6 / 65
リチャード王子
しおりを挟む
俺は国王となるべく生まれた。プレッシャーは物心ついた時から常に感じていた。十歳の頃から国王の職務、書類にサインなどの執務に慣れるために、父上から書類を少しずつ任されて初めた。
(書類整理だけでも大変なのに、婚約者たちとデートをしろだと!)
自分に婚約者候補が十歳の頃に十二人選ばれた。皆、名のある令嬢ばかり。その候補の令嬢たちと満月の日にデートが始まった。
彼女たちは毎回綺麗に着飾り、俺が近寄れば頬を赤らめ、少しでも自分が選ばれようとしているのが目にわかる。
俺の誕生会はもっと派手になって、他の者――婚約者ではない者を下に見て、目つきが変わり。俺の見ていないところで彼女たちはいがみ合い、罵り合うと側近のリルに聞いた。
そして、歳を追うことに行動範囲は広がり、乗馬、狩り、王都などになっていった。楽しいが彼女たちのご機嫌取りは疲れる。俺の心ない言葉に傷付き、泣いてしまう令嬢もいた。
まさか『疲れたな、今日はこれで終わろう』こんなことで泣くとは……。俺なりに彼女を労ったんだけどな。優しくないと、冷たいと言って俺を嫌いになり、婚約者候補を辞退してくれてもいい。
その令嬢たちの中で一人、猫族ーー黒猫令嬢だけは違った。毎回デートに来ても琥珀色の瞳を輝かせて俺に「お昼寝デートしませんか?」彼女は屈託のない笑顔で俺にそう言った。
お昼寝デート? まったくこの令嬢は俺に興味がないのか、はたまた多忙な俺を休ませるためか、令嬢の魂胆は分からないが。
息抜きと、好きな読書ができるのは俺もありがたい。
最初は本当に寝るんだと驚きはしたが――毎年、彼女は同じ要求をした。他はないのかと聞いても彼女は微笑んで「お昼寝です」と今回も琥珀色の瞳を輝かせて答えた。
もう少し、俺に興味を持てよミタリア。
そして――今回も始まった書庫デート(彼女にとっては昼寝デート)俺は久しぶりの読書に夢中で気付かなかった、近くで眠る彼女側からコトッと、何か硬い物が音を立てて床に落ちる音を聞いた。
(ん?)
それに気付き、どうしたのかと見た俺の目に飛び込んだのは。
ミタリアがいたはずの所にぱかーんと、へそ天であられもない姿で眠る黒猫がいた。
「えっ、獣化? この黒猫はミタリア嬢か?」
ほんとうに彼女かと、俺がミタリアと呼ぶと。
その黒猫は尻尾でフリフリ返事を返したのだ。
はぁ? まて、へそ天……なんて寝相なんだ。
あ、あまり見ては彼女に失礼だよな。
いや、勝手に獣化して、へそ天を晒したのは彼女自身だ。こんな大胆な令嬢はいままで見たことがない。
それに父上の周りの者たち、俺の従者たち以外に獣化をする獣人に、いままで会ったことがなかった。
(猫の獣化は初めて見た。小さくて、可愛いなぁ……)
毎年、彼女の胸にあったペンダントは、獣化を抑制する魔石のペンダントだったのか。
「にゃっ、にゃー!」
その姿のまま、クネクネするな。と、視線をずらした。
「まったく……俺を信頼してくれるのは嬉しいが、気を許し過ぎだ!」
しかも書庫で……いま、人はらいをしているとはいえ、扉の前には警備騎士がいるんだぞ。
このまま、ここにいるわけにはいかない。
あと一時間くらいでデートの時間が終わったと、外に居る警備騎士が呼びに来てしまう。
獣化した彼女の姿を見られてしまうな。
猫の姿で眠る。ミタリア・アンブレラ――彼女の獣化は婚約者候補の資料に書かれていなかった。あの普段の態度からして、俺の婚約者に選ばれないように、わざと書かなかったのだな。
クックク、そうかミタリア。
しかし、このまま書庫にいるのはまずいな。
俺はぐっすり眠る彼女を自分のジャケットに包み、側に落ちていたミタリアの服などを集めた。それを持ち外の警備騎士に部屋に戻ると告げて、自分の部屋に連れていきベッドに寝かした。
