竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第四章 獣人の国に咲いた魔女の毒花(竜人王祭編)

第11話

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 お泊まり会の朝は騒がしかった。いきなり、みんなが眠る部屋に、竜人王様が乱入したのだ。
 何やら、エルフの国と獣人の国に何かあったと、アル様から連絡が入った。

 自分も呼ばれたから現地に向かうと、そのことを、スノー王妃に伝えたかったみたいだ。

「竜人王様、なにかあったのですか?」
「こ、小娘……いや、その」

 わたしが話しかけると、竜人王覚様は驚きの表情を見せた。どうやらこのお泊まり会に、わたしが参加をしていたことを忘れていたみたいだ。

「小娘、な、なんでもないぞ、み、み、みんなはゆっくり用意をして、今日の竜人王祭を楽しむと良い」

 すぐに、スノー王妃だけを連れて、部屋を出て行ってしまった。

 やはり、何かおかしい?

 アル様に聞こうと、水晶球を出して話しかけたけど、反応は返ってこない。

 そうだ! シーラン様達なら何か知っているはずだと、チャコちゃん達に一言言って部屋に戻り、シーラン様達の部屋を開けた。
 
「失礼します」
「シ、シャルロット?」

 ソファーで寛いでいたシーラン様が驚く。そうだろう、お泊まり会で朝食の時間にはいないと伝えていたし、お祭りが始まる一時間前に、部屋の前で待ち合わせにしていたから。
 ここにはシーラン様だけで、リズ様とリオさんがみあたらない? 

 まさか、二人とも呼ばれた?
  
 シーラン様に開こうとしたときに、ガチャっと扉が開き、リズ様とリオさんが自分の部屋から出てくる。

「シーラン、おはよう……?」
「おはようございます」

「兄上、リオおはよう」
「おはようございます、リズ様、リオさん」

 寝癖とパジャマ姿のリズ様と、いつもの姿のリオさん、二人ともわたしを見て驚いた様子だ。

「あれっ、どうしたの? スノー王妃様とお泊まり会じゃなかったっけ?」
「もう、こっちに戻られたのですか?」

 こちらも慌てていない、いつもの二人だ……。

「なにがあったのかは、わからないが。シャルロットはいつまで、そのパジャマ姿を俺以外に見せてるんだ?」

 パジャマ姿? あ、チャコちゃん達とお揃いの、うさぎのパジャマ姿のままだった。

 慌てていたから忘れていた。

「あ、その。竜人王様の様子が変だったから、みんなに聞こうと思って慌てちゃった」

「竜人王様が慌てた? そうなのか?」

 やはり、シーラン様達には連絡が入っていない? それとも別の理由で慌ててた? 

「ほらほら、シャルロットちゃん。シーランが嫉妬するから、一度部屋に戻って着替えておいで!」

 寝癖付きのリズ様に背中を押されて、自室に戻った。


 ♢


 シャルロットが部屋に戻ったのを見て、俺は口を開く。

「どうなってる? アル様の話だと、シャルロトには気付かれないように、するんじゃなかったのか?」

「そのはずだけど……シャルロットちゃんのあの様子だと。連絡を受けた竜人王様が忘れて、部屋に突撃しちゃったみたいだね」


 竜人王様、あなたっていう人は、行動する前に考えないんだ……。


 実際のところ。今朝早く、アル様から緊急連絡が入っている。
 その内容は見たこともない花が、炎で焼き切り、障壁を張った場所。エルフの国と、獣人の国に、咲いたということだ。

 アル様の指示で、俺達はシャルロットの警護。アル様とラーロさんは二手に分かれて、その花の場所に向うと伝えられた。

 アル様とラーロさんから、何度も言われている。

「なにがあっても、シャルロットには絶対に伝えるな!」
 
 それは昨日の終わり、俺達は魔法協会の会議室に呼ばれていた。
 部屋に着くと、そこには深刻な顔をしたアル様とラーロさん、エシャロットさん、お師匠様がいた。

『これでみんな集まったね』

 アル様は切り出す。

『チビ竜君。君達には引き続きシャルちゃんの護衛と、魔法を使わせないようにしてください。どんな、小さな魔法もです』

 小さな魔法でも使うな……?

『あの、もし、シャルロットが魔法を使うと、どうなるのですか?』

『シャルちゃんが魔法を使用すると。多分、彼女は倒れて、二度と目を覚さなくなるかもしれない』

 二度と目を覚さなくなる⁉︎ そこまで、シャルロットの体は深刻な状況なのか……。

 一気に鼓動が跳ね上がる。その横でヒュッと息を飲む音がした。兄上も驚きを隠せないみたいだ。

『おい、チビ竜達はなにがあっても、シャルちゃんから目を離すなよ、捕まえておけ!』

『そうね。シャルロットちゃんを守ってあげて』

『ワシが必ず……ワシが小娘を助ける薬を見つける。今度はワシが小娘を助ける番だ』

 いつになく声を荒げたラーロさん。その隣で、エシャロットさんは優しく肩を抱いた。

 アル様はお師匠様に頭を下げた。

『師匠、頼みます』
『あぁ、わかった』

 そうだお師匠様なら必ず、シャルロットを助ける薬を見つけてくれるはず。
 それまで、俺達は自分にできることをする。

『シャルロットには絶対に魔法は使わせません』

 そうだなと、兄上とリオ、みんなが一斉に頷いた。

『よろしく頼んだよ、チビ竜君達』


 ♢


 そして、今日何かが起きた。
 しかし俺達はなにもなかったように、自然に振る舞う。

 
  君を守るために。
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