115 / 169
第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編
水龍様の願い(後編)
しおりを挟む
「嫁ェーー!」
みんな思い思いの声を上げた。水龍様との内緒の話…
(ご自分で、暴露されたわ!)
それを聞いたお師匠様は、トットッと小走りにわたし達の横に出て来て、水龍様を糸目をさらに細めた。
「なんと、お前まで嫁が欲しいと! そうだろう欲しくなるよなー唐変木の儂にも出来たことだしなぁー」
(水龍様との水の中での会話が、お師匠様にも聞こえていた!)
しかし、水龍様はさほど驚いた様子が無く。
「やはり、お前。小娘とわしの話を盗み聞きしておったな! …クオールめ」
「その話。我にも丸聞こえだったぞー! 水龍様」
「ぬぬぬっ。このー! 可愛い嫁を貰ったからと、お主等はいい気になりおって! 羨ましいわ!」
本音だだ漏れで水龍様は子供のように叫ぶと、元の姿に戻り湖へと飛び込み戻って行く。
その時、津波くらいの水しぶきが上がり、ここにいるみんなをずぶ濡れにした。
水辺の近くにいたお師匠様に竜人王様……そして私とシーラン様は頭から水を浴びた。
「おぬし、やりおったなー!」
「我が! ずぶ濡れになったではないか!」
「ふん!」
お二人は声を上げて、水面に顔を出した、水龍様に飛び掛かっていった。
残されたずぶ濡れなシーラン様と私…
「ふぅ…いい、大人が…そう思いません? シーラン様」
「そうだな…」
湖で戯れる三人のいい大人。
アオさんはお師匠様が守ったのか?
それとも精霊だからかはわからないけど、お師匠様が着ていたジャケットを羽織り、三人を楽しそうに離れた場所で見ていた。
「はははっ、二人ともずぶ濡れだな」
湖を眺めるわたし達の所に、リズ様とリオさんがやって来て横に並んだ。
「ええっ…ずぶ濡れです」
「兄上とリオもここに来ると、ずぶ濡れになりますよ」
「……いいや、もうなってる」
「ええっ、なっています」
その言葉の通り、リズ様とリオさんもびっしょりと、濡れていた。
「兄上やリオの所にまで、水しぶきが飛んだのですね」
ああっ、とリズ様は濡れた前髪を掻き上げた。
「まあ、俺やシーランは訓練で汗をかいたから良いけどさー、シャルロットちゃんは…やばい」
と言い、チラッとわたしを見た。
「えっ?」
ーーやばい?
「そうよね、頭から水をかぶったもの…シーラン様もだけど」
隣で結んでいた紐をほどき、長い黒髪を直すシーラン様……濡れたシャツがぴったりと肌に引っ付き……色っぽい。
あーっ、これは見ちゃダメなやつだ! と、手のひらで目を覆った。
そのシーラン様が声を上げた。
「シャルロット嬢、兄上から離れろ! こっちに来い」
えっ? 目を覆っていた手を引っ張られて、シーラン様の胸の中に隠された。
目の前に、シーラン様の濡れたシャツが…胸元が!
「はははっ、気付くのが遅いぞシーラン。俺はしっかりこの目で、見ちゃった後だけどな!」
「兄上‼︎」
そこに!
「これでも、くらぇ!」
水龍様がお師匠様と竜人王様に水を掛けようと、尾っぽを振り更に水しぶきが上がった。
「そんな攻撃、我には聞かぬぞ!」
「儂にまだ!」
お二人は濡れても気にしないのか! ますます戯れる。わたし達は益々、巻き添いを食ってずぶ濡れになった。
まったく何時もは素敵な方達なのに。
楽しそうだから終わるまで待てばいいっか!
「ねぇ、シーラン様。あの方達は楽しそうだからほって置いて、わたし達はこの水龍様に預かった、この種を植えちゃいましょう!」
腕の中で聞いた。
「おおっ、それがいいな! さてと、その前に服を乾かさないと俺達が風邪を引く」
シーラン様が魔法を使おうとすると、リズ様が止めた。
「ちょっと待て、シーラン!」
「兄上?」
「シーラン待て、その風魔法を俺にやらせてくれ! みんなであっちに移動しょう!」
俺に任せろと胸を叩き、リズ様が水しぶきのこない、開けた場所を指差した。
「わかった、兄上」
「きゃっ! シーラン様⁉︎」
シーラン様はわたしを持ち上げて、お姫様抱っこをした。
「シャルロット嬢はこのまま俺と移動ね」
わたしの意見を聞く事なく歩いて行く、リズ様が指差した場所へと、移動を始めると近くの気が揺れて、バサッとわたし達の近くに影が落ちた。
「シャルロットお嬢さん、シーラン王子。魔法協会に戻るのですか?」
見張り中で木の上にいて、事の成り行きを知らないフォルテ様とヘルさんは終わったのだろうと、わたし達の前へ木から降りてきた。
しかし、 四人共ずぶ濡れのこの状態を見て、目を大きくした。
「その格好は何があったのですか?」
「そのままでは皆さんが、風邪をひかれてしまいます!」
「あっ、フォルテ様、ヘルさん、こんにちは。いま、湖に近付くと、わたし達の様になるので気を付けてください」
わたしの言葉に二人の目線が湖を見て、驚きの目に変わった。
水龍様と竜人王様、お師匠様達は……まだ、湖で戯れていた。
(これは、相当長引きそう!)
「フォルテ様、ヘルさん。魔法協会へ戻るのはまだ先になりそうなので、お二人でのんびりしていてください。帰るときには声を掛けますから」
「そうですか。わかりました、行こうかヘル」
「はい、フォルテ王子。失礼いたします」
二人と別れて開けた場所まで移動をした。
「では、行くよー!」
リズ様はイメージを膨らませて、わたし達に風魔法の『ウィング』を掛けてくれた。
魔法陣から出た程よい風が、わたし達の髪や衣類を乾かしてゆく。
「リズ様ありがとう! 風が気持ちいいわ!」
「そうだな、兄上ありがとう」
「私の服が乾き次第。変わりましょう」
リズ様が出す風を楽しむわたし達、シーラン様から降りて、背中や後ろ髪も乾かす。
みんなが風を楽しむのを見たリズ様。
「もう、少し風を強くしようかー!」
と、 ご機嫌な声が聞こえて、リズ様は風魔法を強くした。
その風は下から舞い上がり、乾いて軽くなったわたしのスカートを、抑える前に持ち上げた。
もろ、三人の目の前でだ。
「わぁっ!」
「「あっ!」」
『足?』いや『下着?』まで見えたのか? シーラン様、リズ様、リオさんの声がハモった。
わたしは直ぐにめくれた、スカートを抑えてみんなに聞く。
「見た、見えた? いま、見えたでしょうー!」
シーラン様達は首を横に振り。
「いやっ、俺は…見ていないぞ! 」
「うんうん、俺も見てないよー」
「ええ、私は見えおりません」
「じゃーなんで、みんなはわたしから目を逸らすの! あっ、逃げた! まてぇ!」
逃げ出した三人を追っかけた。
「シャルロット嬢、すまない」
「シャルロットちゃん、ごめん」
「シャルロット様、すみませんでした」
「聞いた時に、本当のことを言わなかったから許さない! 待て、待て、待ちなさーい!」
わたしから本気で逃げていないみんなは、いまにも追いつき捕まえれそうだ。
わたしは狙いを定めて、シーラン様の尻尾に向けて飛びつき捕まえた。
「シーラン様、ご覚悟!」
「うわっ、シャルロット嬢! やめろ! くすぐったい…はははっ !」
「こちょ、こちょ」
「はははっ! だめだ! そこは!」
その様子を振り向きながら見ていた、リズ様はご自分の尻尾を抑えた。
「うわぁー! シーランがシャルロットちゃんに捕まったぞ! リオどうする? 助ける?」
同じ様に尻尾を抑えたリオさんが答える。
「いいえ。シーラン様には悪いですが、私は逃げさせていただきます」
逃げる二人を横目にわたしは捕まえた、シーラン様の尻尾をいいだけくすぐった。
☆
「こちょ、こちょ」
「うわぁっ、やめろ! ま…まいった、シャルロット嬢!」
と、シーラン様は仰向けに転がる。
「はぁーっ、堪能したぁ!」
と、シーラン様のその横に転がった。その転がった先には雲の無い青空が見えた。
「シーラン様、いいお天気! 眠くなっちゃう」
「そうだな、帰ってお昼寝するか!」
