僕の初恋を返せ

鹿音二号

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2−11.1※

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準備が必要だというのは、あとから調べて分かったことだった。
ついでに、あのあとの薬の副作用以外の不調の理由も知って、その場でひっくり返りそうになった。

王太子の部屋は細かく内部屋が分かれていて、執務室に休憩室に寝室、クローゼット、使用人部屋があった。使用人部屋は普段は使っていなかったが、たまに夜通しの作業のさい、仮眠室として使っていた。デイルも何度か使わせて頂いた。
そして、浴室。浴室と言っても、湯を持ってきてもらい大きな桶に貯めるだけだが、誰にも見られず床は濡れて大丈夫というだけで気が楽になるのは、デイルが下っ端気質だからだろうか。
グレオルに張られたばかりの温かい湯を使ってもらい、後にデイルが覚えたばかりの準備をする……ものすごく、恥ずかしかった。

バスローブを身に着け、気合を入れて寝室に続く扉を開けた。
ベッドに腰掛けていたグレオルが、弾かれたように立ち上がった。

「デイル」
「は、はい」

びくっとしたのは、たんに勢いがよくて驚いたからだ。それを、何を勘違いしたのかグレオルはうなだれて顔を片手で覆う。

「……すまん、気が急いで……」
「え、あ、大丈夫です……」

これはだいぶ神経質になっているなとデイルはむずむずとする。
仕方がないので、ベッドにさっさと近寄った。

「グレオル様」

顔から手を外すように引っ張って、かわりに自分の顔を近づけた。まだ、自分から口づけるにはかなりの勇気がいる。それを分かってくれているのか、デイルが戸惑った瞬間にキスをくれた。
キスは、たぶん好きだ。
口の中をくすぐられて、啜られる。熱い息が離れるのも惜しいと口や鼻にかかる。
頭がぼうっとして、体に力が入らなくなりそうだ。

「んっ……う、むっ」
「……ん、ふ、ぅ……っ」

グレオルのバスローブの袖を引っ張ると、またぬるっと喉の近くまで分厚い舌が戻ってきて焦った。何度か手前と喉の近くまで行き来して、それから離れた。
こちらは息もできないのに、すぐさま余裕そうに顎や首筋に唇を触れさせてくる彼に、呆れるやらびっくりするやら。

「ん、っ、グレオ、ル様……っ」
「……ん、」

そっと、デイルの腰にたくましい腕が回りゆっくりと後ろに押される。
すとん、と腰掛けた先はベッドで、グレオルは並んで座り、ぴったり体をくっつけて何度も首や頬に唇で触れられた。

「ん、デイル、……1回だけ、それ以上はしないから」
「え、……っ、1回ですか?」
「1回だ……それ以上は、また俺は、何をしでかすか……ああ、1回の意味は分かるか」

ふと顔を上げて聞いてくるので、真顔になってしまった。

「そこまで無知じゃ……僕、男ですよ?一応成人してる年齢ですけど。経験もないわけがないですし」
「は、」

グレオルは固まった。
なぜかビックリしたような顔が、面白くない。

「えっと、貴方の中の僕って、どうなってるんですか?こども?」
「……あ、女性か」
「……?あっ!当たり前ですよ!あんなことされたの殿下が初めてです!」

そもそも多分、本当はデイルは女の子が好きだ。恋はしたことがなかったが、困らないようにと教育されていたし、実際一度必要になった。嫌悪も違和感もなかったとだけは言える。
それをねじ曲げたのがこの初恋のお方である。

「本当に、いつか言われましたけど、僕はそんなに純粋じゃないですよ?間諜ですよ……言えないことも、たくさんしています」
「そう、だな……安心して良いのか嫉妬すべきか……分からんな」
「何の話ですか?」

たまに、王太子の考えていることが分からない。
いつもは単純なのに、変なところで変な横道にそれる気がする。それがやらかしの原因なんだろう。
はあああ、と大きなため息をついたグレオルは、デイルを抱き締めた。

「ともかく、嫌なことがあったり痛かったりしたら言ってくれ。無理を……するものじゃない。俺が言っても……信用できないだろうが」
「まあ、そうですね」
「うぐ、……こ、今回は、今は……」

すり、と耳のあたりに顔を押し付けられ、くすぐったい。

「……あのとき、出来なかった分、優しくしたい」
「……お願いします」

期待半分、不安半分。
けれど、進むと決めたのはデイルだ。
そっと、グレオルの大きな手が袂に入ってきた。すりすりと胸や腹をさすられ、首や肩口には口づけられる。
触れられたところが熱くて、むずむずする。
思わず身を捩ると、吐息だけで笑われて、鎖骨のあたりを強く吸われた。

「んっ……」
「は、デイル……」

低く、ゆるりと名前を呼ばれ、耳が溶けるかと思った。
ゆっくりと、後ろへと、押し倒される。
何も強引なことはなかった。
なのに、天井と見上げた王太子のうっすらとした笑みを見たら……自分でも気づかないうちに震えていたらしい。

「デイル……怖いか」

心配そうにグレオルがデイルの手を取る。
覆いかぶさられただけで、この反応か。
先が思いやられるな、と1度目を閉じて深呼吸する。

「大丈夫です……」

ダーニャは助かった。この人に助けられた。
ちゃんと自分を見て、言葉をくれる人がいる。
自分から望んでここに来た。
目を開いて、痛ましげな顔の美しい人へ、抱きついた。

「続けてください」
「……デイル、愛している」

耳に直接吹き込まれる低く柔らかな声に、つきんと背筋が疼く。
バスローブを袂から開かれる。デイルもグレオルの襟に手をかけたら、ふっと嬉しそうに黒い目が笑った。
グレオルがデイルのローブを脱がしている間も、黒い頭が忙しなく上半身を行き来して、つんつんと首や胸のあたりに痛みが走る。それらはじん、とちいさく体の内側に響いて、背中がゾワゾワする。

「殿下……、ぅ、っ、ふ」
「ん……?」
「そ、んな、ていねいに、しなくても、僕、」
「俺がしたいだけだ」

ちゅ、と音を立てて胸を吸われて、上目遣いにされる。
色っぽくて、かっこいい。
グレオルのローブを、彼の体の線を手のひらでなぞりながら剥ぐ。
熱い肌。滑らかに動く筋肉のかたちを覚えて、うっとりしてしまった。
大きい背中だ、両手で探っていると、うう、と低く唸る声が聞こえて、足の内側からぐいと開かれた。グレオルの腰が、デイルの足の間に入っていた。

「あ、あっ!?」
「い、1回……いっかい」

ぶつぶつと聞こえる呪文のような単語に目を白黒させていると、太ももの付け根にこつんと固いものが当たった。ゆっくりと付け根を固いものになぞられて、ぶるりとデイルは震えた。

「グレオル、様……」
「だいじょうぶだ……大丈夫」

低い声が、やはり呪文のようだ。
グレオルが体を起こし、乱暴にばさりとローブを腕から引き抜いた。顔は強張って、するどい目がデイルを見下ろす。

「大丈夫だ、ひどいことは絶対にしない」
「……っ」

はい、とうなずくのがせいいっぱいだった。


X◆X◆X◆X◆X

しばらくR18続きます
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