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運命とは異なる、変数から生じる可能性
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瞳いっぱいに溜まっていた涙がボロボロとこぼれ、オリビアは耐えきれず目の前の胸元に拳をぶつけた。
「ひっく、そんなわけ、っく、ないじゃ、ないですかっ……! ふっ、どうせ、私がいたって、その辺に美女がいたらフラフラついて行くんでしょ?! 領地管理だって私に任せて、ただ自分が楽したいだけじゃないですかっ!」
イクシオンはそのままオリビアを腕の中に囲み、力強く抱き寄せた。
「だったら、お前が俺をずっと見張っていればいいだろ? お前の言うことなら聞いてやる」
「夜だって、ひどいことばかり言って、しつこく攻めてくるし……」
「いつもドロドロになるくらい優しく抱いていただろう? まぁ、素直じゃないお前を見てると、たまにいじめて泣かせてやりたくなってくるんだ」
「なんですか、それ! 信じられないっ……」
バッと涙の浮かぶ顔を上げたオリビアに、イクシオンは腕の力を緩めて屈んで目線を合わせている。
「――どこへも行くな。俺の側から離れることは許さないっ」
目の前の美しい金色の瞳は見たこともないくらい真剣で、いつものようにからかうわけでもなく、ただひたすらオリビアをまっすぐ見つめていた。
「ッ」
訳のわからない高揚感で体が震えている。
イクシオンを見たまま言葉も出せず、視線すら外せずに、ただただ息を飲むことしかできなかった。
「この先も契約は取り消さない。お前の命が尽きるその時まで、ずっと俺の側にいろ」
そして引き寄せられるように唇を奪われる。
「――んッ」
あまりに自然で当然のことのように、これまで幾度となく重なった唇はやはり、切なさと嬉しさと心地良さしか感じなかった。
唇が離れてはまた重なり、次第に深くなるキスに、オリビアも夢中になってキスを返していく。
しばらく貪られた唇が糸を引きながら離れ、互いに乱れた呼吸を整えていた。
「私、だって……殿下みたいなタイプは、好みじゃないんです。優しくないし、美女好きだし、ぐうたらだし、意地悪ばっかりでいじめてくるし、ねちっこいし……」
イクシオンの胸元におでこを当てて、なるべく顔を合わせないように本音を漏らしていく。
「俺のことが好きなくせに、どうしてお前は素直に言えないんだ?」
「その台詞、そのままお返しいたします」
ムッとした顔を上げたオリビアに、イクシオンは呆れたような表情をしている。
「相変わらず、口の減らないやつだな」
「殿下にだけは言われたくありませんっ」
ふいっと顔を横に背けたオリビアに、イクシオンが笑い出した。
「クククッ……! やはり、お前といると退屈しないっ」
「――それだけは、同感です!」
ぱっと晴れやかな笑顔を見せたオリビアに、イクシオンは大きく目を開き、また体を引き寄せ性急に唇を奪った。
「んぅっ」
深く奪われた唇から熱い舌が侵入し、巧みにオリビアの口内を舐っていく。
「ぅ、んっ、はっ」
離れた口の端から混じり合った唾液が垂れ、それを追いかけるようにイクシオンは顎に舌を這わせている。
そして顔を上げたイクシオンは黙ってオリビアを見ていた。
「でん、か……?」
体の芯が疼き出し、その次を求めるようにオリビアは快楽に潤んだ瞳でイクシオンを見つめていた。
「愛してる」
あまりに率直で潔い愛の言葉に、ゾクリと肌が粟立つ。
「――ッ!」
至近距離で見つめる金色の瞳は熱が籠もっていた。
オリビアは瞬時に顔を深紅に染め、無意識に唾を飲み込んだ。
イクシオンはオリビアの体を力強く抱きしめたかと思うと、今度は唇を耳元に寄せて囁いている。
「城へ戻るぞ。ここで奪われたくないのならな」
「は、い。わかり、ました……」
イクシオンの温もりを全身に感じながら、さらに自分からも腕を回して抱きついて深く息を吐いた。
――結局、捕まってしまった。
逃げようと思えば逃げられたのに、自ら望んで捕まった。
きっと、結末は初めから決まっていたのだ。
