4 / 59
4話 神聖力
しおりを挟む
馬車から降りて、何が起きているのか、だいたい予想がついた私は、人だかりの中に入っていくことにした。
「ガトーさん、私、見てきます。」
私は急いで人だかりをかき分け、声のする方に向かった。
ガトーさんと、シナモさんも、私を守るために、ぴったりとついてくる。
中まで行くと、ぐったりと倒れている男の子を前にして、泣き叫んでいる女性がいた。
男の子は五歳くらいだろうか・・・。
「お願いです。誰か、お医者様を呼んでください。お願いです。」
男の子も女性も、質素でツギハギだらけの服を着て、何日もお風呂に入ってないみたいに顔も腕も薄汚れている。
周りを囲むやじ馬たちの反応は冷たく、医者を呼びに行こうとする者は誰もいない。
「医者を呼んで来たって、払う金なんかないだろう?」
「可哀そうだが、あの子はもうだめだな。」
目の前に立ちふさがる男の言葉にムカッとした。
「私が治療します。どいてください。」
私は目の前の男を押しのけて、女性の前まで出て行った。
「おっと、聖女様じゃないですか。この子を治療したってお金はもらえませんぜ。」
「そうですよ。貧民街の子どもですよ。」
ほんとに腹立つ人たちね。
私は怒りを抑え切れず、この男たちの顔をキッと睨んだ。
「命はお金に換えられません。身分も関係ありません。私が治療したいからするのです。」
男たちは少し怯んだようで、それ以上何も言わなかった。
私は男の子の前に跪き、女性に聞いた。
「この子はどうしたのですか?」
「ついさっき、馬車にはねられたのです。馬車はそのまま止まらずに行ってしまいました。ううっ・・・、お願いです。この子を、私の息子を助けてください。聖女様、お願いします。」
母親は、ぽろぽろと涙を流して私に手を合わせた。
私は、ぐったりと倒れて意識のない男の子の身体を観察し、顔面蒼白と冷汗、そしてお腹が異常に膨らんでいるのがわかった。
おそらく内臓が破裂している・・・。
「騎士様、この子の服を脱がせますから、周りから見えないようにしてください。」
ガトーさんとシナモさんはマントを身体から外し、それを使って暗幕代わりにしてくれた。
私は男の子の服を脱がせて、手のひらをかざした。
治れ治れ治れ治れ・・・
心の中で念じてみたが、いつも感じる手応えを感じない。
この子のケガが酷すぎて、手のひらをかざすだけではダメなんだわ。
そのとき、頭の中で、直接触れなさいと言われたような気がした。
そうだわ、手をかざしてもダメなら、直接触れなければ・・・。
私は膨らんだお腹に両手を当てて、念じ続けた。
治れ治れ治れ治れ・・・
手のひらが熱くなり、自分の手から何かが奪われて行くのを感じる。
マンガの知識で言うなら、これが神聖力を流しこむってことなんだろう。
お願いだから、私の神聖力、途中で枯渇しないで・・・。
私の祈りが通じたのか、男の子のお腹は元に戻って、顔面蒼白だった顔にほんのり赤みがさしてきた。
だけど、まだ終わらない。私の身体がそう訴えている。
四ケ月間、いろんな人に治療をしてきた私は、治療に終わりが来ることを、身をもって知っている。
私自身の身体が、―終わったよ― と教えてくれるのだ。
「聖女様、息子の顔色が良くなりました。ありがとうございます。」
母親はそう言ったけど、
「いえ、まだです。ここで終わると、再発します。だからもう少しこのままで・・・。」
私はさらに強く、治れ治れと念じ続けて、神聖力を流し込む。
自分でもわかった。神聖力がもうそろそろ枯渇することを・・・。
まだ間に合う?
お願いだから、最後まで治療させて・・・
最後の力を振り絞り、私は男の子のお腹に神聖力を流し続けた。
―終わったよ―
やっと私の身体が終わりを告げてくれた。
良かった・・・間に合った・・・
「お母さん、息子さんは助かりましたよ。」
それだけ言うと、私はふっと意識を失った。
「ガトーさん、私、見てきます。」
私は急いで人だかりをかき分け、声のする方に向かった。
ガトーさんと、シナモさんも、私を守るために、ぴったりとついてくる。
中まで行くと、ぐったりと倒れている男の子を前にして、泣き叫んでいる女性がいた。
男の子は五歳くらいだろうか・・・。
「お願いです。誰か、お医者様を呼んでください。お願いです。」
男の子も女性も、質素でツギハギだらけの服を着て、何日もお風呂に入ってないみたいに顔も腕も薄汚れている。
周りを囲むやじ馬たちの反応は冷たく、医者を呼びに行こうとする者は誰もいない。
「医者を呼んで来たって、払う金なんかないだろう?」
「可哀そうだが、あの子はもうだめだな。」
目の前に立ちふさがる男の言葉にムカッとした。
「私が治療します。どいてください。」
私は目の前の男を押しのけて、女性の前まで出て行った。
「おっと、聖女様じゃないですか。この子を治療したってお金はもらえませんぜ。」
「そうですよ。貧民街の子どもですよ。」
ほんとに腹立つ人たちね。
私は怒りを抑え切れず、この男たちの顔をキッと睨んだ。
「命はお金に換えられません。身分も関係ありません。私が治療したいからするのです。」
男たちは少し怯んだようで、それ以上何も言わなかった。
私は男の子の前に跪き、女性に聞いた。
「この子はどうしたのですか?」
「ついさっき、馬車にはねられたのです。馬車はそのまま止まらずに行ってしまいました。ううっ・・・、お願いです。この子を、私の息子を助けてください。聖女様、お願いします。」
母親は、ぽろぽろと涙を流して私に手を合わせた。
私は、ぐったりと倒れて意識のない男の子の身体を観察し、顔面蒼白と冷汗、そしてお腹が異常に膨らんでいるのがわかった。
おそらく内臓が破裂している・・・。
「騎士様、この子の服を脱がせますから、周りから見えないようにしてください。」
ガトーさんとシナモさんはマントを身体から外し、それを使って暗幕代わりにしてくれた。
私は男の子の服を脱がせて、手のひらをかざした。
治れ治れ治れ治れ・・・
心の中で念じてみたが、いつも感じる手応えを感じない。
この子のケガが酷すぎて、手のひらをかざすだけではダメなんだわ。
そのとき、頭の中で、直接触れなさいと言われたような気がした。
そうだわ、手をかざしてもダメなら、直接触れなければ・・・。
私は膨らんだお腹に両手を当てて、念じ続けた。
治れ治れ治れ治れ・・・
手のひらが熱くなり、自分の手から何かが奪われて行くのを感じる。
マンガの知識で言うなら、これが神聖力を流しこむってことなんだろう。
お願いだから、私の神聖力、途中で枯渇しないで・・・。
私の祈りが通じたのか、男の子のお腹は元に戻って、顔面蒼白だった顔にほんのり赤みがさしてきた。
だけど、まだ終わらない。私の身体がそう訴えている。
四ケ月間、いろんな人に治療をしてきた私は、治療に終わりが来ることを、身をもって知っている。
私自身の身体が、―終わったよ― と教えてくれるのだ。
「聖女様、息子の顔色が良くなりました。ありがとうございます。」
母親はそう言ったけど、
「いえ、まだです。ここで終わると、再発します。だからもう少しこのままで・・・。」
私はさらに強く、治れ治れと念じ続けて、神聖力を流し込む。
自分でもわかった。神聖力がもうそろそろ枯渇することを・・・。
まだ間に合う?
お願いだから、最後まで治療させて・・・
最後の力を振り絞り、私は男の子のお腹に神聖力を流し続けた。
―終わったよ―
やっと私の身体が終わりを告げてくれた。
良かった・・・間に合った・・・
「お母さん、息子さんは助かりましたよ。」
それだけ言うと、私はふっと意識を失った。
50
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
続・ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました
かほなみり
恋愛
『ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました』、『ド派手な髪の男がナンパしたら愛する女を手に入れました』の続編です。こちらをお読みいただいた方が分かりやすくなっています。ついに新婚生活を送ることになった二人の、思うようにいかない日々のお話です。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
ハードモードな異世界で生き抜いてたら敵国の将軍に捕まったのですが
影原
恋愛
異世界転移しても誰にも助けられることなく、厳しい生活を送っていたルリ。ある日、治癒師の力に目覚めたら、聖堂に連れていかれ、さらには金にがめつい師によって、戦場に派遣されてしまう。
ああ、神様、お助けください! なんて信じていない神様に祈りを捧げながら兵士を治療していたら、あれこれあって敵国の将軍に捕まっちゃった話。
敵国の将軍×異世界転移してハードモードな日々を送る女
-------------------
続以降のあらすじ。
同じ日本から来たらしい聖女。そんな聖女と一緒に帰れるかもしれない、そんな希望を抱いたら、木っ端みじんに希望が砕け散り、予定調和的に囲い込まれるハードモード異世界話です。
前半は主人公視点、後半はダーリオ視点。
獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる