【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません!〜

ウリ坊

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葛藤

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 再び馬に乗り、ライアーロードまで戻ってきた。
 運んだ大量の袋は、倉庫に保管してもらった。
 この薬は早期の服用が必須だ。
 早い段階でルードヴィッヒ三世に処方しなくてはならない。
 考えながら執務室の扉を開けると、机に向かっているイクシオンが目に入った。
 
「殿下。只今戻りました」

「あぁ、無事に戻ったか我が妃よ。見送りは済んだか?」

 この日はユニットの見送りもあり、イクシオンは城にとどまっていた。
 近頃はルードヴィッヒ三世のことでじっとしていられないのか、不安をまぎらわすように書類仕事をしている。
 
「はい。無事にユニットさんを見送ってまいりました」

 真面目に机に向かって手を動かしているが、諸手もろてを挙げて喜べないのが現状だ。
 
「それはご苦労だったな」

 顔を上げて一言話すと、また下を向いて書類と向かい合っている。
 普段からこの能力を発揮してほしいものだが、状況が状況だけに指摘することもできない。
 イクシオンの座っている机の手前まで来て足を止めた。

「殿下にお願いがございます」

「ん? お前が俺に願い事とは珍しい……なんだ?」

「――できるだけ早急に、私を王城へ連れて行ってくれませんか?」

 書類に目を通して話を聞いていたイクシオンも、手を止めてオリビアに視線を移していた。

「王城に……? 何か用か?」

「国王陛下のご容態が思わしくないことは承知の上です。しかし私は一度も見舞うことができておりません。現状、近親者のみのご拝謁はいえつということですので、是非私にも陛下を見舞う機会を与えていただきたいのです」

 実際にルードヴィッヒ三世を見舞いたい気持ちも大いにある。
 そして今の段階でルードヴィッヒ三世の病状がどの程度なのか確認もしたかった。

「この前の登城では、もう行きたくないと漏らしていなかったか?」

 机の上で手を組んでいるイクシオンが、不思議そうに疑問を投げかけてきている。

「ユニットさんのことも陛下にご報告したいですし……殿下の異母兄様おにいさまなのですから、私も義妹いもうととして直接お言葉を交わしたいです」

 真っ直ぐにイクシオンの顔を見て話すが、実際の気持ちはどっちつかずで、まだ揺れていた。
 だからこそルードヴィッヒ三世に会えば、答えが定まるかもしれないと思ったのだ。
 
「まぁ……いいだろう。明日辺り、また登城しようと思っていた。確認は取るが、お前ならば異母兄上もお許しになるだろう」

 イクシオンもオリビアの勢いに押されたのか、少し考えてから答えを返している。

「もし、直接のご拝謁が無理でしたら、殿下のお話が終わるまで別室でお待ちしております。決して無理強いはいたしませんので、よろしくお願いいたします」

「わかった。早朝に立つから早めに支度をしておけよ」

「ありがとうございます」

 承諾してもらったが、今でもまだ迷っている。
 この選択が最良なのかどうか。
 だがおそらく、ここで自分の知識を使わなければ、一生後悔するだろうと葛藤の末に何度も思った。

「あと、馬車ではなく、馬での移動になると思うが……まぁ、お前ならば問題ないだろう」

「はい。お任せください」

 この選択が吉と出るか凶と出るのか――
 オリビアには予想もできなかった。

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