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第一章
67話
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私達は急いでヌヌの場所に向かい、着いた先は石造りの円状の闘技場だった。その闘技場の中から学生達の声が聞こえる、この闘技場の中で学生達は魔物を倒す授業を受けているようだ。
〈ヌヌの魔力……闘技場の何処かにヌヌがいる。エルバ、アール行くぞ〉
〈う、うん〉
〈エルバ様大丈夫です、何かあれば僕が守ります〉
闘技場の中の様子を見るため中に入り、隅に座った。
学生達は魔物を前にして、各々得意な攻撃法を使用し戦っていた。
「ツノベア! 俺のファイアボルトをくらいやがれぇ!」
「いや、ボクのサンダーボルトで倒します!」
「私の剣のほうが、早く強い!」
学生達はツノベア、牙ウサ、トサカ鳥……を倒す。
だが、この場にヌヌはおらず、闘技場の奥にいるとサタ様は言った。
「「「「おお――!!」」」」
けたたましい生徒達の歓喜が闘技場に響き渡る。
魔法を使う学生達は、長さが三十センチ位の枝のような杖を持ち、黒いローブを身につける中……赤、白、紺色、袖とフードに月桂樹の金刺繍がはいるローブを身につける、学生がいた。
そんな彼らに、学生達は歓喜の声をあげる。
「さすが、勇者パーティーにいた戦士の末裔! 炎を操る格闘家になられても強い」
筋肉質の茶髪の学生は真っ赤なローブと、両手に真っ赤な籠手をはめ、魔物と戦っている。
「おお聖女様の回復魔法は、なんと麗しきことか」
魔物との戦いで、傷付いた生徒の傷を治す女性。
アマリアだ……あの日に見た彼女は違い、優雅に白銀の杖を握っていた。そしてもう一人、真っ黒な杖を振り、手元には魔導書を装備して、ダメージと共に毒を放つ魔法を放つ黒魔導士。
彼らを見た、頭の上でサタ様のため息が聞こえた。
〈今、目立っている学生が勇者パーティーの末裔だな……他の生徒より異才を放つが……ただ、1人、会いたくない奴がいたな〉
〈ええ、いましたね。怪我をされた生徒に回復魔法を使っていますが……彼女から他の魔法が見え隠れしております〉
〈うむ……この場にいる殆どの学生がそれにかかっている。彼らでは『ソレ』に気付き、解除するのは難しいだろうな〉
見た目だけ変わったが、中身はあの時とまったく変わっていないと、2人はアマリアを見て呆れていた。
勇敢に魔物と戦う彼らの先祖は――300年前に魔王を倒した……いや、サタ様は倒れていないから、魔王と戦った伝説のパーティーの末裔か。
だけど、この闘技場に肝心の勇者の末裔、この国の王子が見当たらないし、新魔王の姿もない。
〈ねえ。サタ様、勇者の末裔と新魔王様は闘技場にいないよね〉
〈ん? 新魔王はこの場におらぬが……勇者ならそこにいるぞ〉
〈え?〉
サタ様が羽をさした先に、生徒達と同じ黒いローブを着た、モサモサ金色髪の学生がいた。彼は学生に倒された魔物が落とした、首輪を一つ一つ大切そうに回収している。
(……うそ、あの学生が勇者の末裔⁉︎)
あの、モサモサ君がこの小説のヒーロー? ……サラサラな金髪、碧眼の王子じゃない……小説の表紙と見た目が違っていた。
〈サタ様、エルバ様、モサモサの彼が回収している首輪。あれは魔導具ですね……魔法都市の魔法使いが作る魔導具に引けを取らない、かなり出来がいい代物。『アレ』に捕まると簡単に抜け出すことは難しい〉
〈うむ、難しいな〉
〈え、サタ様も?〉
