(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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六十二(最終話)

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 ウオーーーン! 小さく空いた穴から、狼の遠吠えが聞こえた。

(王子? 遠声?)

 だと思った瞬間にガタンと、馬車が揺れて徐々に止まった。
 オフトゥンの上で、グッスリ眠っていた子供達は目を覚まして、見えない恐怖に怯え始めた。

「大丈夫だよ。もしかすると助けが来たかもしれないから、みんな落ち着こうね」

「俺の背に隠れろ」

 ドラゴン君はみんなを守る様に、私たちの前に立ち塞がってくれた。

「ありがとう」

「任せろ! 何かあったら俺が戦ってやるよ!」

「ドラゴン君だけに任せない! わ、私も戦いますにゃ!」

「おい! 無理するなって……女の子だろ?」

「無理じゃないわ!」

 無理、無理じゃない! と二人で言い合いをしていた――まさに、そのときギィと鉄製の扉が開いた。
 まさか、人族の国に着いてしまったの? 焦ったのだけと違った……大好きな彼の優しい香りがした。

「この香りは! リチャード様が迎えに来てくれたにゃん!」

「そうだ、ミタリア迎えに来たぞ」

 私は入り口から飛んで、狼王子に抱きついた。

「リチャード様、怪我は? ……怪我はもういいの?」

「あぁ、ミタリアの癒しが効きいたよ」
 
 互いの頬をスリスリ、スリスリ擦り合い、また会えた喜びを噛み締めていた。

 その、じゃれあう私たちの後ろでは、ドラゴン君が竜人の眼鏡の方に怒られていた。

「シック様! あれほど一人で行動しないでと、私はお願いしたでしょう!」

「あ、いや、……悪かった! 散歩していたら丁度、この馬車に獣人の子供を乗せているところを見ちまって。同胞がいないか見に行って、逃がしているところを人間に見つかって捕まった!」

