(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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十七

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 王子の美味い、美味い、連発の昼食が終わり。

 私たちは馬車に揺られていた。この馬車の揺れは電車と似ている、お腹も程よく膨れるとやってくるのは睡魔だ。王子は本を読みながら反対側で目を瞑って寝ているようだ。

 ーー先に寝るなんて卑怯。

 私もふかふかオフトゥンには抗えず瞼を閉じた。幸せオフトゥン……前世で味わえなかった分、今世ではいっぱい噛み締めるからね。

 しかし、誰かが「起きてください」と私を呼んでいる。もう少しふかふかオフトゥンと、この温かな体温を感じていたい。

 ーーん? この、体温? 

 それは変だと目覚めた。間近くの王子の寝顔、私は王子を抱き枕にして寝ていたのだ。

「にゃっ!」 

「ん? ミタリア? すまん。余りにも気持ちよさそうに寝てるから。つい寝顔とオフトゥンに引き寄せられて、隣に寝転んだら寝ちまった」

 ふわぁあっーー人に移す欠伸をしながら起き上がる王子。彼も本当に寝ていたらしく、寝癖と服にシワができていた。

「後ろの髪、跳ねてますよ」

「んっ、ミタリアが直してくれる?」

 王子から髪に触れてもいい許可をもらった。絶対に触られるのが嫌いだろうと思っていた。婚約者候補の令嬢たちが触れようとしたとき、一瞬だけよる眉間のシワと尻尾を振っていた。

(あれは喜んでいるんじゃなくて、警戒心から?)

 だから極力、近付かないように離れていたのに。離れても、王子から近寄り触れてくる「直しますよ」っと言って彼の柔らかな髪に触れた。

 とくんとくん鼓動がうるさいくらいに鳴り響く……どんなに否定してもダメ……かも。

(王子をこんなに好きになってしまって、どうするんだよ)

 ーー絶対に泣くに決まってる。

 でも、でも、泣いてもいい、と決心を決めたら終わりまで……あなたの側に、

「……いてもいいのかな?」

「ミタリア?」

 や、やばっ、声に出てた? 絶対に王子に聞こえた。振り向き、探るような青い瞳が私を見つめた。

 ーーここは誤魔化さないと。

「はぁ、ふかふかオフトゥンに寝てもいいかなぁ」

「それは無理だな。馬車はとっくに母上の屋敷に到着している。リルが首を長くして俺たちが出てくるのを外で待ってる」

 ーーそ、側近のリルが、あのリルが外で待ってるの⁉︎

「嘘っ、リチャード様、だったら早く行かないと」

「ちょーっと待て! ミタリアの寝癖も直さないと。ほら、自分の髪飾りを持って」

 さわっと王子の長い指が私の髪に触れた。うにゃぁぁあんん!! こ、こ、これはいかんやつだ……っ……あぁ、気持ちいい、もっと撫でてほしい。たまんにゃい。

 ーーグルルルルッ、キュルルルルッ。

 うにゃっ、キュルルルルッてなに! 王子のせいで喉が鳴った。ちょっ寝癖直し、じゃなく耳サワサワするのも、やめて!

 ーーグルル、グルル……喉がとまんない。

「気持ちいいのか、ミタリア」

「そう、だから。や、やめて、リチャード様……うわぁ、喉をさわさわ、さすらないで……ま、ま、待って、そこは! 尻尾の付け根を触るなんて、えっち……!」

 ーーキュルルルルッ、ピュッルル!

(喉が止まらない、気持ちいいのが隠せないよ)

「可愛い、気持ちよくて喉が鳴ってる。真っ赤な頬、立ち上がった尻尾……これは、視覚的にやばいな」

 王子のえっち、えーっち!

「だったら、やめて」

「やめて欲しかったら。離れようなどと考えるなよ、ミタリア」
 
「えっ? なんで?」

 ーーなぜ、そんな風に思うの?

 王子が近付き、頬にすりすり擦り寄せるのではなく、かぷっと甘噛みした。ひゃぁ! その途端にお腹のむずむずが一段と、大きくなりーーアザが熱くなる。

 逃げようとしても、体を押してもがっちり捕まえ、かぷかぷ、かぷかぷ甘噛みした。

 ぶわっと私の全身の毛が立ち、尻尾がぱんぱんに膨らんだ。甘噛みをやめて頬から離れると「そう怖がるなよ」と、髪を撫でて、髪飾りを着けてくれた。

「ミタリアにこれだけは言っておく。お前を逃がさない、覚悟しろ」

 王子の鋭い瞳が私を見た。

「リチャード様……」


 ーー私ではなく、あなたが離れていくんだよ。


「ふっ……ミタリア。さて、母上が待ってる行こうか」と馬車の出入り口を開き、先に降り手を差し伸べて私をエスコートしてくれた。
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