令嬢に転生したけど婚約破棄されたので侍女として成り上がります。

北南東西

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「ダブチポルカ入りまーす!」
「「「はーいっ!」」」

 私の名前は天野舞。近所のハンバーガーショップで働くしがないフリーターだ。
美容系の専門学校を卒業したものの就職に失敗し、彼氏いない歴=年齢の私だが、今の気のままの生活は案外楽しかったりもする。
 シフトの時間を終えて更衣室で着替えていると、パートの奥田さんが入ってきて一言。

「ちょっと天野さん?一人で場所を占領しないでくれる?邪魔なんだけど。」
「あ、すみません。」

どうやら彼女には私が更衣室を一人で占領してるかのように見えたそうだ。

「少しは周りの人のことも考えてくれない?だから就職にも失敗するんでしょ。」
「ははっ。そうかもしれませんね。」

そうかもしれないが、そんなに棘のある言葉で言わなくてもいいのに。そう思うのはきっと私だけじゃないはず。

「はぁ~~…これでもう少し職場の雰囲気がよければなぁ…」
「あっ、マイちゃんお疲れ様。」

更衣室を出ると先輩のカコさんと鉢合わせる。どうやら彼女もシフトが終わりこれから着替えのようだ。

「カコさん!お疲れ様です!」
「どうしたの~?溜息なんてしちゃって、浮気でもされた?」
「も~からかわないでくださいよカコさん!私に彼氏が出来たことないの知ってる癖にっ!」
「アハハッ!ごめんごめん!」

同性で歳が近いことも相まって、この先輩との軽口を交わすのは私が気に入っている日課だったりもする。

「お詫びにご飯食べに行かない?奢ってあげるから。」
「行きましょう!」

奢りなら行くしかない。
店を出ると雨がポツリ、ポツリと降っていた。
「あちゃー、降ってきちゃったかー。しょうがない、近くのファミレスまで小走りで行くか。それでOK?」
「今日スニーカーなんでどんとこいです!」
「それじゃ行こっか。」

私達は徐々に強まる小雨の中、ファミレスに小走りで向かった。ファミレスの前には大きな交差点があり私達が進む方向の信号は赤だったので止まっていると、カコさんが異変に気づく。

「あれちょっとやばくない?」

そう言われてカコさんが向いてると小学生くらいの男の子と自転車が倒れているのが目に入る。

「あっほんt」

、と言う前にカコさんが私の前を駆け抜けていた。それと同時に、スピードを落とさずに交差点にスピードを落とさず侵入するワゴンが一台。


私も走った。


カコさんが男の子を引っ張ろうとするが、中々進まない、意を決して私は2人に全体重を乗せて突っ込んだ。


目の前には車のナンバープレートが見えた。


体のあちこちがまるで燃えるような衝撃を受けたことを感じているとカコさんの絶叫が聞こえたが、何を言っているかはうまく聞き取れない。
でもよかった、どうやら2人は無事のようだ。
希望ある男の子を死なせるわけにはいかないし、大事な友人をこんな目に合わせるのは私の心が傷む。
それに知ってたよカコさん。
貴方は隠してるみたいだったけど、とても仲の良いお相手がいることを。それを私に自慢せず気の良い先輩をずっと演じてくれてたことも。
だから私で本当によかった。叶うことなら彼女が一番幸せな瞬間も見てみたかったな…









「………………ぃ…………」



「ぉ…………さぃ…………!」



「起きてください!シェルエッタお嬢様!」
!?!?!?!?

「もう!お嬢様ったらこんなところで寝てしまっては風邪を引いてしまいますよ。」

はへ?

私の目の前になんとも可愛らしい赤毛のメイドさんが眉間に皺寄せながら、私の顔を覗き込んでいた。

「婚約の儀にお嬢様が遅れてしまったら、私が怒られるんですからね!」

まだ幼さが残る赤毛のメイドさんを目の端に捉えながら、あたりを見渡すといかにも中世ヨーロッパ風の屋敷や畑が目に入ってきた。
全く身に覚えのない風景から、寝ぼけた頭を回転して出した結論は一つ。

「これが異世界転生ってやつか。」

この言葉が私の生まれ変わって発するはじめての言葉となった。

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