目の前のこの美しい男に身も心も囚われて、自分は抜け出すこともできず、愚かに堕ちていくだけなのだと――
「ひっく、そんなわけ、っく、ないじゃ、ないですかっ……! ふっ、どうせ、私がいたって、その辺に美女がいたらフラフラついて行くんでしょ?! 領地管理だって私に任せて、ただ自分が楽したいだけじゃないですかっ!」
イクシオンはそのままオリビアを腕の中に囲み、力強く抱き寄せた。
「だったら、お前が俺をずっと見張っていればいいだろ? お前の言うことなら聞いてやる」
「夜だって、ひどいことばかり言って、しつこく攻めてくるし……」
「いつもドロドロになるくらい優しく抱いていただろう? まぁ、素直じゃないお前を見てると、たまにいじめて泣かせてやりたくなってくるんだ」
「なんですか、それ! 信じられないっ……」
バッと涙の浮かぶ顔を上げたオリビアに、イクシオンは腕の力を緩めて屈んで目線を合わせている。
「――どこへも行くな。俺の側から離れることは許さないっ」
目の前の美しい金色の瞳は見たこともないくらい真剣で、いつものようにからかうわけでもなく、ただひたすらオリビアをまっすぐ見つめていた。
「ッ」
訳のわからない高揚感で体が震えている。
イクシオンを見たまま言葉も出せず、視線すら外せずに、ただただ息を飲むことしかできなかった。
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そして引き寄せられるように唇を奪われる。
「――んッ」
あまりに自然で当然のことのように、これまで幾度となく重なった唇はやはり、切なさと嬉しさと心地良さしか感じなかった。
唇が離れてはまた重なり、次第に深くなるキスに、オリビアも夢中になってキスを返していく。
しばらく貪られた唇が糸を引きながら離れ、互いに乱れた呼吸を整えていた。
「私、だって……殿下みたいなタイプは、好みじゃないんです。優しくないし、美女好きだし、ぐうたらだし、意地悪ばっかりでいじめてくるし、ねちっこいし……」
イクシオンの胸元におでこを当てて、なるべく顔を合わせないように本音を漏らしていく。
「俺のことが好きなくせに、どうしてお前は素直に言えないんだ?」
「その台詞、そのままお返しいたします」
ムッとした顔を上げたオリビアに、イクシオンは呆れたような表情をしている。
「相変わらず、口の減らないやつだな」
「殿下にだけは言われたくありませんっ」
ふいっと顔を横に背けたオリビアに、イクシオンが笑い出した。
「クククッ……! やはり、お前といると退屈しないっ」
「――それだけは、同感です!」
ぱっと晴れやかな笑顔を見せたオリビアに、イクシオンは大きく目を開き、また体を引き寄せ性急に唇を奪った。
「んぅっ」
深く奪われた唇から熱い舌が侵入し、巧みにオリビアの口内を舐っていく。
「ぅ、んっ、はっ」
離れた口の端から混じり合った唾液が垂れ、それを追いかけるようにイクシオンは顎に舌を這わせている。
そして顔を上げたイクシオンは黙ってオリビアを見ていた。
「でん、か……?」
体の芯が疼き出し、その次を求めるようにオリビアは快楽に潤んだ瞳でイクシオンを見つめていた。
「愛してる」
あまりに率直で潔い愛の言葉に、ゾクリと肌が粟立つ。
「――ッ!」
至近距離で見つめる金色の瞳は熱が籠もっていた。
オリビアは瞬時に顔を深紅に染め、無意識に唾を飲み込んだ。
イクシオンはオリビアの体を力強く抱きしめたかと思うと、今度は唇を耳元に寄せて囁いている。
「城へ戻るぞ。ここで奪われたくないのならな」
「は、い。わかり、ました……」
イクシオンの温もりを全身に感じながら、さらに自分からも腕を回して抱きついて深く息を吐いた。
――結局、捕まってしまった。
逃げようと思えば逃げられたのに、自ら望んで捕まった。
きっと、結末は初めから決まっていたのだ。
目の前のこの美しい男に身も心も囚われて、自分は抜け出すこともできず、愚かに堕ちていくだけなのだと――
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