モブの聖女に転生したのですが、18禁BL主人公を私が癒してもよろしいのですか?

矢間カオル

文字の大きさ
42 / 59

42話 クラックの能力

しおりを挟む
仕事が終わり、家に帰って馬車を降りた際に、クラックが話しかけてきた。

クラックは、貧民街で父親から虐待を受けていた子どもで、私が親から引き離すために、家に連れてきたのだ。

父親は傷害罪で拘留されたけれど、三日後には復帰した。

復帰する前に、ガトーさんが子どもに関わらないようにと強く念押ししてくれたそうなんだけど、もしものことを考えて、侯爵家にいることは秘密にしている。

クラックは、侯爵家に来てしっかり食事をとれるようになったから、折れそうだった手も足も、肉がついて太くなってきた。

初めて見たときは、全身薄汚れた身なりだったけれども、お風呂に入ってきれいにしたら、黄緑色の髪の毛はサラッとしてて美しく、澄んだ青い瞳の可愛らしい子どもになった。

侯爵家で働くことを希望しているので、今は文字の読み書きの勉強をしながら、馬の飼育係の仕事を手伝っている。

馬車が帰って来た際に、御者に馬の様子を聞くのも彼の仕事になっている。

「聖女様、今日はお疲れさまでした。騎士様が城壁から落ちて大変だったのではないですか?」
クラックは、まだ子どもなのに、私のことを本気で心配してくれている・・・って、どうして騎士様が城壁から落ちたことを知ってるの? 
私はとても驚いた。

「ねえ、クラック、どうしてそんなこと知ってるの?」

「あの子が教えてくれたんです。」
クラックは上を見上げて指をさした。

指がさしている方向を見上げたら、そこにあるのは大きな木。
そこには人の姿なんてない。

「あの子って?」

「聖女様、見えますか? 木の枝にとまっている鳥がいるでしょう? あの子です。」

「えっ? もしかして・・・、クラックは鳥と話せるの?」
この世界には魔法が存在するのだから、鳥と話せる子どもがいてもおかしくないわ。

「はい。話せるって言うか、頭の中を覗けるっていうか・・・。わかったのは最近なんですが・・・。」

クラックに詳しく話を聞いてみると、鳥だけではなく、ネズミとも意思の疎通ができるらしい。

物心ついた頃から、寝ている最中にネズミが寄ってくることがあったそうだ。

だけど、父親はそれを気味悪がって、クラックに乱暴をはたらいた。

クラックの頭の中は、いつも恐怖と食べ物のことでいっぱいで、何故ネズミが自分のそばに寄ってくるのか考えることすらできなかった。

ところが、侯爵家に来てからは、恐怖心はなくなり、始終食べ物のことを考えなくてもよくなった。

すると心に余裕ができて、自然と動物の意思が、見えたり感じたりできるようになったと言う。

「ネズミは、僕に食べ物をくれって言うんですよ。何故僕なの?って聞いたら、僕は話しやすいそうです。あの鳥は、僕の肩に乗ってきたときに、お城で見た記憶を、たまたま僕が覗いたのです。」

「それはすごい能力だわ。その能力を生かせば、仕事になるし、お金持ちになれるわよ。その能力をしっかり磨いてあなたの人生に役立てなさいね。」

「はい。ありがとうございます。」

私が助けた子どもに、こんなにすごい能力があるのだとわかって、私はとても嬉しくなった。
ケガをした騎士様に、心の中で感謝した。



翌日、救護室で、ガトーさんに腕の治療をしている最中のこと。

「すまないが、彼の次に私の治療をしてくれないか? 鼻血が止まらないのだ。」
声の主はクリード様で、タオルで鼻を押さえている。

クリード様が救護室に来るのは、すごく久しぶりのことだ。

緊急事態で来たのだとわかるほど、白いタオルは真っ赤な血で染まっていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果

景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。 ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。 「俺……ステラと離れたくない」 そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。 「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」 そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。 それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。 勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。 戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──? 誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。

獅子の最愛〜獣人団長の執着〜

水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。 目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。 女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。 素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。 謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は… ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。

続・ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました

かほなみり
恋愛
『ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました』、『ド派手な髪の男がナンパしたら愛する女を手に入れました』の続編です。こちらをお読みいただいた方が分かりやすくなっています。ついに新婚生活を送ることになった二人の、思うようにいかない日々のお話です。

ハードモードな異世界で生き抜いてたら敵国の将軍に捕まったのですが

影原
恋愛
異世界転移しても誰にも助けられることなく、厳しい生活を送っていたルリ。ある日、治癒師の力に目覚めたら、聖堂に連れていかれ、さらには金にがめつい師によって、戦場に派遣されてしまう。 ああ、神様、お助けください! なんて信じていない神様に祈りを捧げながら兵士を治療していたら、あれこれあって敵国の将軍に捕まっちゃった話。 敵国の将軍×異世界転移してハードモードな日々を送る女 ------------------- 続以降のあらすじ。 同じ日本から来たらしい聖女。そんな聖女と一緒に帰れるかもしれない、そんな希望を抱いたら、木っ端みじんに希望が砕け散り、予定調和的に囲い込まれるハードモード異世界話です。 前半は主人公視点、後半はダーリオ視点。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

侯爵令嬢ヴェロニカの推し活~義弟の恋を応援していたはずが、最初から逃げ場はありませんでした~

春野ふぶき
恋愛
貴族の家督は男子のみが継げる世界。 侯爵家の一人娘ヴェロニカは、家を継ぐために迎えられた義弟ルートヴェルを、前世日本人の感覚で「推し」として崇拝していた。 容姿端麗で完璧な義弟には、いずれふさわしい伴侶が現れる。 そう信じ、彼の恋を応援し続けるヴェロニカは、自分が選ばれる未来など想像もしない。 しかし彼女の献身は、義弟の静かな執着と独占欲を確実に育てていた。 「姉上は、最初から僕のものですよ」 勘違いに気づいた時には、すでに逃げ道は閉ざされている。 甘く、重く、逃がさない――義弟の歪んだ執着に囚われるTL短編。

処理中です...