無力

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第1章

有名

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 龍馬は高校に入学して三週間が経っていた。今まで高校に慣れるための短縮授業や部活動の仮入部などがあり、今日からどの部活動も本格的に活動を始める。
 龍馬の通う学校は名門私立の「日白学園」だ。
部活動では全国大会に出場する部が多く、勉強では東大合格を毎年10人以上輩出するほどの超名門校だ。
 龍馬はもちろんサッカー部に入部した。
今日は自己紹介を兼ねたミーティングだけの予定だ。
部員は全員、監督が担任をもつ3-3の教室に集められすでに二、三年生は席に座り一年生は教室の後ろで立たされている状態だ。
龍馬は先輩後輩の上下関係が大嫌いではやくもイライラしていた。
5分ほどすると、ガラッと前のドアが開き背は高いがビール腹の中年の男がやってきた。その後に続いて、三人のコーチ陣も入ってきた。三人とも体型は現役のプロサッカー選手のようだった。
さっきまでざわめいていた教室もいっきに何か冷たい空気が張り詰めた。
サッカー部とはどこもこうなのだろうか。
緊張でガチガチの一年生はさらにガチガチになり微動だにしなかった。
しかし、一人だけ顔色一つ変えず自然体であくびをする余裕まである人物がいた。「龍馬」だ。あくびをしたときは流石に監督ににらまれた。
 三人のコーチ陣が椅子に座り、監督が教壇の上に立つと自己紹介が始まった。
「監督の中井だ。これからよろしく。」と無愛想に短く挨拶を済ませた。
コーチ陣の自己紹介も続いた。
スタッフの自己紹介が終わると次にキャプテンと副キャプテンの自己紹介が始まった。
「キャプテンの日向です。これから、一緒に頑張りましょう。」
と日向の短く生真面目な挨拶が終わった。
新入部員の一年生は目をキラキラしながらその挨拶を聞いていた。なぜなら、日白学園は全国高校サッカー選手権のベスト4常連校で日向は一年生の頃からセンターバックとして出場していたからだ。
龍馬も日向のことは知っていた。
「みんなこいつに見惚れてるね?俺も結構有名人なんだけどな~。まっ!困ったことがあったら俺に相談してね!よろしく!」
と明るく挨拶をしたのは副キャプテンの河野だ。彼もまた一年生からメンバーしている好プレイヤーだ。
しかし、すこしおっちょこちょいな部分がある。その証拠に自己紹介なのに名前を言い忘れている。一年生はそれに気づき笑いを堪えるのに必死だ。
本人は未だに気づいていない。
 二人の挨拶も終わるといよいよ新入部員の自己紹介だ。
監督が「左から順番に。」と指示を出すと順々に自分の名前、出身中学、希望ポジションを言っていった。
一番右に立っていた龍馬は最後の自己紹介となった。
「林北中学出身。三田村龍馬です。希望ポジションはボランチです。よろしくお願いします。」
と自己紹介を済ませると一礼をした。聞かれたことしか答えていないが他の一年生よりも自信満々で覇気があった。
席に座る二、三年生はコソコソと噂話を始めた。その内容は龍馬の中学時代だ。
龍馬は有名なクラブチームに所属していて全国大会制覇も果たしていたのでサッカーをやっている同年代なかではとても有名だ。
 全員の自己紹介が終わり、なんとなくお開きな雰囲気が出ていると監督が口を開いた。
「今からスパイクに履き替えて10分後にグラウンドに集合。早速ミニゲームを行い新入部員の実力を見る。」
ミーティングのみの予定だったが。監督の気まぐれでボールを蹴ることになった。まぁ、監督の気まぐれはよくあることだ。
 最後に日向を中心に礼を済ませると部員全員が教室を出て颯爽とグラウンドに向かった。
このとき龍馬は自信に満ち溢れていた。
 こうして三田村龍馬の高校サッカーの幕は開けた。
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