二人の意見を聞いて『俺達も!』『私も!』とリズ様とリオさんもお昼寝に賛成した。
未だに楽しそうにじゃれ合う三人を見ながら、わたし達は湖の辺りに種を植えた。先程アル様特性ポーションで魔力は半分? それ以上は回復したから、イメージを膨らませて魔力を感じる。
「梅の木よ、育て!」
空に願いを込めて手を上げた。もう一度、木の成長を願った。手を下ろすと横から、シーラン様が覗きこんでくる。
「シャルロット嬢、どうだ?」
そのシーラン様の問いに、わたしはニッコリ彼に笑顔を向けた。
「シーラン様、見てください」
わたしの足元に小さな梅の木の新芽が生えていた。それを見てシーラン様は息を呑む。
「うむっ、シャルロット嬢の植物を育て魔法は凄いな。それだけのイメージに魔力か……俺も負けられないな」
「違うわ、シーラン様。みんなが水龍様をお好きだからだよ。わたしはそれに力を少し添えただけ、お師匠様も竜人王座様もわたし達もみーんなぁ、青龍様が大好きだから『幸せになって』と願ったからですよ」
シーラン様は微笑み、ゆっくり頷いた。
「あぁ、そうだな」
わたしも微笑み『もう一度願う。木よ、育て』と。出来る限りの魔力を降り注ぐ。
ゆらゆらと新芽が揺れて、そこから、ふわっと光りが生まれた。その光はふわふわと飛び、お師匠様と竜人王様とじゃれ合う水龍様の近くで光りが弾けた。
お師匠様と竜人王様はそれを見ると、二人は優しく微笑み水龍様から離れた。
割れた光の中から少し眠そうに、口に手を当てる仕草して。
『ふわぁっ。よく寝ましたわ』
手のひらサイズの髪をゆい着物の姿の女性が、水龍様の目の前にふわりと現れて浮いた。
「おぬしは誰だ!」
『あらっ? お忘れなの。貴方よね? わたくしにずーっと語り掛けていたのは?』
女性の言葉に驚き止まる。シュルシュルと縮み水龍様は人型となり、両手を前に出した。女性はその手の上に乗る。
「おっ、おぉーお前は、ううぅ…梅なのかぁ?」
『ええ、梅ですわよ。昨晩も話しかけてくれましたわよね、お忘れになって?』
彼女が梅だと聞き。水龍様はいまにも泣きそうな表情になりながら笑う。
「おぬしを、忘れるかぁ! 梅」
と、大声を上げた。
『まぁ、大きな声の旦那様だこと、これからも宜しくお願いしますわね』
「旦那様! ……だと?」
『そうでしょう? 梅の木の時も種となったわたくしに、毎夜、毎夜。求婚をされたじゃない……違うのかしら?』
「違わない! よっ、よ、宜しく頼む、奥方」
『はい、旦那様』
お二人は額と額をくっつけて誓いあった。
その様子を見てお師匠様と竜人王様は水龍様と梅さんに拍手を送る。
「なんとめでたい! おめでとう水龍!」
「その者を、生涯。大事にするが良い!」
「水龍様! おめでとうございます!」
「おおっ、小娘。そなたのお陰じゃなぁ」
シーラン様達も拍手をして。
「おめでとうございます、水龍様」
「水龍様。梅さんと喧嘩をしないようにねー! おめでとうございます」
「水龍様おめでとうございます。奥方様を大切にしてください」
みんなに祝福をされて、ここに水龍様と梅さんの夫婦が誕生した。
何があったのかと、こちらに来たフォルテ様とヘルさんにことの成り行きを説明すると、二人も笑顔で拍手をして喜んだ。
☆
魔法協会の癒やしの樹の下に戻ると、アル様とラーロさんがで休んでいた。フォルテ様とヘルさんは先に挨拶をすると『失礼します』と、帰っていった。
わたし達も近くに行き二人に会釈をした。
「お疲れさまです、アル様、ラーロさん」
「お疲れ様、シャルちゃん、チビ竜君たちもお帰り」
「お疲れさん。帰ってくるのが遅かったけど、湖で何かあった?」
「アル様、ラーロさん聞いてください!」
湖であった事を事細かく説明すると驚き、アル様とラーロさんは池まで向かうといい、ホウキで飛び去って行った。
「アル様とラーロさん、慌てて行っちゃったね」
「そうだな、俺達はここでのんびり昼寝をしょうか」
シーラン様が癒やしの木の下に座った、その横にリズ様とリオさんが座る。
「ふわぁ……眠っ」
「疲れましたね。私も休ませてもらいます」
リズ様とリオさん目を瞑る。シーラン様が自分の空いている隣を叩く。
「シャルロット嬢も疲れただろう」
「はい、シーラン様」
シーラン様の隣に座り、彼に寄りかかり目を瞑った。
その夜、湖では「子供は不参加!」水龍様のお嫁さんのお披露目会と言う名目で、朝まで宴会をしたらしい。
みんな思い思いの声を上げた。水龍様との内緒の話…
(ご自分で、暴露されたわ!)
それを聞いたお師匠様は、トットッと小走りにわたし達の横に出て来て、水龍様を糸目をさらに細めた。
「なんと、お前まで嫁が欲しいと! そうだろう欲しくなるよなー唐変木の儂にも出来たことだしなぁー」
(水龍様との水の中での会話が、お師匠様にも聞こえていた!)
しかし、水龍様はさほど驚いた様子が無く。
「やはり、お前。小娘とわしの話を盗み聞きしておったな! …クオールめ」
「その話。我にも丸聞こえだったぞー! 水龍様」
「ぬぬぬっ。このー! 可愛い嫁を貰ったからと、お主等はいい気になりおって! 羨ましいわ!」
本音だだ漏れで水龍様は子供のように叫ぶと、元の姿に戻り湖へと飛び込み戻って行く。
その時、津波くらいの水しぶきが上がり、ここにいるみんなをずぶ濡れにした。
水辺の近くにいたお師匠様に竜人王様……そして私とシーラン様は頭から水を浴びた。
「おぬし、やりおったなー!」
「我が! ずぶ濡れになったではないか!」
「ふん!」
お二人は声を上げて、水面に顔を出した、水龍様に飛び掛かっていった。
残されたずぶ濡れなシーラン様と私…
「ふぅ…いい、大人が…そう思いません? シーラン様」
「そうだな…」
湖で戯れる三人のいい大人。
アオさんはお師匠様が守ったのか?
それとも精霊だからかはわからないけど、お師匠様が着ていたジャケットを羽織り、三人を楽しそうに離れた場所で見ていた。
「はははっ、二人ともずぶ濡れだな」
湖を眺めるわたし達の所に、リズ様とリオさんがやって来て横に並んだ。
「ええっ…ずぶ濡れです」
「兄上とリオもここに来ると、ずぶ濡れになりますよ」
「……いいや、もうなってる」
「ええっ、なっています」
その言葉の通り、リズ様とリオさんもびっしょりと、濡れていた。
「兄上やリオの所にまで、水しぶきが飛んだのですね」
ああっ、とリズ様は濡れた前髪を掻き上げた。
「まあ、俺やシーランは訓練で汗をかいたから良いけどさー、シャルロットちゃんは…やばい」
と言い、チラッとわたしを見た。
「えっ?」
ーーやばい?
「そうよね、頭から水をかぶったもの…シーラン様もだけど」
隣で結んでいた紐をほどき、長い黒髪を直すシーラン様……濡れたシャツがぴったりと肌に引っ付き……色っぽい。
あーっ、これは見ちゃダメなやつだ! と、手のひらで目を覆った。
そのシーラン様が声を上げた。
「シャルロット嬢、兄上から離れろ! こっちに来い」
えっ? 目を覆っていた手を引っ張られて、シーラン様の胸の中に隠された。
目の前に、シーラン様の濡れたシャツが…胸元が!
「はははっ、気付くのが遅いぞシーラン。俺はしっかりこの目で、見ちゃった後だけどな!」
「兄上‼︎」
そこに!
「これでも、くらぇ!」
水龍様がお師匠様と竜人王様に水を掛けようと、尾っぽを振り更に水しぶきが上がった。
「そんな攻撃、我には聞かぬぞ!」
「儂にまだ!」
お二人は濡れても気にしないのか! ますます戯れる。わたし達は益々、巻き添いを食ってずぶ濡れになった。
まったく何時もは素敵な方達なのに。
楽しそうだから終わるまで待てばいいっか!
「ねぇ、シーラン様。あの方達は楽しそうだからほって置いて、わたし達はこの水龍様に預かった、この種を植えちゃいましょう!」
腕の中で聞いた。
「おおっ、それがいいな! さてと、その前に服を乾かさないと俺達が風邪を引く」
シーラン様が魔法を使おうとすると、リズ様が止めた。
「ちょっと待て、シーラン!」
「兄上?」
「シーラン待て、その風魔法を俺にやらせてくれ! みんなであっちに移動しょう!」
俺に任せろと胸を叩き、リズ様が水しぶきのこない、開けた場所を指差した。
「わかった、兄上」
「きゃっ! シーラン様⁉︎」
シーラン様はわたしを持ち上げて、お姫様抱っこをした。
「シャルロット嬢はこのまま俺と移動ね」
わたしの意見を聞く事なく歩いて行く、リズ様が指差した場所へと、移動を始めると近くの気が揺れて、バサッとわたし達の近くに影が落ちた。
「シャルロットお嬢さん、シーラン王子。魔法協会に戻るのですか?」
見張り中で木の上にいて、事の成り行きを知らないフォルテ様とヘルさんは終わったのだろうと、わたし達の前へ木から降りてきた。
しかし、 四人共ずぶ濡れのこの状態を見て、目を大きくした。
「その格好は何があったのですか?」
「そのままでは皆さんが、風邪をひかれてしまいます!」
「あっ、フォルテ様、ヘルさん、こんにちは。いま、湖に近付くと、わたし達の様になるので気を付けてください」
わたしの言葉に二人の目線が湖を見て、驚きの目に変わった。
水龍様と竜人王様、お師匠様達は……まだ、湖で戯れていた。
(これは、相当長引きそう!)
「フォルテ様、ヘルさん。魔法協会へ戻るのはまだ先になりそうなので、お二人でのんびりしていてください。帰るときには声を掛けますから」
「そうですか。わかりました、行こうかヘル」
「はい、フォルテ王子。失礼いたします」
二人と別れて開けた場所まで移動をした。
「では、行くよー!」
リズ様はイメージを膨らませて、わたし達に風魔法の『ウィング』を掛けてくれた。
魔法陣から出た程よい風が、わたし達の髪や衣類を乾かしてゆく。
「リズ様ありがとう! 風が気持ちいいわ!」
「そうだな、兄上ありがとう」
「私の服が乾き次第。変わりましょう」
リズ様が出す風を楽しむわたし達、シーラン様から降りて、背中や後ろ髪も乾かす。
みんなが風を楽しむのを見たリズ様。
「もう、少し風を強くしようかー!」
と、 ご機嫌な声が聞こえて、リズ様は風魔法を強くした。
その風は下から舞い上がり、乾いて軽くなったわたしのスカートを、抑える前に持ち上げた。
もろ、三人の目の前でだ。
「わぁっ!」
「「あっ!」」
『足?』いや『下着?』まで見えたのか? シーラン様、リズ様、リオさんの声がハモった。
わたしは直ぐにめくれた、スカートを抑えてみんなに聞く。
「見た、見えた? いま、見えたでしょうー!」
シーラン様達は首を横に振り。
「いやっ、俺は…見ていないぞ! 」
「うんうん、俺も見てないよー」
「ええ、私は見えおりません」
「じゃーなんで、みんなはわたしから目を逸らすの! あっ、逃げた! まてぇ!」
逃げ出した三人を追っかけた。
「シャルロット嬢、すまない」
「シャルロットちゃん、ごめん」
「シャルロット様、すみませんでした」
「聞いた時に、本当のことを言わなかったから許さない! 待て、待て、待ちなさーい!」
わたしから本気で逃げていないみんなは、いまにも追いつき捕まえれそうだ。
わたしは狙いを定めて、シーラン様の尻尾に向けて飛びつき捕まえた。
「シーラン様、ご覚悟!」
「うわっ、シャルロット嬢! やめろ! くすぐったい…はははっ !」
「こちょ、こちょ」
「はははっ! だめだ! そこは!」
その様子を振り向きながら見ていた、リズ様はご自分の尻尾を抑えた。
「うわぁー! シーランがシャルロットちゃんに捕まったぞ! リオどうする? 助ける?」
同じ様に尻尾を抑えたリオさんが答える。
「いいえ。シーラン様には悪いですが、私は逃げさせていただきます」
逃げる二人を横目にわたしは捕まえた、シーラン様の尻尾をいいだけくすぐった。
☆
「こちょ、こちょ」
「うわぁっ、やめろ! ま…まいった、シャルロット嬢!」
と、シーラン様は仰向けに転がる。
「はぁーっ、堪能したぁ!」
と、シーラン様のその横に転がった。その転がった先には雲の無い青空が見えた。
「シーラン様、いいお天気! 眠くなっちゃう」
「そうだな、帰ってお昼寝するか!」
二人の意見を聞いて『俺達も!』『私も!』とリズ様とリオさんもお昼寝に賛成した。
未だに楽しそうにじゃれ合う三人を見ながら、わたし達は湖の辺りに種を植えた。先程アル様特性ポーションで魔力は半分? それ以上は回復したから、イメージを膨らませて魔力を感じる。
「梅の木よ、育て!」
空に願いを込めて手を上げた。もう一度、木の成長を願った。手を下ろすと横から、シーラン様が覗きこんでくる。
「シャルロット嬢、どうだ?」
そのシーラン様の問いに、わたしはニッコリ彼に笑顔を向けた。
「シーラン様、見てください」
わたしの足元に小さな梅の木の新芽が生えていた。それを見てシーラン様は息を呑む。
「うむっ、シャルロット嬢の植物を育て魔法は凄いな。それだけのイメージに魔力か……俺も負けられないな」
「違うわ、シーラン様。みんなが水龍様をお好きだからだよ。わたしはそれに力を少し添えただけ、お師匠様も竜人王座様もわたし達もみーんなぁ、青龍様が大好きだから『幸せになって』と願ったからですよ」
シーラン様は微笑み、ゆっくり頷いた。
「あぁ、そうだな」
わたしも微笑み『もう一度願う。木よ、育て』と。出来る限りの魔力を降り注ぐ。
ゆらゆらと新芽が揺れて、そこから、ふわっと光りが生まれた。その光はふわふわと飛び、お師匠様と竜人王様とじゃれ合う水龍様の近くで光りが弾けた。
お師匠様と竜人王様はそれを見ると、二人は優しく微笑み水龍様から離れた。
割れた光の中から少し眠そうに、口に手を当てる仕草して。
『ふわぁっ。よく寝ましたわ』
手のひらサイズの髪をゆい着物の姿の女性が、水龍様の目の前にふわりと現れて浮いた。
「おぬしは誰だ!」
『あらっ? お忘れなの。貴方よね? わたくしにずーっと語り掛けていたのは?』
女性の言葉に驚き止まる。シュルシュルと縮み水龍様は人型となり、両手を前に出した。女性はその手の上に乗る。
「おっ、おぉーお前は、ううぅ…梅なのかぁ?」
『ええ、梅ですわよ。昨晩も話しかけてくれましたわよね、お忘れになって?』
彼女が梅だと聞き。水龍様はいまにも泣きそうな表情になりながら笑う。
「おぬしを、忘れるかぁ! 梅」
と、大声を上げた。
『まぁ、大きな声の旦那様だこと、これからも宜しくお願いしますわね』
「旦那様! ……だと?」
『そうでしょう? 梅の木の時も種となったわたくしに、毎夜、毎夜。求婚をされたじゃない……違うのかしら?』
「違わない! よっ、よ、宜しく頼む、奥方」
『はい、旦那様』
お二人は額と額をくっつけて誓いあった。
その様子を見てお師匠様と竜人王様は水龍様と梅さんに拍手を送る。
「なんとめでたい! おめでとう水龍!」
「その者を、生涯。大事にするが良い!」
「水龍様! おめでとうございます!」
「おおっ、小娘。そなたのお陰じゃなぁ」
シーラン様達も拍手をして。
「おめでとうございます、水龍様」
「水龍様。梅さんと喧嘩をしないようにねー! おめでとうございます」
「水龍様おめでとうございます。奥方様を大切にしてください」
みんなに祝福をされて、ここに水龍様と梅さんの夫婦が誕生した。
何があったのかと、こちらに来たフォルテ様とヘルさんにことの成り行きを説明すると、二人も笑顔で拍手をして喜んだ。
☆
魔法協会の癒やしの樹の下に戻ると、アル様とラーロさんがで休んでいた。フォルテ様とヘルさんは先に挨拶をすると『失礼します』と、帰っていった。
わたし達も近くに行き二人に会釈をした。
「お疲れさまです、アル様、ラーロさん」
「お疲れ様、シャルちゃん、チビ竜君たちもお帰り」
「お疲れさん。帰ってくるのが遅かったけど、湖で何かあった?」
「アル様、ラーロさん聞いてください!」
湖であった事を事細かく説明すると驚き、アル様とラーロさんは池まで向かうといい、ホウキで飛び去って行った。
「アル様とラーロさん、慌てて行っちゃったね」
「そうだな、俺達はここでのんびり昼寝をしょうか」
シーラン様が癒やしの木の下に座った、その横にリズ様とリオさんが座る。
「ふわぁ……眠っ」
「疲れましたね。私も休ませてもらいます」
リズ様とリオさん目を瞑る。シーラン様が自分の空いている隣を叩く。
「シャルロット嬢も疲れただろう」
「はい、シーラン様」
シーラン様の隣に座り、彼に寄りかかり目を瞑った。
その夜、湖では「子供は不参加!」水龍様のお嫁さんのお披露目会と言う名目で、朝まで宴会をしたらしい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。