頭の上でコクリと頷く。新魔王はと聞くと彼は上手く魔力を扱い書庫にいるといった。彼もまた小説の内容と違っている。
小説だと――2人は学園に入学してすぐ、可愛いアマリアに好意を抱く。テスト、魔法で幾度となく対立してライバルの関係のはず。そんな2人にアマリアは涙しながら『私の為に争わないでぇ!』と、止めているはずなのだが。
(お、アマリアさんがモサモサ君に話しかけたけど、スルーされた……)
悪役令嬢リロッテは違う男性と一緒で、モサモサ君には関心がないみたい。残念だ……小説の世界が見れるかもと、期待していたのに。
――現実とは異なりかな。
「「「ギャオオオオオオ――ン!!」」」
突如、けたたましい獣の叫び声が闘技場に響く。
なんだ? とざわめく闘技場の学生達がの前に『ギィ、ギィ』と音を出して、闘技場の奥から先生数名が鎖を引き闘技場に連れてきたのは、檻に入った真っ黒な毛皮と赤い瞳の魔物。
〈ヌヌ!〉
〈ヌヌ!〉
サタ様とアール君が魔物の名前を呼んだ。
あの魔物は私達が探している、元四天王魔犬ヌヌ。
ヌヌはガシャン、ガシャンと鉄格子を鳴らし『ギャオオオオオオ――ン!!』学生達を威嚇して吠える。
「すごい……威圧」
「こんな魔物に……勝てる気がしない」
「……ヒィ、怖い」
学生達は魔犬ヌヌの威嚇に怯えた。
〈……ああ、ヌヌ〉
〈ククク、ヌヌよ。300年、見ない間…………特にお腹の周りがふくよかになったな〉
〈ふくよか?〉
モコ鳥のサタ様と、黒猫のアール君は仲間の魔犬ヌヌの言葉がわかる。だから、彼らを通して私もヌヌの言葉がわかった。
ヌヌはけたたましく、ここに居る学生達を威嚇しているかと思ったが……
実際の彼は。
『おれっち、なんもしてないっす。人なんて襲ってないっす。魔王サタナス様を探したいからココから出して、お家にかえして、まだ死にたくないヨォーーー!!!』
なんとも気の抜ける、可愛い、ヌヌの叫びだった。
〈ヌヌの魔力……闘技場の何処かにヌヌがいる。エルバ、アール行くぞ〉
〈う、うん〉
〈エルバ様大丈夫です、何かあれば僕が守ります〉
闘技場の中の様子を見るため中に入り、隅に座った。
学生達は魔物を前にして、各々得意な攻撃法を使用し戦っていた。
「ツノベア! 俺のファイアボルトをくらいやがれぇ!」
「いや、ボクのサンダーボルトで倒します!」
「私の剣のほうが、早く強い!」
学生達はツノベア、牙ウサ、トサカ鳥……を倒す。
だが、この場にヌヌはおらず、闘技場の奥にいるとサタ様は言った。
「「「「おお――!!」」」」
けたたましい生徒達の歓喜が闘技場に響き渡る。
魔法を使う学生達は、長さが三十センチ位の枝のような杖を持ち、黒いローブを身につける中……赤、白、紺色、袖とフードに月桂樹の金刺繍がはいるローブを身につける、学生がいた。
そんな彼らに、学生達は歓喜の声をあげる。
「さすが、勇者パーティーにいた戦士の末裔! 炎を操る格闘家になられても強い」
筋肉質の茶髪の学生は真っ赤なローブと、両手に真っ赤な籠手をはめ、魔物と戦っている。
「おお聖女様の回復魔法は、なんと麗しきことか」
魔物との戦いで、傷付いた生徒の傷を治す女性。
アマリアだ……あの日に見た彼女は違い、優雅に白銀の杖を握っていた。そしてもう一人、真っ黒な杖を振り、手元には魔導書を装備して、ダメージと共に毒を放つ魔法を放つ黒魔導士。
彼らを見た、頭の上でサタ様のため息が聞こえた。
〈今、目立っている学生が勇者パーティーの末裔だな……他の生徒より異才を放つが……ただ、1人、会いたくない奴がいたな〉
