(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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リチャード王子

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 俺は国王となるべく生まれた。プレッシャーは物心ついた時から常に感じていた。十歳の頃から国王の職務、書類にサインなどの執務に慣れるために、父上から書類を少しずつ任されて初めた。

(書類整理だけでも大変なのに、婚約者たちとデートをしろだと!)  
 
 自分に婚約者候補が十歳の頃に十二人選ばれた。皆、名のある令嬢ばかり。その候補の令嬢たちと満月の日にデートが始まった。

 彼女たちは毎回綺麗に着飾り、俺が近寄れば頬を赤らめ、少しでも自分が選ばれようとしているのが目にわかる。

 俺の誕生会はもっと派手になって、他の者――婚約者ではない者を下に見て、目つきが変わり。俺の見ていないところで彼女たちはいがみ合い、罵り合うと側近のリルに聞いた。

 そして、歳を追うことに行動範囲は広がり、乗馬、狩り、王都などになっていった。楽しいが彼女たちのご機嫌取りは疲れる。俺の心ない言葉に傷付き、泣いてしまう令嬢もいた。

 まさか『疲れたな、今日はこれで終わろう』こんなことで泣くとは……。俺なりに彼女を労ったんだけどな。優しくないと、冷たいと言って俺を嫌いになり、婚約者候補を辞退してくれてもいい。

 その令嬢たちの中で一人、猫族ーー黒猫令嬢だけは違った。毎回デートに来ても琥珀色の瞳を輝かせて俺に「お昼寝デートしませんか?」彼女は屈託のない笑顔で俺にそう言った。

 お昼寝デート? まったくこの令嬢は俺に興味がないのか、はたまた多忙な俺を休ませるためか、令嬢の魂胆は分からないが。

 息抜きと、好きな読書ができるのは俺もありがたい。

 最初は本当に寝るんだと驚きはしたが――毎年、彼女は同じ要求をした。他はないのかと聞いても彼女は微笑んで「お昼寝です」と今回も琥珀色の瞳を輝かせて答えた。

 もう少し、俺に興味を持てよミタリア。



 そして――今回も始まった書庫デート(彼女にとっては昼寝デート)俺は久しぶりの読書に夢中で気付かなかった、近くで眠る彼女側からコトッと、何か硬い物が音を立てて床に落ちる音を聞いた。

(ん?)

 それに気付き、どうしたのかと見た俺の目に飛び込んだのは。
 ミタリアがいたはずの所にぱかーんと、へそ天であられもない姿で眠る黒猫がいた。

「えっ、獣化? この黒猫はミタリア嬢か?」

 ほんとうに彼女かと、俺がミタリアと呼ぶと。
 その黒猫は尻尾でフリフリ返事を返したのだ。

 はぁ? まて、へそ天……なんて寝相なんだ。
 あ、あまり見ては彼女に失礼だよな。

 いや、勝手に獣化して、へそ天を晒したのは彼女自身だ。こんな大胆な令嬢はいままで見たことがない。

 それに父上の周りの者たち、俺の従者たち以外に獣化をする獣人に、いままで会ったことがなかった。

(猫の獣化は初めて見た。小さくて、可愛いなぁ……)

 毎年、彼女の胸にあったペンダントは、獣化を抑制する魔石のペンダントだったのか。

「にゃっ、にゃー!」

 その姿のまま、クネクネするな。と、視線をずらした。

「まったく……俺を信頼してくれるのは嬉しいが、気を許し過ぎだ!」

 しかも書庫で……いま、人はらいをしているとはいえ、扉の前には警備騎士がいるんだぞ。
 このまま、ここにいるわけにはいかない。
 あと一時間くらいでデートの時間が終わったと、外に居る警備騎士が呼びに来てしまう。

 獣化した彼女の姿を見られてしまうな。

 猫の姿で眠る。ミタリア・アンブレラ――彼女の獣化は婚約者候補の資料に書かれていなかった。あの普段の態度からして、俺の婚約者に選ばれないように、わざと書かなかったのだな。

 クックク、そうかミタリア。
 しかし、このまま書庫にいるのはまずいな。

 俺はぐっすり眠る彼女を自分のジャケットに包み、側に落ちていたミタリアの服などを集めた。それを持ち外の警備騎士に部屋に戻ると告げて、自分の部屋に連れていきベッドに寝かした。

「にゃぁ、にゃぁ」

「ミタリア、起きたのか?……いや、寝てるか。はぁ……おい、こらっ、ヘソ天するなミタリア!」

 彼女はまた自分の名前に尻尾を振り、返事を返すだけで、一向に目を覚まさない。

「またか……まさか? その大胆なポーズで俺を誘っているのか?」

 と、彼女に言ってみても、スースーと無防備に寝息をあげていた。
 他の令嬢は俺に選ばれたくて、これでもかと着飾るのに。
 ミタリアは毎回――普通だな。彼女に男として見られていないと思うと、段々とイラついてきた。

「勝手に獣化して、無防備に俺の横で、眠ったのが悪い」

 彼女のもふもふな頬をガジガジかじった。
 歯が頬に触れると眠っていても分かるらしく、やめてと嫌がり体をよじる。

 こんな事をされても、目を覚まさないのか……そうだ。

 俺はミタリアをベッド寝かしたまま部屋を離れて、父上の執務室に向かった。
 そして父上に彼女ーーミタリア・アンブレラ嬢を婚約者にしたいと伝えた。父上は書類から顔を上げて「そうか、決めたのだな」その言葉に俺は頷いた。

 必要な書類にさっさと自分の名前を書き、公爵アンブレラ家にその書類と手紙を早馬で送った。

 他の候補者には手紙を後日送ることにした。

 いま送った書類が手元に戻れば、正式にミタリアが俺の婚約者に決まる。手続きに30分くらいかかり、部屋で寝ているミタリアも目を覚ましているだろうと戻ったが……彼女はまだ、ぐっすり寝ていた。

 彼女はそうとう俺のオフトゥンが気に入ったらしく、くねくねと体をくねらせ、ベッドの感触を楽しみながら寝ていた。

(……可愛い)

 父上に『人前では外すな』と言われている魔石付きの腕輪だが。お前は俺の婚約者なのだから、いいだろうと外して獣化した。

「ミタリア嬢、いい加減に起きろ!」

「に、にゃっ?」

 俺の声に、彼女は可愛い鳴き声を上げて、目を覚ました。
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