43 / 58
配送履歴#6 配達物『兵隊』
第37話 移動式兎カフェ
しおりを挟む
翌朝。
あてがわれた部屋で一晩宿泊し、ゆっくりと休んでいたユウヒ。
この日は彼女にしては珍しく早めに起床した。
前日就寝前にメイドから、朝には出立することと準備が整ったら呼びにくることを聞いているためである。
邸宅内では朝から騒がしい雰囲気だ。
ユウヒが休んでいる部屋の前を、準備に追われる人たちが慌ただしく行き来して物々しい。
朝食としてあてがわれたパンと野菜を齧りながら、兎にも野菜をあげて呼ばれるのを待っているとメイドがドアのノックをして迎えにきた。
ユウヒは邸宅内広場に向かうように言われ、兎を鞄にしまってメイドについていく。
邸宅内の広場に到着すると、三十名程の兵士が集まっていた。
この街は山や森林に近く、魔物調査や討伐も頻度高く行われる。
そして、ここにいる兵士たちは森林内任務に繰り返し当たっている、いわばスペシャリスト集団だ。
革鎧など動きやすさを重視した装備の兵士たちが、落ち着いた雰囲気で準備の最終確認にあたっていた。
広場中央に近いところに領主が椅子に座って年配の兵士と何やら話をしている。
メイドはその近くにある椅子にユウヒを誘導し、座って待つように伝えた。
言われた通り、ちょこんとユウヒはその椅子に座って、何が始まるのかと広場を見守ることにする。
物資などが一通り運び込まれ、馬車に馬が繋がれて出発の準備が整い、兵士たちがあちこちで準備完了、と点呼確認をする。
全ての確認が終えた兵士が、領主の側にいる年配の兵士に報告に向かった。
「準備完了しました、隊長」
「ご苦労。では、任務について説明する。一同傾注!」
あの人隊長だったんだ、と一人思うユウヒをよそに、隊長が言葉を発した。
「最近、山賊行為を働いている輩がいることは諸君らも聞いていると思う。とっとと片づけてしまうぞ」
同意する掛け声が兵士達から上がる。
隊長はニヤッと笑うと続けた。
「今回の任務は領主様も同行される。うまくいったら恩賞は期待して良いからな」
一斉に目線が領主に向くと、領主は軽く手をあげて隊長の発言を保証した。
その様子を見て今度は歓声をあげる兵士達。
隊長は士気の高まりと準備完了を見てとると、出発の合図を出す。
「山の麓までは予定通り馬車で行く。では出発」
兵士たちは各々馬車に散らばっていった。
その様子を見つつ、隊長は領主を馬車に案内する。
「それでは出発します。領主様は真ん中の馬車に乗ってください」
「わかった」
五台あるうちの真ん中、少しだけしっかりした作りになっている馬車に領主が乗り込んだ。
隊長は、領主が馬車に乗り込むのを確認すると今度はユウヒに声をかけた。
「運び屋は私と共に先頭の馬車にのってくれ。道案内を頼む」
「あの、ボクも馬車ですか? ヒポでいけますけど」
「カバはやめてくれるか? 周りがついていけん。それに後ほど山で召喚士の力を借りるかもしれんからな」
「わかりました、じゃあ馬車に乗せてもらいますね」
ユウヒが答えると、先頭の馬車に向かい、隊長と一緒に先頭の馬車に乗り込んだ。
続けて一緒の馬車に乗る兵士たちが乗り込んでくる。
兵士たちは一瞬ユウヒの方を見るが、すぐに雑談を始めた。
実は兵士たちは事前に少女の運び屋が同乗することを知っており、気をつかってあえて構わずにいたのであった。
そんなことは知らないユウヒが馬車の室内で兵士達に囲まれて、なんとなく気まずい思いをしていると、鞄からひょこっと兎が顔を出す。
「兎?」
「兎だな」
「ダメだよ、アリス」
兵士たちが兎を見て、兎という言葉を発する。
その度に兵士たちの言葉に反応して愛想を振りまく兎。
慌ててユウヒは鞄の中にしまおうとするが、兵士の一人がそれを止めた。
「運び屋さんよ」
「は、はい」
「兎、撫でてもいいか?」
「え?」
しかめっ面した兵士から真剣な表情で言われ、言葉に詰まるユウヒ。
その様子を見て、他の兵士がツッコミを入れる。
「お前みたいな顔が怖い奴はダメだとよ」
「いや、大丈夫、大丈夫だよ。はい、どうぞ」
頼んできた兵士に兎を取り出して手渡すユウヒ。
「おお、人に慣れてるんだな。大人しいもんだ」
「あ、お前だけずるいぞ。次は俺もいいか?運び屋」
「はい、どうぞ」
気づけばいい歳した兵士達の移動式兎カフェの開店である。
代わる代わるになでて、満足そうな顔をしている兵士たち。
隊長以外の兵士たちが一通りなでて、兵士も兎も満足そうにしているのを見たユウヒ。
カバンに兎をしまおうとすると隊長からも声がかかった。
「あー、運び屋」
「はい?」
「すまんが、次は私の番じゃないかな」
「隊長さんも!?」
結局隊長も撫でた後、再び兵士たちが再度要求。
二周撫で回したところで御者の方から声がかかった。
