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16話 魔王
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俺は、倒れた彼女を抱き上げ、馬車に運んで目が覚めるのを待った。
抱いている手と腕に、彼女の肉体の柔らかさと体温を感じ、鼻先は彼女の香りにくすぐられた。
あのとき我慢できずに、眠っている彼女のしっとりと湿った柔らかい唇に、そっとキスしたことは、誰にも言うまい。
彼女の目が覚めてからも、俺は抱いた手を離さなかった。
苦しい言い訳を、疑うことなく信じてしまう彼女が愛しくてたまらない。
下から俺を覗き見る瞳も、サンドイッチが持てなくてプルプル震える手も、もう、何もかもが愛しい。
サンドイッチを俺が食べさせているとき、真っ赤になって恥ずかしそうに咀嚼する口元を俺はじっと見ていた。
こんなに幸せな時を過ごせるなら、これからも毎回食事の度に、俺の手で食べさせてあげたいと思った。
食事がすんだ後に、俺の炎魔法で温めたお茶を渡したら、幸せそうな顔をして飲んでくれた。
俺の魔法が彼女を喜ばせたのだと思うと胸が熱くなった。
ふふっ、口元についた卵を、俺がぺろりと舐めたときの、彼女のあたふたとした姿は、今思い出しても可愛くて仕方がない。
俺は赤くなった顔を見られたくなくて、すぐに馬車を出たから気付かれなかったと思うが・・・。
あの後、ひき逃げした馬車の犯人を見つけ出したのだが、町の高利貸しの男だった。
牢屋にぶち込んで、多額の罰金を取り上げて、一部を子どもの母親に渡したが、残りの金は、貧民街の救済に使うとしよう。
彼女が提案した、子ども専用の食堂の資金に充てるのがちょうど良い。
子ども専用の食堂・・・、俺には考え付かなかった政策だった。
貧民街の状態を、彼女はよく把握していたのだな。
初めて行く貧民街であっただろうに、劣悪な環境にも鼻につく臭いにも、一切文句を言わずに、最後まで真剣に治療を続けていた。
俺はその横顔を見ていることしかできなかったが・・・
エクレーヌ、あなたは俺のこの気持ちに、気付くことはないのだろうな・・・。
俺はあなたの心を、俺のものにしたい。
だが、俺は知っているんだ。
エクレーヌ、あなたの心がクリードにあることを・・・。
俺が神殿の救護室に行くようになってから、彼女に何度も治療をしてもらった。
だけど、クリードが入って来た瞬間、いつも彼女はとても嬉しそうな顔でクリードを見つめるのだ。
真面目な彼女はすぐに気持ちを切り替えて、俺の治療に集中してくれたけれど、クリードを見るあの一瞬に、俺がどんな気持ちになったかなんて知らないのだろうな。
もしも、クリードが俺の親友じゃなかったら、きっと辺境警備にでも、追いやっていただろう。
彼女は何かとクリードを気にしている。
彼女の口からクリードの名前が出る度に、俺は嫉妬に駆られてしまう。
だから、クリードには、俺が救護室に行くから、お前の監視はもう必要ないと伝えた。
もし俺が、クリードに頼まず、最初から、ずっと俺だけが彼女を見守り続けていたら、彼女の気持ちは変わっていたのだろうか・・・。
俺は、あの時の決断を、今となっては後悔している。
だが、たとえ、クリードが俺の親友であっても、決してエクレーヌは渡さない。
絶対にだ。
俺は不幸にも竜の呪いにかかってしまった。
彼女は、クリードに俺の呪いを解く癒しの力が現れたと言ったそうだが、強引ではあったが、あの口づけで、彼女にもその力があるとわかったのだ。
俺はこの呪いを最大限利用させてもらう。
それが卑怯な手段だと分かっているが、エクレーヌ、あなたを手に入れることができるのなら、俺は魔王にだって、なってもいい・・・。
抱いている手と腕に、彼女の肉体の柔らかさと体温を感じ、鼻先は彼女の香りにくすぐられた。
あのとき我慢できずに、眠っている彼女のしっとりと湿った柔らかい唇に、そっとキスしたことは、誰にも言うまい。
彼女の目が覚めてからも、俺は抱いた手を離さなかった。
苦しい言い訳を、疑うことなく信じてしまう彼女が愛しくてたまらない。
下から俺を覗き見る瞳も、サンドイッチが持てなくてプルプル震える手も、もう、何もかもが愛しい。
サンドイッチを俺が食べさせているとき、真っ赤になって恥ずかしそうに咀嚼する口元を俺はじっと見ていた。
こんなに幸せな時を過ごせるなら、これからも毎回食事の度に、俺の手で食べさせてあげたいと思った。
食事がすんだ後に、俺の炎魔法で温めたお茶を渡したら、幸せそうな顔をして飲んでくれた。
俺の魔法が彼女を喜ばせたのだと思うと胸が熱くなった。
ふふっ、口元についた卵を、俺がぺろりと舐めたときの、彼女のあたふたとした姿は、今思い出しても可愛くて仕方がない。
俺は赤くなった顔を見られたくなくて、すぐに馬車を出たから気付かれなかったと思うが・・・。
あの後、ひき逃げした馬車の犯人を見つけ出したのだが、町の高利貸しの男だった。
牢屋にぶち込んで、多額の罰金を取り上げて、一部を子どもの母親に渡したが、残りの金は、貧民街の救済に使うとしよう。
彼女が提案した、子ども専用の食堂の資金に充てるのがちょうど良い。
子ども専用の食堂・・・、俺には考え付かなかった政策だった。
貧民街の状態を、彼女はよく把握していたのだな。
初めて行く貧民街であっただろうに、劣悪な環境にも鼻につく臭いにも、一切文句を言わずに、最後まで真剣に治療を続けていた。
俺はその横顔を見ていることしかできなかったが・・・
エクレーヌ、あなたは俺のこの気持ちに、気付くことはないのだろうな・・・。
俺はあなたの心を、俺のものにしたい。
だが、俺は知っているんだ。
エクレーヌ、あなたの心がクリードにあることを・・・。
俺が神殿の救護室に行くようになってから、彼女に何度も治療をしてもらった。
だけど、クリードが入って来た瞬間、いつも彼女はとても嬉しそうな顔でクリードを見つめるのだ。
真面目な彼女はすぐに気持ちを切り替えて、俺の治療に集中してくれたけれど、クリードを見るあの一瞬に、俺がどんな気持ちになったかなんて知らないのだろうな。
もしも、クリードが俺の親友じゃなかったら、きっと辺境警備にでも、追いやっていただろう。
彼女は何かとクリードを気にしている。
彼女の口からクリードの名前が出る度に、俺は嫉妬に駆られてしまう。
だから、クリードには、俺が救護室に行くから、お前の監視はもう必要ないと伝えた。
もし俺が、クリードに頼まず、最初から、ずっと俺だけが彼女を見守り続けていたら、彼女の気持ちは変わっていたのだろうか・・・。
俺は、あの時の決断を、今となっては後悔している。
だが、たとえ、クリードが俺の親友であっても、決してエクレーヌは渡さない。
絶対にだ。
俺は不幸にも竜の呪いにかかってしまった。
彼女は、クリードに俺の呪いを解く癒しの力が現れたと言ったそうだが、強引ではあったが、あの口づけで、彼女にもその力があるとわかったのだ。
俺はこの呪いを最大限利用させてもらう。
それが卑怯な手段だと分かっているが、エクレーヌ、あなたを手に入れることができるのなら、俺は魔王にだって、なってもいい・・・。
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