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十
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真面目な顔。それをソファーの上で私は眺めていた。時折り私の視線が気になるのか王子と目が合った。
「ミタリア、遠慮せずに寝ていてもいいんだぞ?」
「今日はたくさん寝たから、眠くないにゃ」
そんなことは嘘だ。王子の顔がイケメンで眺めたいなんて言えない。悪役令嬢、婚約破棄がなければ王子はタイプだ。
(でも、婚約破棄されるんだ、期待しない)
そう思った途端に、お腹のアザにチリッと痛みを感じた。いつものむずむず、むず痒いのではなく。嘘を言うなとばかりにチリチリとした痛みを感じた。
「うっ」
「ミタリア?」
(なに? この痛み?)
「な、なんでもないです。それより殿下、私はいつまでここに居ればいいのかにゃ?」
「俺の執務が終わるまでかな、帰りたかったらその扉から勝手に出ればいい」
ニヤリと意地悪げに口を曲げて言う殿下。私が出来ないと、分かって言っているのだろう。獣化している私はいわば丸裸、ここで半獣になっても服がないからもちろん裸だ。
(逃げられないと思ってる酷い王子だ。楽しそうに笑って、まぁ実際に逃げられないけど)
この執務室の外に王子を守る騎士が立っている。それも2人も。見られないようにここを出るなんてなんて出来ない。
(でも退屈かも、仕方がない寝て待とう)
ソファーの上でくるんと丸まった。執務机から「やっぱり寝るのか」とため息混じりに呟く王子の声が聞こえた。やることがないから、と言おうと思ったけどやめた。
だけど私は。ものの数秒でふわふわで猫をダメにする、クッションにやられた。目を瞑ればすぐに夢の国に突入。だけどすぐに、その夢の国からの帰還が王子から発せられた。
「おい、ミタリア! こっちに足を向けてへそ天はやめろ、全て見えているぞ! 俺の集中を削ぐな!」
「う、にゃん?」
クッションを枕に王子がいる執務机に向けて、へそ天していた。どうしてこんなに王子には安心してしまうのだろう、教えてほしい。
(なぜか、リラックスしちゃう)
「もう、分かったにゃ」
くるんと扉に足を向けて、へそ天した。
「これで文句ないにゃ?」
「くそっ、幸せそうに寝やがって! そのもふもふな、お腹を後でいいだけ噛んでやる」
「ダメにゃ、お腹はむずむずするからにゃー……すーすー」
「お前もお腹がむずむず、するのか?」
王子がボソッと呟いたといは、眠ってしまった私には届かなかった。
ーーむずむず、ぽりぽり。
「ふっ、寝てしまったのか……」
+
「起きろ、ミタリア。なにが夜寝られなくなるだ!ぐうぐう寝やがって!」
お腹の上。狼姿の王子にベッドの上で起こされた。どうやらいつの間にか執務が終わり、王子の部屋に移動していたらしい。
「リチャード殿下、おはようございます。殿下はまた、私のお腹の上ですか……にゃ」
「いいや、少し隣で寝て。目が覚めたからもふもふ楽しませてもらった。なんなら、俺のもふもふを触るか?」
(王子のもふもふ⁉︎)
「えっ、触ってもいいのですかにゃ?」
王子のたんなる冗談だったのか、余りの私の食い付きに、王子が少し引いた感じがした。
「やっぱり、いいです。もう、帰るにゃ」
「むくれるな! さ、触ればいいだろう」
乱立気味に言い王子が私の目の前でへそ天した、のだけど、私はすぐにさまピョーンと飛び王子に背を向けた。黒猫だから真っ赤になっていることは隠せてるけど。
(王子、その、へそ天は見ちゃいけない!)
気付いて、と尻尾でペチペチ叩いた。
「なんだよ。折角、俺がへそ天したのに触らないのか?」
(だから、そのへそ天が問題なの!)
