(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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「お嬢様!」

 今朝もまた、ナターシャとの戦いが始まった。

「いやぁ、オフトゥンから出たくない!」

「ミタリアお嬢様……お嬢様はリチャード王子殿下の婚約者となったのです。お相手の殿下に呼ばれております、決して断ることは許されません」

「そんなことわかってる。王族に楯突いてはならない。楯突けば狼に狩られてしまう、私たちは滅ぼされる。王族の言葉は絶対だ! でしょう?」

「そうです」

 だからって、お父様とお母様はいつの間にか大量のドレスを発注していた。それもコルセットの締め付けを嫌う私のために付けなくてもいい、似合わない可愛いデザインのドレスばかり。

 ナターシャはその中から薄ピンク色を選んだ。着付けて、黒髪にピンクの花が付いた髪飾りをつけてくれた。

 姿見に写る私……ピンク色って全然、似合わない……や。







 登城したけど王子は執務で忙しいらしい。だったら迷惑になると帰ろうとしたが、私を迎えにきた側近に捕まった。

「リチャード様は、ここで待ようにとのことです」

「本当にここで待つのすか? 書庫、庭園ではなく」

 ここは王子の寝室じゃない! 
 入っていいところではないって……既にへそ天の日に入っていた。

「あと、リチャード様から『ミタリア嬢、好きに寛いで寝て待っていてくれ』と伝える様に言われておりました。オフトゥンは干したて、シーツは洗い立てなので気にせずに寝てください。あと飲み物とケーキスタンドをご用意いたしました、遠慮なく召し上がりください」

「ありがとうございます」

「では、失礼いたします」

 一人になり、王子の部屋を見回した。

(うぐっ、ふわふわオフトゥンの誘惑)

 取り敢えず、ケーキスタンドが置かれたテーブルに座った。

 チラッ

(ふかふか、見て分かる生地のよいオフトゥンだ……このまえ眠ったとき気持ちよかった、あーダメ、ダメ)

 チラッ

(触るくらい、いいかな?)

 チラッ

(王子は好きにしていいって言ったよね)

 ふわふわオフトゥンーー王子、失礼しますと飛び乗った。私の体を包み込むふかふか具合、干したての香りがするオフトゥン。

「こ、これは堪らん」

 もみもみ、すりすり、今日は寝ちゃっても獣化しないからね。






 王子の第一声で目が覚めた。

「ミタリア嬢……! おい、また獣化してへそ天かよ」

「……ほえっ?」

 怪訝な表情を浮かべて、ベッドのヘリに王子は座って、私を見下ろしていた。

「リチャード殿下!」

「おはよう、ぐっすり寝ていたようだね」

(うっ、うう、王子の笑顔が怖い)

「ミタリア、気を抜くのはいいが。俺じゃない誰が部屋に来て、獣化を見られたらどうするんだ!」

「うっ……ごめんなさい」

 それに関して、反論できない。

「お前だって、獣化研究所になんて行きたくないだろう?」

「ひぃっ、獣化研究所! 殿下もその場所に行ったことがあるの? ……私も小さい頃に両親と行ったことがあります」

 獣化した者は1度、獣化研究所に連れていかれる。私も獣化したとき両親に連れて行かれた。そこで獣化ーー裸の体を触られたり隅々まで検査された。 

(いま思い出しても、ぞ、ぞ、ぞと恐怖しかしない)

「そうか、お前もあの嫌な検査を受けたんだな……だったら尚更、注意しろよ」
 
「ごもっともです」

 王子が怒るのも分かる。周りの獣化しない獣人たちに、獣化すると知られては他ならない。獣化は原種の血が濃い特別種。誘拐されて、人間の国に連れていかれて高値で売られる。

 売られたら最後……。国には帰れず一生、獣化が解けない魔法付きの首輪を向けられて、獣化のまま観賞用として飼われるか、変態に取り外しができる首輪を付けられて、半獣にしていけないことをする輩もいると聞いた。

 両親が王子との婚約を喜んだ裏には、王子の婚約者の間は王族に守ってもらえるという、意味もあるかもしれない。

 魔石のペンダントだってそうーー他の人が見てもわからない加工で銀製で肉球の形をしている。でも、ひっくり返して裏を見れば獣化を抑制する、魔石が埋め込まれているんだ。殿下のも一見お洒落な銀製のブレスレットにしか見えないけど、内側に魔石が埋め込まれていると言っていた。

「お前は俺が目を離すと、すぐに変な奴に誘拐されそうだ……やはり、俺がミタリアを守らないと」

「リチャード殿下?」

「いや、なんでもない。本当に気を付けてくれよ、俺の婚約者さん」

 へそ天のお腹の上にブレスレットを外して獣化した王子が、またもや不機嫌な顔でもふんと顔を乗せのだった。
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