【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません!〜

ウリ坊

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日常 7

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 建国祭まで一週間に迫ったある日。
 オリビアはリュビーナ国に送る支援物資加工の引き継ぎをしていた。
 表向きは担当を他の者と変わっただけに見せているが、自分がいなくなっても機能していくように秘密裏に準備を整えていた。

(これであらかた身辺整理は終わったかな? 建国祭が終われば、すぐにここを経つ予定だから、うかうかしていられない)

 眼下に流れる河川を見ていると、イクシオンと初めて会った時のことを思い出す。
 
 こうして自分を忙しく追い詰めていないと、余計なことを考えてしまいそうで怖かった。
 足元に咲いていたハレノニチ草を見つけ、しゃがんでから何本か手折って束にした。
 まだ白い花は咲いておらず、蕾が何個もついていた。
 立ち上がるとハンカチを取り出してその束を包むと、城へと戻るべく踵を返した。


 馬に乗って城の前まで戻ってくると、門の辺りから騒がしい声が聞こえてくる。

 よく見ると門兵と見たこともない女性が言い争っていた。
 馬から降りたオリビアは、手綱を引いて二人の元へと近づいた。

「どうかなさいましたか?」

「あっ! オ、オリビア様っ!」

 オリビアに気づいた門兵は、なぜかひどく動揺し慌てていた。
 同じく争っていた女性も振り返ると、派手な服装でとても美しい容姿をしていた。

「ちょっと! ここの人間は話が話が通じないのぉ?! イクシオン様を出してって言ってるのに、どうして会わせてくれないのっ!?」

 美しい容姿とは違い、口調はかなり荒く、興奮気味に話す姿にはあまり知性は感じられない。
 どう見てもイクシオンが相手をしたであろう女性だった。

「お尋ねいたしますが、殿下にはどういったご要件でしょう?」

「そんなの決まってるでしょ!? 殿下の子供がお腹の中にいるの! もう産まれそうだから、責任取って私を妻に迎えてもらわないと困るから!」

 女性は感情的になりながら腹部を押さえて話しているが、腹はまったく出ておらずとても妊婦には見えなかった。

 ズキズキと痛む頭を押さえながら、冷静に対応していく。

「左様でございましたか……取り急ぎ私が殿下に伝えてまいります」

「あら、あなたは話が通じるじゃない。私が妃になったら、側に仕えさせてあげるわ」

 オリビアの対応に気を良くしたのか、女性は急に態度を変えた。

 服は質素で、品性を感じさせることなく所々肌蹴させていた。
 パッと見た感じは貴族ではなく、下町の娼婦のような印象を受ける。

 女性は自分の意見が通ると見越したのか、上機嫌でオリビアを見くだした言い方で話していた。

「オリビア様っ! そのような者に構わずとも、自分が行ってまいりますので、オリビア様はどうか城の中へとお入りくださいっ」

 この門兵はオリビアが初めて訪れた時に話していた門兵でマルコスという。
 古株の彼はオリビアを気遣うように、この場を離れさせようとしてくれている。

「マルコスさん、そういう訳にはまいりません。殿下にとって大切なお客様かもしれないので、無下に扱うことなどできません」

「し、しかしっ……」

「失礼ですが、貴女のお名前を伺ってもよろしいですか?」

 自分の髪を指でくるくると弄っていた女性に質問を投げかけた。

「私? 私はエルダよ。イクシオン様に言えば、すぐに駆けつけてくれるからっ!」

 意気揚々と話すエルダと名乗った女性は、イクシオンが自らのために現れると思っているようだ。

 名前しか名乗らないということは、やはり貴族ではないのだろう。
 イクシオンなら身分など気にすることもなく、容姿だけで相手を選んでいるのだろう。

「わかりました。それではしばらくお待ちください」

「早くしてよね! こんな場所で待ちたくないしっ!」

 短く息を吐くと、オリビアは城の中へと入っていった。
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