(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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 王子の婚約者候補として選ばれて――早々、五年の年月が経っていた。まだ、ほかの令嬢の中に紋様が出た者はおらず。私を含め十二人のご令嬢たちは婚約者候補のままだった。

 私は願っていた。五年もの間に他のご令嬢に紋様が浮かんでぇと、その願いは叶わなかった。誰もが王子の心をゲットできなかったのか? やはり紋様はヒロインではないと、浮かばない仕様なのかもしれない。

 
 初夏の七月――今日は満月。

 今朝、アンブレラ公爵家では、鳴き声が上がった。
 それは毎年七月は私と王子とのデートの日。、

「いっ、いや、嫌にゃー!!」

 私(十五)はオフトゥンから出る事を嫌がり。メイドーー白猫ナターシャ(三十五)と格闘していた。

「ミタリアお嬢様! 本日は王子とのデートの日です。お嬢様、大人しくペンダントを付けて、獣化をお解きしましょうね」

「ノット、ペンダント! 嫌ですにゃ!」

 毎年の恒例行事――嫌がる私を子供をあやすように、宥めるナターシャ。

「ミタリアお嬢様、十五にもなって文句ばかり言わず。お風呂に入って、ピカピカになりましょうね」

「お風呂は昨日の夜に入ったにゃ!」

「お嬢様! 本日は第一王子リチャード・ローランド様とお会いする日なのですよ。身も心も綺麗にしなくてはなりません! お嬢様、ペンダントをお着けてください」

 いま言っている――獣化とは本来の猫の姿になること。
 生まれて一年でわかるらしい。私は生まれてから突如、猫の姿になったらしい。そしてたまに獣人に戻る、それを繰り返した。

 ある程度――物心つく頃には自分の意思でなれるのだけど。感情――起伏が激しい時にはいきなり獣化してしまい、しばらく戻れなくなったりと安定しない。

 両親と、両方のお爺様、お婆様――先祖達は通常の獣人だったのに……

 何故か私だけ原種の血が濃く、獣化する特殊な獣人として生まれた。

 でも、ゲームの中でミタリアは獣化していなかったはずなのにどうしてか、分からないけどバグが起きたとか? 

 はたまた神様の意地悪か? ゲームのミタリアとは違い獣化してしまうのだ。そして、獣化すると言葉に出す時だけ、旧猫語になるのが恥ずかしい。

「嫌にゃ――王城になんて行きたくないにゃー、王子にも会いたくないにゃー。大好き、ふかふかオフトゥンからも出たくないのにゃ!」

 メイドのナターシャにふぅーっと威嚇して、爪をたて、オフトゥンを離さないとしがみついた。


「ミタリアお嬢様!」


 今日は原種の血が濃くなる満月。
 この日に王子のお相手となる者に番の証――王家特殊な紋様が浮かぶとされている。
 約月一で、習い事、執務などがお忙しい王子とお昼過ぎ頃。王都、庭園、書庫、はたまた外で買い物、花畑、乗馬、玉遊び、狩りなど一時間から三時間くらい王子とデートをする。
 
 しかし、一見楽しげに見える王子デートにも罰則がある――王子とは手を繋ぐまで、むやみに抱きついたり、キスを迫ってはならない。王子の逆鱗に触れれば即、婚約者候補から外される。

 だったらキスでもして即刻、候補から外れればと思ったけど。やはり夢みるお年頃――前世でも夢見ていた、初めては好きになった人とキスしたい。
 
 王子はイケメンだったけど、破滅――国外追放、牢屋は遠慮したい。前世の記憶でなんとか生き残れるなんて思わない。生きていける人は物知りか、運が良くチートを貰った人だけだ。

「ミタリアお嬢様、諦めてください! リチャード王子のこと、大好きではなかったのですか?」

「それは遠い昔の話にゃ! いまは私はオフトゥンが一番好き、このふかふかオフトゥンと将来結婚する!」

「それは、無理な話です!」

 突如、コンコンコンと部屋の扉が叩かれ。
 そして扉の向こうから、お父様とお母様の声が聞こえる。

「ミタリア、王城に出発する時間だぞ」

「あなた、まだ、同じ事をやっているの!」

「ひぃー、お父様とお母様が来たにゃあ~!」

 私とナターシャのドタバタ騒ぎに両親が助っ人に来てしまった。勢いよく開く扉――扉の向こう側にキレ気味の綺麗な黒猫お母様と、獣化した私を見ないようにしている、これまたイケメンダンディーな黒猫お父様。

 お父様は部屋の入り口で止まり、お母様はズカズカと部屋に入って来る。逃げれないと悟った私はオフトゥンをしっかり握った。

「ミタリア! 毎回、いい加減にしなさい! あなたも手助けしてちょうだい!」

「嫌、しかし、私は――年頃な娘の裸は見れない!」

 目を瞑ってしまう(イケメンダンディー)お父様可愛い。

「あなたの娘でしょうが! ミタリア、オフトゥンから手を離しなさい!」

「無理にゃ!」

 仕方がないとお母様は獣化を解く(獣化解除)魔石が埋め込まれた、ペンダントをナターシャから受け取った。

 このペンダントは獣化する獣人が、簡単に【獣化】しない、してもすぐに戻れる様にと作られたペンダント。私が猫のまま――獣化することが分かり。
 両親が魔導具屋で、特殊に作って貰ったペンダントだ。

 獣化する獣人は特殊で、人族などに変わったペットとして高値で売れる為、誘拐されてしまうことが多い。年に数人、獣化する獣人が神隠しにあうのは、そのせいだとも言われている。

「アイ、ラブ、オフトゥン!」

「ミタリアお嬢様、爪をしまってオフトゥンから手を、お離しになってください!」

「ミタリア、いい加減に観念しなさい!」

「にゃーお母様、酷い」

 いくら暴れても、ペンダントを着けられて獣化を解かれた。でも捕まるか! と、半獣――耳と尻尾付き人型のまま部屋の中を走り回ったのだけど。私の扱いに慣れたナターシャに捕まった。

「オフッ!」

 彼女の巧みな手捌きでペンダントを外す間も無く、お風呂に入れられて、素早く乾かし、可愛いドレスを着せられて、当家の馬車に放り込まれて。

 ガチャリ。逃亡防止の外鍵をかけられた。
 いつの間に馬車の外に鍵がぁ!

 両親とナターシャが頑張るわけは。王子とのデートに一分でも遅れると多額の罰金と婚約候補から外れる。私がそれを狙っていると両親にばれているのか、毎回、ニ時間以上も早く起こされていた。

 王子の婚約者になる為に多額の金額を払ったのなら(これは、ゲームでの話だけど……)実際はほんとうかは知らない。でも、嫌がる娘のために多額の罰金払ってよ! と言いたい。

 ……かなりの罰金だけど。

 私を見送りにきた両親とナターシャ。結構、疲れき出ているが、一仕事が終わりみんなは笑顔だ。

「ミタリア、いってらっしゃい」

「頑張るのだぞ!」

「お父様、お母様、ナターシャも酷すぎにゃー!」

「いってらっしゃいませ、ミタリアお嬢様。お好きな桃のシャーベットを作って、お帰りを待っておりますね」

 桃……のシャーベット。

「……ううっ、いってくるにゃ」

 私を乗せた馬車という名の監獄は、王城に向けて走り出した。
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