「にゃぁ、にゃぁ」
「ミタリア、起きたのか?……いや、寝てるか。はぁ……おい、こらっ、ヘソ天するなミタリア!」
彼女はまた自分の名前に尻尾を振り、返事を返すだけで、一向に目を覚まさない。
「またか……まさか? その大胆なポーズで俺を誘っているのか?」
と、彼女に言ってみても、スースーと無防備に寝息をあげていた。
他の令嬢は俺に選ばれたくて、これでもかと着飾るのに。
ミタリアは毎回――普通だな。彼女に男として見られていないと思うと、段々とイラついてきた。
「勝手に獣化して、無防備に俺の横で、眠ったのが悪い」
彼女のもふもふな頬をガジガジかじった。
歯が頬に触れると眠っていても分かるらしく、やめてと嫌がり体をよじる。
こんな事をされても、目を覚まさないのか……そうだ。
俺はミタリアをベッド寝かしたまま部屋を離れて、父上の執務室に向かった。
そして父上に彼女ーーミタリア・アンブレラ嬢を婚約者にしたいと伝えた。父上は書類から顔を上げて「そうか、決めたのだな」その言葉に俺は頷いた。
必要な書類にさっさと自分の名前を書き、公爵アンブレラ家にその書類と手紙を早馬で送った。
他の候補者には手紙を後日送ることにした。
いま送った書類が手元に戻れば、正式にミタリアが俺の婚約者に決まる。手続きに30分くらいかかり、部屋で寝ているミタリアも目を覚ましているだろうと戻ったが……彼女はまだ、ぐっすり寝ていた。
彼女はそうとう俺のオフトゥンが気に入ったらしく、くねくねと体をくねらせ、ベッドの感触を楽しみながら寝ていた。
(……可愛い)
父上に『人前では外すな』と言われている魔石付きの腕輪だが。お前は俺の婚約者なのだから、いいだろうと外して獣化した。
「ミタリア嬢、いい加減に起きろ!」
「に、にゃっ?」
俺の声に、彼女は可愛い鳴き声を上げて、目を覚ました。
(書類整理だけでも大変なのに、婚約者たちとデートをしろだと!)
自分に婚約者候補が十歳の頃に十二人選ばれた。皆、名のある令嬢ばかり。その候補の令嬢たちと満月の日にデートが始まった。
彼女たちは毎回綺麗に着飾り、俺が近寄れば頬を赤らめ、少しでも自分が選ばれようとしているのが目にわかる。
俺の誕生会はもっと派手になって、他の者――婚約者ではない者を下に見て、目つきが変わり。俺の見ていないところで彼女たちはいがみ合い、罵り合うと側近のリルに聞いた。
そして、歳を追うことに行動範囲は広がり、乗馬、狩り、王都などになっていった。楽しいが彼女たちのご機嫌取りは疲れる。俺の心ない言葉に傷付き、泣いてしまう令嬢もいた。
まさか『疲れたな、今日はこれで終わろう』こんなことで泣くとは……。俺なりに彼女を労ったんだけどな。優しくないと、冷たいと言って俺を嫌いになり、婚約者候補を辞退してくれてもいい。
その令嬢たちの中で一人、猫族ーー黒猫令嬢だけは違った。毎回デートに来ても琥珀色の瞳を輝かせて俺に「お昼寝デートしませんか?」彼女は屈託のない笑顔で俺にそう言った。
お昼寝デート? まったくこの令嬢は俺に興味がないのか、はたまた多忙な俺を休ませるためか、令嬢の魂胆は分からないが。
息抜きと、好きな読書ができるのは俺もありがたい。
最初は本当に寝るんだと驚きはしたが――毎年、彼女は同じ要求をした。他はないのかと聞いても彼女は微笑んで「お昼寝です」と今回も琥珀色の瞳を輝かせて答えた。
もう少し、俺に興味を持てよミタリア。
そして――今回も始まった書庫デート(彼女にとっては昼寝デート)俺は久しぶりの読書に夢中で気付かなかった、近くで眠る彼女側からコトッと、何か硬い物が音を立てて床に落ちる音を聞いた。
(ん?)
