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惹かれる理由 (イクシオン視点)
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「お前は一枚一枚の意見書をわざわざ覚えているのか?」
再び机に肘をついてオリビアを見上げた。
真面目で堅実な彼女は、こうした意見書を見つけてはたびたび外に出て奔走しているのだ。
「もちろんです。他の人にとってはただの一枚の紙かもしれませんが、これを出した人達にとっては切実な思いや願いが込められているのです」
確固たる意志で話す彼女からは凛とした気高さすら感じられる。
あまりにまっすぐ自分を見つめる空色の瞳に、思わず目を奪われた。
「皆さんが様々な苦労の末にこうして意見書を出してくれているのに、無視することなどできません。それを私一人が動くだけで叶えられるのであれば、動かない理由などありはしないのです」
外見の美しさ以外で女性に魅せられたのはオリビアが初めてだ。
気づいた時には平凡な見た目の彼女に自然と目がいくようになっていた。
きっぱりと言い切ったオリビアに、ロイズは盛大な拍手を送っている。
「す、素晴らしいっ!! 殿下っ、聞きましたか?! 妃殿下はとても素晴らしいお方です! こんな風に考えている領主が、果たして何人いらっしゃることでしょうか!」
感動したように瞳を潤ませ、まだ拍手を送り続けていた。
「ロ、ロイズさん、やめてください。そんな……大袈裟です」
ここまで言われると思っていなかったのか、オリビアは恥ずかしそうに首を振って否定していた。
他の人間ならば「何を綺麗事を……」と鼻で笑っていただろう。
だが普段のオリビアの行動を見ているだけに、言われた言葉の重みがよくわかる。
普通の貴族ならば一部の庶民の意見など聞くことすらしないだろう。
適材適所という言葉が相応しく、元々父親とともに昔から領地関連の仕事をしてきたオリビアだからこそ言えることだ。
そこに王弟妃という高い地位が加わることでさらなる相乗効果に繋がった。
(さも当然のようにただの仕事としてこなしているが、そこから齎される人々の名声というものをまるで考えていないんだろうな)
オリビアが妃になってからというもの、イクシオンの領地での評判も右肩上がりだ。
しかし本人はまったく意に介しておらず、それが自分に与えられた当然の義務のように日々各地を歩き回っている。
こんな調子では、ますますオリビアを手放したくなくなってしまう。
「賢妻すぎるというのも困ったものだ……」
ボソッと呟いた言葉はオリビアには届いていないのか、机の前で立ったままイクシオンの行動をジッと眺めていた。
とくに問題もなかったので言われた通りに印を押すと、オリビアは一礼してその場を去ろうとしていた。
「ありがとうございます。では、私はこれで失礼いたします」
「今から向かうのか?」
「えぇ、早いに越したことはありません。何か問題でも?」
イクシオンが声をかけると、オリビアは振り返りながら返事を返す。
「いや……そうだな。俺も一緒に行こう」
「――は? 殿下が、ですか……?」
大事そうに書類を抱えたまま驚いたように立ち上がったイクシオンの顔を凝視している。
「王弟である俺が直々に出向くことなど滅多にないのだから、一緒に向かったほうがより説得力が出るだろう」
話しながらゆっくり歩いて近づき、見上げているオリビアを笑顔で見下ろした。
するとオリビアは眉間に皺を寄せ、思い切り嫌そうな顔をしている。
その顔を見たイクシオンは密かにほくそ笑んだ。
再び机に肘をついてオリビアを見上げた。
真面目で堅実な彼女は、こうした意見書を見つけてはたびたび外に出て奔走しているのだ。
「もちろんです。他の人にとってはただの一枚の紙かもしれませんが、これを出した人達にとっては切実な思いや願いが込められているのです」
確固たる意志で話す彼女からは凛とした気高さすら感じられる。
あまりにまっすぐ自分を見つめる空色の瞳に、思わず目を奪われた。
「皆さんが様々な苦労の末にこうして意見書を出してくれているのに、無視することなどできません。それを私一人が動くだけで叶えられるのであれば、動かない理由などありはしないのです」
外見の美しさ以外で女性に魅せられたのはオリビアが初めてだ。
気づいた時には平凡な見た目の彼女に自然と目がいくようになっていた。
きっぱりと言い切ったオリビアに、ロイズは盛大な拍手を送っている。
「す、素晴らしいっ!! 殿下っ、聞きましたか?! 妃殿下はとても素晴らしいお方です! こんな風に考えている領主が、果たして何人いらっしゃることでしょうか!」
感動したように瞳を潤ませ、まだ拍手を送り続けていた。
「ロ、ロイズさん、やめてください。そんな……大袈裟です」
ここまで言われると思っていなかったのか、オリビアは恥ずかしそうに首を振って否定していた。
他の人間ならば「何を綺麗事を……」と鼻で笑っていただろう。
だが普段のオリビアの行動を見ているだけに、言われた言葉の重みがよくわかる。
普通の貴族ならば一部の庶民の意見など聞くことすらしないだろう。
適材適所という言葉が相応しく、元々父親とともに昔から領地関連の仕事をしてきたオリビアだからこそ言えることだ。
そこに王弟妃という高い地位が加わることでさらなる相乗効果に繋がった。
(さも当然のようにただの仕事としてこなしているが、そこから齎される人々の名声というものをまるで考えていないんだろうな)
オリビアが妃になってからというもの、イクシオンの領地での評判も右肩上がりだ。
しかし本人はまったく意に介しておらず、それが自分に与えられた当然の義務のように日々各地を歩き回っている。
こんな調子では、ますますオリビアを手放したくなくなってしまう。
「賢妻すぎるというのも困ったものだ……」
ボソッと呟いた言葉はオリビアには届いていないのか、机の前で立ったままイクシオンの行動をジッと眺めていた。
とくに問題もなかったので言われた通りに印を押すと、オリビアは一礼してその場を去ろうとしていた。
「ありがとうございます。では、私はこれで失礼いたします」
「今から向かうのか?」
「えぇ、早いに越したことはありません。何か問題でも?」
イクシオンが声をかけると、オリビアは振り返りながら返事を返す。
「いや……そうだな。俺も一緒に行こう」
「――は? 殿下が、ですか……?」
大事そうに書類を抱えたまま驚いたように立ち上がったイクシオンの顔を凝視している。
「王弟である俺が直々に出向くことなど滅多にないのだから、一緒に向かったほうがより説得力が出るだろう」
話しながらゆっくり歩いて近づき、見上げているオリビアを笑顔で見下ろした。
するとオリビアは眉間に皺を寄せ、思い切り嫌そうな顔をしている。
その顔を見たイクシオンは密かにほくそ笑んだ。
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