【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません!〜

ウリ坊

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王城

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 途中で一泊した後、再び馬車に揺られ辿り着いた王都。
 オリビアはこれまでに王都に来ることがなく、初めて訪れる。

 謁見用に派手すぎない見栄えの良いドレスを身にまとった。
 自分がいかに美しく装飾しても、イクシオンの前では霞んでしまう。
 なので潔く、極力控えめな装いに抑えた。

 同じく正装したイクシオンはオリビアより年上とは思えないほど若く見える。
 全体的に白基調の正装で、もう文句なしに似合っていた。
 言葉に出しては言わないが、ずっと眺めていたいほど秀麗さが際立っている。
 こうしていると王子にしか見えない。

 朝早く出発したせいかイクシオンは早々寝てしまって、オリビアは一人静かに窓の外を眺めていた。

 馬車の窓から見る王都の景色に感動していた。
 地方で暮らしていたオリビアにとって、王都は大都会で憧れの土地だ。
 町並みも整い、美しい景観だった。
 馬車道の脇にはたくさんの店が建ち並び、多くの人々が行き交っている。
 自分の領地が港町だったからか、人の多さはそこまで変わらないと感じた。

(こんなことでもなきゃ、王都に来ることなんてなかった。けど、浮かれてる場合じゃないよね。私は遊びに来てるわけじゃないんだから)

 イクシオンと共にいるせいか、どうしても考えが横へと逸れがちだが、自分の目的は復讐だ。
 利用できるものはなんでも利用していかないと、一人で侯爵家に復讐することは叶わない。
 そのためにわざわざ利用しやすいイクシオンを選び、契約結婚を申し込んだ。
 
 良心の呵責かしゃくなのか罪悪感なのか、チクッと胸が僅かに痛む。
 だが、あえてその感情には目を向けず、気持ちを切り替えた。


 ◇◆◇


 王城へと着くと、直前で起きたイクシオンが先に出て、手を差し伸べてくれている。
 一瞬驚いたが、すぐに手を重ねてエスコートされて歩いていく。

「緊張は解れたのか?」

 イクシオンは慣れた様子で庭園を歩き、どんどん城の中へと足を進めている。

「はい。弱音を吐いている場合ではないことを思い出しました」

「つまらんな。すっかりいつもお前に戻ってしまった」

「何がつまらないのかわかりませんが、普段通りでいいとおっしゃったのは殿下です。ですので、いつも通りにさせていただきます」

 ブロック塀で出来た城の中は兵士やお仕着せ姿の使用人がたくさん歩いていた。
 イクシオンにエスコートされているオリビアにも自然と注目が集まっている。

「やはり盲目的に俺を愛する妃を演じてもらえば良かったか?」

「今さら変更はできませんので、ご了承ください」

 念の為、周りに聞こえないくらいの声で会話をしている。揶揄からかうように話しているイクシオンも、声を潜めて気を使ってくれている。

「では――」

 突然、エスコートをしたまま反対の手で腰を引き寄せられた。

「なっ……!」

「俺が妻に溺れている愚かな夫を演じるか?」

 スッとオリビアの手を取り、その手に唇を押し当てている。
 ドキッと心臓が跳ね、動揺が走る。

「っ! お戯れは、おやめください。人目が多すぎます」

「まぁ、俺は元々が道化のようなものだからな。こんなことをしても誰も驚かない」

 周りにいる王城の人間たちの目が多すぎて、下手に振り払えない。
 わかっていてわざとやっているのか、オリビアを揶揄うイクシオンはやはり楽しそうだった。

「言っただろう? 俺もいつも通りだ」

「殿下はむしろ、もう少し大人しくしていただいたほうが良さそうです」

 パッと手を離してオリビアが促すと、イクシオンもようやく前を向いて歩き出した。

「ククッ、我が妃は相変わらず手厳しいなっ」

「殿下がふざけるからです」

 歩いたまま呆れたように返事を返したが、イクシオンのおかげで少しだけ心が軽くなったような気がした。

 そしてまたイクシオンにエスコートされ、二人で城内をゆっくりと歩いていく。
 すると明らかに肌の色や服装の違う人たちが、すれ違った庭園のベンチでくつろいでいた。

「殿下。あちらにいらっしゃるのは、もしかしてリュビーナ国の方々ですか?」

「ん? あぁ……、おそらくそうだ。よくわかったな」

「えぇ。うちの領地にもよく外国の方が出入りされていたので」

 オリビアの生まれ育ったコンバート領には海があり、港町では様々な国の人たちであふれていた。
 だからだろうか、異国の人を見るとどこか懐かしく思ってしまう。

「この城ではよく各国との会談も行われている。おそらくその国の要人たちだろう」

 話しながら歩いていると、兵士が両脇で警備している部屋の前までやってきた。

 重厚な扉の前でいったん立ち止まると、オリビアは大きく息を吸って吐いた。

「さぁ、いくぞ」

「はい」

 イクシオンと腕を組んだまま、開かれた扉から部屋の中へと入った。

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