あてがわれた部屋で一晩宿泊し、ゆっくりと休んでいたユウヒ。
この日は彼女にしては珍しく早めに起床した。
前日就寝前にメイドから、朝には出立することと準備が整ったら呼びにくることを聞いているためである。
邸宅内では朝から騒がしい雰囲気だ。
ユウヒが休んでいる部屋の前を、準備に追われる人たちが慌ただしく行き来して物々しい。
朝食としてあてがわれたパンと野菜を齧りながら、兎にも野菜をあげて呼ばれるのを待っているとメイドがドアのノックをして迎えにきた。
ユウヒは邸宅内広場に向かうように言われ、兎を鞄にしまってメイドについていく。
邸宅内の広場に到着すると、三十名程の兵士が集まっていた。
この街は山や森林に近く、魔物調査や討伐も頻度高く行われる。
そして、ここにいる兵士たちは森林内任務に繰り返し当たっている、いわばスペシャリスト集団だ。
革鎧など動きやすさを重視した装備の兵士たちが、落ち着いた雰囲気で準備の最終確認にあたっていた。
広場中央に近いところに領主が椅子に座って年配の兵士と何やら話をしている。
メイドはその近くにある椅子にユウヒを誘導し、座って待つように伝えた。
言われた通り、ちょこんとユウヒはその椅子に座って、何が始まるのかと広場を見守ることにする。
物資などが一通り運び込まれ、馬車に馬が繋がれて出発の準備が整い、兵士たちがあちこちで準備完了、と点呼確認をする。
全ての確認が終えた兵士が、領主の側にいる年配の兵士に報告に向かった。
「準備完了しました、隊長」
「ご苦労。では、任務について説明する。一同傾注!」
あの人隊長だったんだ、と一人思うユウヒをよそに、隊長が言葉を発した。
「最近、山賊行為を働いている輩がいることは諸君らも聞いていると思う。とっとと片づけてしまうぞ」
同意する掛け声が兵士達から上がる。
隊長はニヤッと笑うと続けた。
「今回の任務は領主様も同行される。うまくいったら恩賞は期待して良いからな」
一斉に目線が領主に向くと、領主は軽く手をあげて隊長の発言を保証した。
その様子を見て今度は歓声をあげる兵士達。
隊長は士気の高まりと準備完了を見てとると、出発の合図を出す。
「山の麓までは予定通り馬車で行く。では出発」
兵士たちは各々馬車に散らばっていった。
その様子を見つつ、隊長は領主を馬車に案内する。
「それでは出発します。領主様は真ん中の馬車に乗ってください」
「わかった」
五台あるうちの真ん中、少しだけしっかりした作りになっている馬車に領主が乗り込んだ。
隊長は、領主が馬車に乗り込むのを確認すると今度はユウヒに声をかけた。
「運び屋は私と共に先頭の馬車にのってくれ。道案内を頼む」
「あの、ボクも馬車ですか? ヒポでいけますけど」
「カバはやめてくれるか? 周りがついていけん。それに後ほど山で召喚士の力を借りるかもしれんからな」
「わかりました、じゃあ馬車に乗せてもらいますね」
ユウヒが答えると、先頭の馬車に向かい、隊長と一緒に先頭の馬車に乗り込んだ。
続けて一緒の馬車に乗る兵士たちが乗り込んでくる。
兵士たちは一瞬ユウヒの方を見るが、すぐに雑談を始めた。
実は兵士たちは事前に少女の運び屋が同乗することを知っており、気をつかってあえて構わずにいたのであった。
そんなことは知らないユウヒが馬車の室内で兵士達に囲まれて、なんとなく気まずい思いをしていると、鞄からひょこっと兎が顔を出す。
「兎?」
「兎だな」
「ダメだよ、アリス」
兵士たちが兎を見て、兎という言葉を発する。
その度に兵士たちの言葉に反応して愛想を振りまく兎。
慌ててユウヒは鞄の中にしまおうとするが、兵士の一人がそれを止めた。
「運び屋さんよ」
「は、はい」
「兎、撫でてもいいか?」
「え?」
しかめっ面した兵士から真剣な表情で言われ、言葉に詰まるユウヒ。
その様子を見て、他の兵士がツッコミを入れる。
「お前みたいな顔が怖い奴はダメだとよ」
「いや、大丈夫、大丈夫だよ。はい、どうぞ」
頼んできた兵士に兎を取り出して手渡すユウヒ。
「おお、人に慣れてるんだな。大人しいもんだ」
「あ、お前だけずるいぞ。次は俺もいいか?運び屋」
「はい、どうぞ」
気づけばいい歳した兵士達の移動式兎カフェの開店である。
代わる代わるになでて、満足そうな顔をしている兵士たち。
隊長以外の兵士たちが一通りなでて、兵士も兎も満足そうにしているのを見たユウヒ。
カバンに兎をしまおうとすると隊長からも声がかかった。
「あー、運び屋」
「はい?」
「すまんが、次は私の番じゃないかな」
「隊長さんも!?」
結局隊長も撫でた後、再び兵士たちが再度要求。
二周撫で回したところで御者の方から声がかかった。
75
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる