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過程
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医務室で手当てをしてもらった結果、軽い捻挫だと言われた。
湿布のような薬草と共に包帯を巻いてもらい、冷やすようにと言われて医務室をあとにした。
「殿下。手当ても終わりましたし、杖も貸していただきました」
「あぁ。軽い怪我で安心した」
「ありがとうございます。これで殿下の手を煩わせることなく、一人で歩くことができます」
「そうだな」
「……もう大丈夫ですので、降ろしていただけませんか?」
治療も終わり、歩行用に長めの杖までもらってきたのに、イクシオンはまだオリビアを抱き上げて移動している。
「お前が逃げるかもしれないからこのまま移動する」
「私が逃げるようなことをされるおつもりで?」
「逃げそうだから先手を打っている」
再びイクシオンの体に掴まっているが、できればこの場から逃げ出したかった。なぜかというと、先ほどイクシオンは一緒に湯あみをすると発言していたからだ。
おそらくこのまま浴室まで運ばれるのだろう。
「この足で逃げられると思っているのですか?」
「適当な理由を作って逃げ出しそうだからだ。お前は頭が回るから油断はできない」
「ぅっ……」
先を読まれていたことに思わず声が漏れてしまう。
たしかに隙あらば抜け出そうとしていた。
適度に重要な用事を作り、イクシオンから離れようと画策していた。
「やはりな。俺を欺こうとするとは悪い妻だ」
「まだやっていません」
「やろうとしていることが問題なんだ」
美しい顔を顰め、ムッとした顔で見られて良心が痛むが、オリビアも負けじと応戦していく。
「湯あみは一人でできますし、介助が必要ならその時だけ侍女の方に頼みます。妻としてそこまで殿下の手をお借りすることはできません」
専属侍女を付けていないオリビアは大抵のことを一人でやっている。
あと二ヶ月ほどしかいない身としては、変に情をかける人物を作りたくなかった。
「俺が直々に洗ってやることなどないんだぞ? 断るとはどういうことだ」
「光栄なことかもしれませんが、私は求めていません」
どうにか回避しようとするオリビアだが、イクシオンも中々折れてはくれなかった。
「久々に帰って妻との甘い時間を過ごそうと楽しみにしていたのに……他の男との浮気現場に遭遇し、一緒に入ろうとした湯あみまで拒絶され、俺はなんて可哀想な夫なんだっ」
「……っ」
すたすたと歩きながらわざとらしく悲しそうに話し出すイクシオンに、オリビアはわざとだとわかりながらも言葉に詰まった。
たしかに、話だけ聞いていれば自分はずいぶん冷たい妻に思える。
短く息を吐き、自分の考えを思い直してみる。
許容したわけではないが、オリビアは妥協することにした。
一緒に湯に浸かればイクシオンの機嫌も治るのだろう。
「い……一緒に、入る、だけなら……」
「クククッ、当然だろ? それ以外に何かあるのか?」
「殿下は、すぐに手を出してくるので、信用できません」
いくらイクシオンに抱かれているとはいえ、共に湯に浸かるのは激しい抵抗がある。
しかもイクシオンの言い方には性的な含みも込められていて、オリビアに強い警戒心を抱かせていた。
からかわれているのはわかっているが、ここは自己防衛のためにも言質を取っておかないといけない。
「ほう……? どんな風に?」
「っ、さ、触って、きたりとか……」
「どこを?」
楽しそうに話すイクシオンの様子に、完全にからかわれていることを悟る。
負けじとイクシオンを睨んで、応戦していく。
「~っ! とにかくっ、入るだけですから! それ以外のことはしなくて結構ですっ」
「くくくっ、お前が他の何かを望んでいるなら、夫として応えなければいけないと思ったんだが。我が妃はずいぶん照れ屋なようだ」
「ライアン卿のようなことを言わないでください……」
ポロッとこぼれた言葉をイクシオンは聞き逃さなかった。
今のイクシオンにライアンという言葉は禁句のようだった。
明らかに表情が険しく変わるが、それでも笑っているイクシオンに怖さを覚える。
「これまでライアンとどんな風に一緒にいたのか聞く必要がありそうだな。湯浴みで詳しく聞かせてもらおうか?」
「っ」
抱えられた耳元で低く囁かれる言葉に、オリビアは息を飲むことしかできなかった。
湿布のような薬草と共に包帯を巻いてもらい、冷やすようにと言われて医務室をあとにした。
「殿下。手当ても終わりましたし、杖も貸していただきました」
「あぁ。軽い怪我で安心した」
「ありがとうございます。これで殿下の手を煩わせることなく、一人で歩くことができます」
「そうだな」
「……もう大丈夫ですので、降ろしていただけませんか?」
治療も終わり、歩行用に長めの杖までもらってきたのに、イクシオンはまだオリビアを抱き上げて移動している。
「お前が逃げるかもしれないからこのまま移動する」
「私が逃げるようなことをされるおつもりで?」
「逃げそうだから先手を打っている」
再びイクシオンの体に掴まっているが、できればこの場から逃げ出したかった。なぜかというと、先ほどイクシオンは一緒に湯あみをすると発言していたからだ。
おそらくこのまま浴室まで運ばれるのだろう。
「この足で逃げられると思っているのですか?」
「適当な理由を作って逃げ出しそうだからだ。お前は頭が回るから油断はできない」
「ぅっ……」
先を読まれていたことに思わず声が漏れてしまう。
たしかに隙あらば抜け出そうとしていた。
適度に重要な用事を作り、イクシオンから離れようと画策していた。
「やはりな。俺を欺こうとするとは悪い妻だ」
「まだやっていません」
「やろうとしていることが問題なんだ」
美しい顔を顰め、ムッとした顔で見られて良心が痛むが、オリビアも負けじと応戦していく。
「湯あみは一人でできますし、介助が必要ならその時だけ侍女の方に頼みます。妻としてそこまで殿下の手をお借りすることはできません」
専属侍女を付けていないオリビアは大抵のことを一人でやっている。
あと二ヶ月ほどしかいない身としては、変に情をかける人物を作りたくなかった。
「俺が直々に洗ってやることなどないんだぞ? 断るとはどういうことだ」
「光栄なことかもしれませんが、私は求めていません」
どうにか回避しようとするオリビアだが、イクシオンも中々折れてはくれなかった。
「久々に帰って妻との甘い時間を過ごそうと楽しみにしていたのに……他の男との浮気現場に遭遇し、一緒に入ろうとした湯あみまで拒絶され、俺はなんて可哀想な夫なんだっ」
「……っ」
すたすたと歩きながらわざとらしく悲しそうに話し出すイクシオンに、オリビアはわざとだとわかりながらも言葉に詰まった。
たしかに、話だけ聞いていれば自分はずいぶん冷たい妻に思える。
短く息を吐き、自分の考えを思い直してみる。
許容したわけではないが、オリビアは妥協することにした。
一緒に湯に浸かればイクシオンの機嫌も治るのだろう。
「い……一緒に、入る、だけなら……」
「クククッ、当然だろ? それ以外に何かあるのか?」
「殿下は、すぐに手を出してくるので、信用できません」
いくらイクシオンに抱かれているとはいえ、共に湯に浸かるのは激しい抵抗がある。
しかもイクシオンの言い方には性的な含みも込められていて、オリビアに強い警戒心を抱かせていた。
からかわれているのはわかっているが、ここは自己防衛のためにも言質を取っておかないといけない。
「ほう……? どんな風に?」
「っ、さ、触って、きたりとか……」
「どこを?」
楽しそうに話すイクシオンの様子に、完全にからかわれていることを悟る。
負けじとイクシオンを睨んで、応戦していく。
「~っ! とにかくっ、入るだけですから! それ以外のことはしなくて結構ですっ」
「くくくっ、お前が他の何かを望んでいるなら、夫として応えなければいけないと思ったんだが。我が妃はずいぶん照れ屋なようだ」
「ライアン卿のようなことを言わないでください……」
ポロッとこぼれた言葉をイクシオンは聞き逃さなかった。
今のイクシオンにライアンという言葉は禁句のようだった。
明らかに表情が険しく変わるが、それでも笑っているイクシオンに怖さを覚える。
「これまでライアンとどんな風に一緒にいたのか聞く必要がありそうだな。湯浴みで詳しく聞かせてもらおうか?」
「っ」
抱えられた耳元で低く囁かれる言葉に、オリビアは息を飲むことしかできなかった。
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