竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第四章 獣人の国に咲いた魔女の毒花(竜人王祭編)

第8話

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 寝室でマリーと出来上がったお守り袋に、乾燥させた花々を、願いを込めながら詰めていた。
 一つ一つ出来上がる、お守りにニンマリする。

「これで最後……できた!」

 これなら明後日の竜人王祭までには渡せるわ。チャコちゃん達も、明日には祭りの衣装が出来上がると言っていた。

「お疲れ様です、シャルロットお嬢様」
「マリーも遅くまで、ありがとう」

 お守りを箱に詰めてベッドに潜った。



 その夜、赤い、真っ赤な夢をみた……。 
 

『な、なにこれ……』

 みんながわたしの足元で倒れている。
 そして、モフカがわたしの目の前で、顔を歪ませ高笑いをしていた。

 驚くわたしを見下して、一つずつ指をさす。

『これも、あれも、ここにいる、みんなアンタのせいだよ』

 全部、わたしのせい? うそ、嘘だぁ……! わたしは名前を呼び、みんなを揺さぶった。

『やだ、やだ、シーラン様。シーラン様……いやぁー! リズ様、リオさん! みんな、目を覚ましてよ!』

 いくら呼んでも、体を揺すっても、みんなはピクリとも動かず、目を覚さない。

 絶望と恐怖に心が冷える。
 
 こんなのって、こんなのって

『いやぁーーだぁぁぁーー!』


「⁉︎」

 はぁ、はぁ……。

 はぁ……。


「……今のはゆ、め、、なの?」

 
 勢いよく起き上がり辺りを見渡した。

「いつもの部屋?」

 自分の部屋だと気付き、アレは夢だとホッと胸を撫で下ろした。
 
 モフカ……それにみんな。

 鮮明に脳裏に残る夢に耐えれなくて、しばらく、声を殺して泣いた。

(正夢だったら……怖い)

 止まるかと思った涙は止まらなかった。次から次へとポタポタと頬を流れた。


 ようやく涙が止まり掛けた頃、コンコンと扉を叩かれる、マリーが朝起こしに来たんだ。
 
「おはようございます、シャルロットお嬢様」

「マリー……おはよう。今朝は朝風呂の気分なの、マリー沸かしてくれる?」

「かしこまりました、シャルロットお嬢様」

 汗を流してさっぱりしたけど、朝食でも夢が気になり、食事の手が自分では気付かずに止まっていた。

 周りの食事が止まっていることにも、気付かずにいた。

「シャルロット、さっきからボーッとして、何があったのか?」
「うえっ、なんにもないよ……」

 みんなに大丈夫だ、平気だと言っても、みんなは信じてくれなかった。

 やはり、前のことがあるからだろう。
 

「あーシャルロットちゃん。いつもより元気がない、食事だって食べてない。これじゃみんな心配して当たり前だよ」

「そうですよ、シャルロット様」

 リズ様に言われて気付く、朝食が一つも減っていなかった。わたしはただパンを持ってボーッとしていた。

 ほんとダメね。こんなんじゃ、みんなに心配されて当然だ。
 それに、みんなに夢の話はできない。


「あのね。ちょっと作りたいものがあって、少し寝不足なの……待ってて」

 食卓を立ち自分の部屋に戻り、お守りの入った箱を持ってくる。本当は祭りの日に渡そうと思ってたけど、今の方がいいと思う。

 何か、あるかもしれないし。

 
「これをみんなに渡そうと思って作ってたの、作るのに、ちょっと張り切り過ぎちゃった」

 と、お守りの入った箱を笑って見せた。
 リズ様は立ち上がり、近くに来て一つ手に取る。

「いい香りがする。最近シーランと出掛けたのって、お守り袋を作るためだったんだ」

 わたしは頷いた。

「そうなの。シーランは森と水龍様の森に花を集めに連れていってくれたの。お祭りの前に間に合ってよかった」

 シーラン様とリオさんも集まってくる。わたしは箱の中から一つ取り渡した。

「この赤いリボンがリズ様で、青いリボンがシーラン様、黄色のリボンがリオさん、みんなの瞳の色とリボンを合わせたの、マリーはピンクね」

 
 みんなに一つずつお守袋を渡した。 

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