「殿下、わ、私も人のことは言えませんが、ご自分の格好を見てくださいにゃん」
「俺の格好? あっ、……そうか、すまないミタリア。これはまだ結婚前だし、見せてはならないものだな」
王子も気付いたらしく、横向きに寝て足を閉じてくれた。そこにそっと近付き毛を触った。
「ふわふわ、もふもふ、なんて柔らかい毛。私の毛とは違う! 使っている石鹸が違うにゃん?」
「そ、そういうのはわかんねぇよ」
「くぅーっ! 触り心地がいいにゃ」
私はご機嫌よく、王子のお腹をふみふみした。
「ミタリア、遠慮せずに寝ていてもいいんだぞ?」
「今日はたくさん寝たから、眠くないにゃ」
そんなことは嘘だ。王子の顔がイケメンで眺めたいなんて言えない。悪役令嬢、婚約破棄がなければ王子はタイプだ。
(でも、婚約破棄されるんだ、期待しない)
そう思った途端に、お腹のアザにチリッと痛みを感じた。いつものむずむず、むず痒いのではなく。嘘を言うなとばかりにチリチリとした痛みを感じた。
「うっ」
「ミタリア?」
(なに? この痛み?)
「な、なんでもないです。それより殿下、私はいつまでここに居ればいいのかにゃ?」
「俺の執務が終わるまでかな、帰りたかったらその扉から勝手に出ればいい」
ニヤリと意地悪げに口を曲げて言う殿下。私が出来ないと、分かって言っているのだろう。獣化している私はいわば丸裸、ここで半獣になっても服がないからもちろん裸だ。
(逃げられないと思ってる酷い王子だ。楽しそうに笑って、まぁ実際に逃げられないけど)
この執務室の外に王子を守る騎士が立っている。それも2人も。見られないようにここを出るなんてなんて出来ない。
(でも退屈かも、仕方がない寝て待とう)
ソファーの上でくるんと丸まった。執務机から「やっぱり寝るのか」とため息混じりに呟く王子の声が聞こえた。やることがないから、と言おうと思ったけどやめた。
だけど私は。ものの数秒でふわふわで猫をダメにする、クッションにやられた。目を瞑ればすぐに夢の国に突入。だけどすぐに、その夢の国からの帰還が王子から発せられた。
「おい、ミタリア! こっちに足を向けてへそ天はやめろ、全て見えているぞ! 俺の集中を削ぐな!」
「う、にゃん?」
クッションを枕に王子がいる執務机に向けて、へそ天していた。どうしてこんなに王子には安心してしまうのだろう、教えてほしい。
(なぜか、リラックスしちゃう)
「もう、分かったにゃ」
くるんと扉に足を向けて、へそ天した。
「これで文句ないにゃ?」
「くそっ、幸せそうに寝やがって! そのもふもふな、お腹を後でいいだけ噛んでやる」
「ダメにゃ、お腹はむずむずするからにゃー……すーすー」
「お前もお腹がむずむず、するのか?」
王子がボソッと呟いたといは、眠ってしまった私には届かなかった。
ーーむずむず、ぽりぽり。
「ふっ、寝てしまったのか……」
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「起きろ、ミタリア。なにが夜寝られなくなるだ!ぐうぐう寝やがって!」
お腹の上。狼姿の王子にベッドの上で起こされた。どうやらいつの間にか執務が終わり、王子の部屋に移動していたらしい。
「リチャード殿下、おはようございます。殿下はまた、私のお腹の上ですか……にゃ」
「いいや、少し隣で寝て。目が覚めたからもふもふ楽しませてもらった。なんなら、俺のもふもふを触るか?」
(王子のもふもふ⁉︎)
「えっ、触ってもいいのですかにゃ?」
王子のたんなる冗談だったのか、余りの私の食い付きに、王子が少し引いた感じがした。
「やっぱり、いいです。もう、帰るにゃ」
「むくれるな! さ、触ればいいだろう」
乱立気味に言い王子が私の目の前でへそ天した、のだけど、私はすぐにさまピョーンと飛び王子に背を向けた。黒猫だから真っ赤になっていることは隠せてるけど。
(王子、その、へそ天は見ちゃいけない!)
気付いて、と尻尾でペチペチ叩いた。
「なんだよ。折角、俺がへそ天したのに触らないのか?」
(だから、そのへそ天が問題なの!)
「殿下、わ、私も人のことは言えませんが、ご自分の格好を見てくださいにゃん」
「俺の格好? あっ、……そうか、すまないミタリア。これはまだ結婚前だし、見せてはならないものだな」
王子も気付いたらしく、横向きに寝て足を閉じてくれた。そこにそっと近付き毛を触った。
「ふわふわ、もふもふ、なんて柔らかい毛。私の毛とは違う! 使っている石鹸が違うにゃん?」
「そ、そういうのはわかんねぇよ」
「くぅーっ! 触り心地がいいにゃ」
私はご機嫌よく、王子のお腹をふみふみした。
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