「シック様、あなたは何をなさっているのですか!」

 いま、あの眼鏡の人……彼をシックと呼んだ? あ、ドラゴン君は隠しキャラのシック、トルナードだったんだ。

 へぇ、あれが隠しキャラの竜人族……そうなんだ。

「ミタリアは、アイツが気になるのか?」

「えっ、彼に助けてもらったから……お礼を言わないとって思っていたの」

「そうか、後で二人でお礼を言いに行こう。それとミタリア、栞とハンカチ、ありがとう大切にするよ」

「えっ、にゃぁ! それは胸元にしまっていたリチャード様への……誕生日プレゼント、にゃ!」

 あの時、獣化してしまったから、ドレスと一緒にしまっていたポーチも落ちてしまったんだ。そのポーチを王子が見つけてプレゼントを受け取ってくれた。

「俺もミタリアに渡したい物がある、城に帰ったら渡すよ」
 
「ほんとうですか、楽しみにゃっ!」

「さて、俺たちは帰るか」

「え、後のことを彼らに任せても、いいのですかにゃ?」

「それなんだがな……俺はブレスレットが壊れて獣化して狼のままだ。近くをウロウロするだけで、彼らの邪魔にしかならない」  
 
「……リチャード様がそう言うのであれば、犬の私もですね。城に戻りしたい騎士団に連絡いたします」

「そうしてくれ」

 側近リルもまた、獣化してワンコだった。
 後を彼らに任せて、王子の背中に乗せてもらい戻った城で、プレゼントを貰った。

 王子から貰ったのは、手作りのペアリングだった。

「サイズは合っていると思う」

「この指……リチャード様が作ったの? 薬指にピッタリだわ……素敵、可愛い」

 このお揃いの指輪には、獣化抑制の魔石は着いていない。
 理由は、指輪の付け外しはしたくないと、王子は言った。

「ミタリア、来い」  

「リチャード様!」

 両手を広げた王子の腕の中に飛び込むと、優しく抱きしめられた。
 頬と頬をスリスリ、スリスリした後、王子に優しく見つめられて、

「俺だけのミタリア、俺だけの愛しい番……ミタリアを守るために、父上の様に俺は強くなる」

「私も、リチャード様をオフトゥン召喚と癒しで守ります」

 おでこをコツンとくっ付け笑い合い。
 王子の近付く気配に、瞳を瞑ると、優しいキスが降った。

 そのキスのあと、ジワーッとお腹が今まで以上に熱くなった。
 
「ミタリア、腹が熱い」

「私もです、リチャード様」
 
 私たちは余りの熱さに、驚き、王妃殿下の元まで走った。

 その報告のあと、王妃殿下は王女様をあやしながら、リチャード様のお腹の紋様を見て、

「あらあら、紋様がくっきりしたわね。うん、リチャードとミタリアちゃんは番となったのね。これから、ますます二人の愛は熱くなるわね。卒業後、直ぐに孫の顔が見れるかしら?」

 と、優しく微笑まれて、二人で真っ赤になった。

 部屋に戻り夕飯まで過ごし、夕食をいただいたあと、
 王妃殿下、王女様、王子に見守られながら、獣化した猫の姿で国王陛下の傷を癒したのだった。

 癒しの数分後

「医者に治るまで三ヶ月だと言われた、腕と胸の傷が塞がった……ミタリア嬢、感謝する」

 陛下に頭を撫でてもらい、役に立てたと喜んだ。
 国王陛下の傷が治り、笑顔の王子、

「ミタリア、ありがとう」
「えへへ、どういたしましてにゃん!」

 あなたの、その素敵な笑顔を、ずっと、もっと、これからも見たいにゃん!
 



 後日談。

 デンス所長は捕まり牢屋に入れられた、刑はまだ確定していない。
 国王陛下は人族との貿易、交流を一切しないと明言したて、国境を封鎖してしまった。

 その為――カーエンは学園を退学処分となり、二度と獣人の国へ入国は出来ない。

 カーエン王子と、会わなくていいんだとホッとした。

 人族との交易が停止した――その代わりに竜人国との交易、交流が盛んになると王子は言っていた。

 デンス所長に買われた子ど達は、いったん王都の教会に預けられて、成人したら、獣化を生かした職業に着くらしい。

 私は定期的に、王子と遊びに行こうと思っている。
  



 まったり学園の庭園。

「シック王子! いい加減に俺のミタリアに近付くな!」

「ミタリア、我の方がよくないか?」

 ドラゴン君ことーー竜人国の第三王子シック様は二つ年上だけと、無理を言って同学年で学園に留学してきた。眼鏡さんも同じ学年だ。

 馬車での一件で、どうやら私を気に入ったらしい。

 リチャード様と二人でいると、邪魔をしてくるのだ。
 そして、なんとヒロイン弟――兎のリリネ君も学園に入学してきたのだ。

 姉のヒロインちゃんはと言うと、幼馴染君と結婚して、前世の記憶を生かしてジャガイモの料理店を始めて、かなり繁盛していると弟君が言っていた。

 私は悪役令嬢らしいこともせず。
 ヒロイン不在のまま、のんびりと学園生活は続く。

「ミタリア、二人きりで昼寝しよう」

「はい、リチャード様!」

 大好きな王子と、好きなオフトゥンの上で、

「【オフトゥン召還】」

 ポフン!



♦︎お読みいただきありがとうございました。
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感想 11

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みんなの感想(11件)

書記長
2021.10.01 書記長

もう少し続きが読みたかった気も致しますが、無事に完結となって良かったです。

2021.10.01 深月カナメ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

解除
Kimy
2021.10.01 Kimy

完結お疲れ様でした。
実は私もオフトゥン召喚で癒されていたので、完結したら、オフトゥンがなくなって寂しいなぁ。(つд⊂)
とはいえ、ミタリアとリチャード王子の溺愛ラブラブが深まっていきそうですね。

ほっこりするお話ありがとうございました。

2021.10.01 深月カナメ

最後までお読みいただき、ありがとうございました^ - ^

リチャード王子、ミタリアちゃんは
お気に入りの二人です。

ありがとうございました。

解除
スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

2021.09.15 深月カナメ

ありがとございます^_^

よろしくお願いします。

解除

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