俺の名義に変えてもらったから、あの島は俺の持ち物だ。だだし悪さはするなよ」

「わかった。ありがとうルイ、お前に会えてよかった」

 また泣き出したリト。そのまま彼は泣きながら、すぐにみんなを呼んで来ると、喜んで帰って行った。

 それから3年が経つ。みんなは島で平和に暮らしていると情報の他に新しい獣人が来たよ、店を作ったと。毎週のように来る、リトからの手紙で島の情報を知った。

 俺もここが寒くなったら行こう、そろそろ寒くなる時期が来るからな。

「そういや」

 最近来た手紙に女性が島にやって来た。歳は15、16くらいだ。その女の作る菓子が上手い……しかし人間だどうしたらいい? 内容はそんな感じに書かれていた。

 島に移ってから調べればいいか。
 しかし、偶然か俺も小さな女の子を拾った。

「くふふふ」

 また寝ながら、変な笑い声を出す小さな女の子。

 人食い虎が出ると言う森。噂を父上に頼んで言いふらしてもらっているのに知らないのか? この子は本当に猛獣がいたら、どうするつもりだったのだろう?

 だって、彼女は公爵家のお嬢様で弟の婚約者候補。まさか、彼女は……弟の変態趣味を知って逃げたのか!

 アレは誰でも逃げるよな、弟の趣味に彼女はドンピシャだから。僕が守ってあげよう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

悪役令嬢ですが、二度目は無能で通します……なので執事は黙っててください

放浪人
恋愛
社交界で“悪女”と呼ばれ、無実の罪で断罪された公爵令嬢リディア。 処刑の刃が落ちた瞬間、彼女は断罪される半年前の朝に時を遡っていた。 「二度目も殺されるなんて御免だわ。私は、何もできない無能な令嬢になって生き延びる!」 有能さが仇になったと悟ったリディアは、プライドも実績も捨てて「無能」を装い、北の辺境・白夜領へ引きこもる計画を立てる。 これで平和なスローライフが送れる……はずだった。 けれど、幼い頃から仕える専属執事・レージだけは誤魔化せない。 彼はリディアの嘘を最初から見抜いているくせに、涼しい顔で「無能な主人」を完璧に演じさせてくれないのだ。 「黙っててと言いましたよね?」 「ええ。ですから黙って、あなたが快適に過ごせるよう裏ですべて処理しておきました」 過保護すぎる執事に管理され、逃げ道を塞がれながらも、リディアは持ち前の正義感で領地の危機を次々と救ってしまう。 隠したいのに、有能さがダダ漏れ。 そうこうするうちに王都からは聖女と王太子の魔の手が迫り――? 「守られるだけはもう終わり。……レージ、私に力を貸しなさい」 これは、一度死んだ令嬢が「言葉」と「誇り」を取り戻し、過保護な執事の手を振りほどいて、対等なパートナーとして共に幸せを掴み取るまでの物語。

悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。 両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。 母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。 リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。 マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。 すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。 修道院で聖女様に覚醒して…… 大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない 完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく 今回も短編です 誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡

処理中です...