〈ええ、いましたね。怪我をされた生徒に回復魔法を使っていますが……彼女から他の魔法が見え隠れしております〉
〈うむ……この場にいる殆どの学生がそれにかかっている。彼らでは『ソレ』に気付き、解除するのは難しいだろうな〉
見た目だけ変わったが、中身はあの時とまったく変わっていないと、2人はアマリアを見て呆れていた。
勇敢に魔物と戦う彼らの先祖は――300年前に魔王を倒した……いや、サタ様は倒れていないから、魔王と戦った伝説のパーティーの末裔か。
だけど、この闘技場に肝心の勇者の末裔、この国の王子が見当たらないし、新魔王の姿もない。
〈ねえ。サタ様、勇者の末裔と新魔王様は闘技場にいないよね〉
〈ん? 新魔王はこの場におらぬが……勇者ならそこにいるぞ〉
〈え?〉
サタ様が羽をさした先に、生徒達と同じ黒いローブを着た、モサモサ金色髪の学生がいた。彼は学生に倒された魔物が落とした、首輪を一つ一つ大切そうに回収している。
(……うそ、あの学生が勇者の末裔⁉︎)
あの、モサモサ君がこの小説のヒーロー? ……サラサラな金髪、碧眼の王子じゃない……小説の表紙と見た目が違っていた。
〈サタ様、エルバ様、モサモサの彼が回収している首輪。あれは魔導具ですね……魔法都市の魔法使いが作る魔導具に引けを取らない、かなり出来がいい代物。『アレ』に捕まると簡単に抜け出すことは難しい〉
〈うむ、難しいな〉
〈え、サタ様も?〉
頭の上でコクリと頷く。新魔王はと聞くと彼は上手く魔力を扱い書庫にいるといった。彼もまた小説の内容と違っている。
小説だと――2人は学園に入学してすぐ、可愛いアマリアに好意を抱く。テスト、魔法で幾度となく対立してライバルの関係のはず。そんな2人にアマリアは涙しながら『私の為に争わないでぇ!』と、止めているはずなのだが。
(お、アマリアさんがモサモサ君に話しかけたけど、スルーされた……)
悪役令嬢リロッテは違う男性と一緒で、モサモサ君には関心がないみたい。残念だ……小説の世界が見れるかもと、期待していたのに。
――現実とは異なりかな。
「「「ギャオオオオオオ――ン!!」」」
突如、けたたましい獣の叫び声が闘技場に響く。
なんだ? とざわめく闘技場の学生達がの前に『ギィ、ギィ』と音を出して、闘技場の奥から先生数名が鎖を引き闘技場に連れてきたのは、檻に入った真っ黒な毛皮と赤い瞳の魔物。
〈ヌヌ!〉
〈ヌヌ!〉
サタ様とアール君が魔物の名前を呼んだ。
あの魔物は私達が探している、元四天王魔犬ヌヌ。
ヌヌはガシャン、ガシャンと鉄格子を鳴らし『ギャオオオオオオ――ン!!』学生達を威嚇して吠える。
「すごい……威圧」
「こんな魔物に……勝てる気がしない」
「……ヒィ、怖い」
学生達は魔犬ヌヌの威嚇に怯えた。
〈……ああ、ヌヌ〉
〈ククク、ヌヌよ。300年、見ない間…………特にお腹の周りがふくよかになったな〉
〈ふくよか?〉
モコ鳥のサタ様と、黒猫のアール君は仲間の魔犬ヌヌの言葉がわかる。だから、彼らを通して私もヌヌの言葉がわかった。
ヌヌはけたたましく、ここに居る学生達を威嚇しているかと思ったが……
実際の彼は。
『おれっち、なんもしてないっす。人なんて襲ってないっす。魔王サタナス様を探したいからココから出して、お家にかえして、まだ死にたくないヨォーーー!!!』
なんとも気の抜ける、可愛い、ヌヌの叫びだった。
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