それに気付き、どうしたのかと見た俺の目に飛び込んだのは。
ミタリアがいたはずの所にぱかーんと、へそ天であられもない姿で眠る黒猫がいた。
「えっ、獣化? この黒猫はミタリア嬢か?」
ほんとうに彼女かと、俺がミタリアと呼ぶと。
その黒猫は尻尾でフリフリ返事を返したのだ。
はぁ? まて、へそ天……なんて寝相なんだ。
あ、あまり見ては彼女に失礼だよな。
いや、勝手に獣化して、へそ天を晒したのは彼女自身だ。こんな大胆な令嬢はいままで見たことがない。
それに父上の周りの者たち、俺の従者たち以外に獣化をする獣人に、いままで会ったことがなかった。
(猫の獣化は初めて見た。小さくて、可愛いなぁ……)
毎年、彼女の胸にあったペンダントは、獣化を抑制する魔石のペンダントだったのか。
「にゃっ、にゃー!」
その姿のまま、クネクネするな。と、視線をずらした。
「まったく……俺を信頼してくれるのは嬉しいが、気を許し過ぎだ!」
しかも書庫で……いま、人はらいをしているとはいえ、扉の前には警備騎士がいるんだぞ。
このまま、ここにいるわけにはいかない。
あと一時間くらいでデートの時間が終わったと、外に居る警備騎士が呼びに来てしまう。
獣化した彼女の姿を見られてしまうな。
猫の姿で眠る。ミタリア・アンブレラ――彼女の獣化は婚約者候補の資料に書かれていなかった。あの普段の態度からして、俺の婚約者に選ばれないように、わざと書かなかったのだな。
クックク、そうかミタリア。
しかし、このまま書庫にいるのはまずいな。
俺はぐっすり眠る彼女を自分のジャケットに包み、側に落ちていたミタリアの服などを集めた。それを持ち外の警備騎士に部屋に戻ると告げて、自分の部屋に連れていきベッドに寝かした。
「にゃぁ、にゃぁ」
「ミタリア、起きたのか?……いや、寝てるか。はぁ……おい、こらっ、ヘソ天するなミタリア!」
彼女はまた自分の名前に尻尾を振り、返事を返すだけで、一向に目を覚まさない。
「またか……まさか? その大胆なポーズで俺を誘っているのか?」
と、彼女に言ってみても、スースーと無防備に寝息をあげていた。
他の令嬢は俺に選ばれたくて、これでもかと着飾るのに。
ミタリアは毎回――普通だな。彼女に男として見られていないと思うと、段々とイラついてきた。
「勝手に獣化して、無防備に俺の横で、眠ったのが悪い」
彼女のもふもふな頬をガジガジかじった。
歯が頬に触れると眠っていても分かるらしく、やめてと嫌がり体をよじる。
こんな事をされても、目を覚まさないのか……そうだ。
俺はミタリアをベッド寝かしたまま部屋を離れて、父上の執務室に向かった。
そして父上に彼女ーーミタリア・アンブレラ嬢を婚約者にしたいと伝えた。父上は書類から顔を上げて「そうか、決めたのだな」その言葉に俺は頷いた。
必要な書類にさっさと自分の名前を書き、公爵アンブレラ家にその書類と手紙を早馬で送った。
他の候補者には手紙を後日送ることにした。
いま送った書類が手元に戻れば、正式にミタリアが俺の婚約者に決まる。手続きに30分くらいかかり、部屋で寝ているミタリアも目を覚ましているだろうと戻ったが……彼女はまだ、ぐっすり寝ていた。
彼女はそうとう俺のオフトゥンが気に入ったらしく、くねくねと体をくねらせ、ベッドの感触を楽しみながら寝ていた。
(……可愛い)
父上に『人前では外すな』と言われている魔石付きの腕輪だが。お前は俺の婚約者なのだから、いいだろうと外して獣化した。
「ミタリア嬢、いい加減に起きろ!」
「に、にゃっ?」
俺の声に、彼女は可愛い鳴き声を上げて、目を覚ました。
0
あなたにおすすめの小説
モブ令嬢、当て馬の恋を応援する
みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
断罪予定の悪役令嬢ですが、王都でカフェを開いたら婚約者の王太子が常連になりました
由香
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気付く。
このままでは一年後の夜会で婚約破棄され、断罪された上で国外追放されてしまう運命だ。
「――だったら、その前に稼げばいいわ!」
前世の記憶を頼りに、王都の裏通りで小さなカフェを開くことにしたエリザベート。
コーヒーやケーキは評判となり、店は少しずつ人気店へと成長していく。
そんなある日、店に一人の青年が現れる。
落ち着いた雰囲気のその客は、毎日のように通う常連になった。
しかし彼の正体は――なんと婚約者である王太子レオンハルトだった!?
破滅回避のために始めたカフェ経営が、やがて運命を変えていく。
これは、悪役令嬢が小さなカフェから幸せを掴む
ほのぼのカフェ経営×溺愛ロマンスストーリー。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
何やってんのヒロイン
ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。
自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。
始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・
それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。
そんな中とうとうヒロインが入学する年に。
・・・え、ヒロイン何してくれてんの?
※本編・番外編完結。小話待ち。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる