34 / 44
2−11.1※
しおりを挟む
準備が必要だというのは、あとから調べて分かったことだった。
ついでに、あのあとの薬の副作用以外の不調の理由も知って、その場でひっくり返りそうになった。
王太子の部屋は細かく内部屋が分かれていて、執務室に休憩室に寝室、クローゼット、使用人部屋があった。使用人部屋は普段は使っていなかったが、たまに夜通しの作業のさい、仮眠室として使っていた。デイルも何度か使わせて頂いた。
そして、浴室。浴室と言っても、湯を持ってきてもらい大きな桶に貯めるだけだが、誰にも見られず床は濡れて大丈夫というだけで気が楽になるのは、デイルが下っ端気質だからだろうか。
グレオルに張られたばかりの温かい湯を使ってもらい、後にデイルが覚えたばかりの準備をする……ものすごく、恥ずかしかった。
バスローブを身に着け、気合を入れて寝室に続く扉を開けた。
ベッドに腰掛けていたグレオルが、弾かれたように立ち上がった。
「デイル」
「は、はい」
びくっとしたのは、たんに勢いがよくて驚いたからだ。それを、何を勘違いしたのかグレオルはうなだれて顔を片手で覆う。
「……すまん、気が急いで……」
「え、あ、大丈夫です……」
これはだいぶ神経質になっているなとデイルはむずむずとする。
仕方がないので、ベッドにさっさと近寄った。
「グレオル様」
顔から手を外すように引っ張って、かわりに自分の顔を近づけた。まだ、自分から口づけるにはかなりの勇気がいる。それを分かってくれているのか、デイルが戸惑った瞬間にキスをくれた。
キスは、たぶん好きだ。
口の中をくすぐられて、啜られる。熱い息が離れるのも惜しいと口や鼻にかかる。
頭がぼうっとして、体に力が入らなくなりそうだ。
「んっ……う、むっ」
「……ん、ふ、ぅ……っ」
グレオルのバスローブの袖を引っ張ると、またぬるっと喉の近くまで分厚い舌が戻ってきて焦った。何度か手前と喉の近くまで行き来して、それから離れた。
こちらは息もできないのに、すぐさま余裕そうに顎や首筋に唇を触れさせてくる彼に、呆れるやらびっくりするやら。
「ん、っ、グレオ、ル様……っ」
「……ん、」
そっと、デイルの腰にたくましい腕が回りゆっくりと後ろに押される。
すとん、と腰掛けた先はベッドで、グレオルは並んで座り、ぴったり体をくっつけて何度も首や頬に唇で触れられた。
「ん、デイル、……1回だけ、それ以上はしないから」
「え、……っ、1回ですか?」
「1回だ……それ以上は、また俺は、何をしでかすか……ああ、1回の意味は分かるか」
ふと顔を上げて聞いてくるので、真顔になってしまった。
「そこまで無知じゃ……僕、男ですよ?一応成人してる年齢ですけど。経験もないわけがないですし」
「は、」
グレオルは固まった。
なぜかビックリしたような顔が、面白くない。
「えっと、貴方の中の僕って、どうなってるんですか?こども?」
「……あ、女性か」
「……?あっ!当たり前ですよ!あんなことされたの殿下が初めてです!」
そもそも多分、本当はデイルは女の子が好きだ。恋はしたことがなかったが、困らないようにと教育されていたし、実際一度必要になった。嫌悪も違和感もなかったとだけは言える。
それをねじ曲げたのがこの初恋のお方である。
「本当に、いつか言われましたけど、僕はそんなに純粋じゃないですよ?間諜ですよ……言えないことも、たくさんしています」
「そう、だな……安心して良いのか嫉妬すべきか……分からんな」
「何の話ですか?」
たまに、王太子の考えていることが分からない。
いつもは単純なのに、変なところで変な横道にそれる気がする。それがやらかしの原因なんだろう。
はあああ、と大きなため息をついたグレオルは、デイルを抱き締めた。
「ともかく、嫌なことがあったり痛かったりしたら言ってくれ。無理を……するものじゃない。俺が言っても……信用できないだろうが」
「まあ、そうですね」
「うぐ、……こ、今回は、今は……」
すり、と耳のあたりに顔を押し付けられ、くすぐったい。
「……あのとき、出来なかった分、優しくしたい」
「……お願いします」
期待半分、不安半分。
けれど、進むと決めたのはデイルだ。
そっと、グレオルの大きな手が袂に入ってきた。すりすりと胸や腹をさすられ、首や肩口には口づけられる。
触れられたところが熱くて、むずむずする。
思わず身を捩ると、吐息だけで笑われて、鎖骨のあたりを強く吸われた。
「んっ……」
「は、デイル……」
低く、ゆるりと名前を呼ばれ、耳が溶けるかと思った。
ゆっくりと、後ろへと、押し倒される。
何も強引なことはなかった。
なのに、天井と見上げた王太子のうっすらとした笑みを見たら……自分でも気づかないうちに震えていたらしい。
「デイル……怖いか」
心配そうにグレオルがデイルの手を取る。
覆いかぶさられただけで、この反応か。
先が思いやられるな、と1度目を閉じて深呼吸する。
「大丈夫です……」
ダーニャは助かった。この人に助けられた。
ちゃんと自分を見て、言葉をくれる人がいる。
自分から望んでここに来た。
目を開いて、痛ましげな顔の美しい人へ、抱きついた。
「続けてください」
「……デイル、愛している」
耳に直接吹き込まれる低く柔らかな声に、つきんと背筋が疼く。
バスローブを袂から開かれる。デイルもグレオルの襟に手をかけたら、ふっと嬉しそうに黒い目が笑った。
グレオルがデイルのローブを脱がしている間も、黒い頭が忙しなく上半身を行き来して、つんつんと首や胸のあたりに痛みが走る。それらはじん、とちいさく体の内側に響いて、背中がゾワゾワする。
「殿下……、ぅ、っ、ふ」
「ん……?」
「そ、んな、ていねいに、しなくても、僕、」
「俺がしたいだけだ」
ちゅ、と音を立てて胸を吸われて、上目遣いにされる。
色っぽくて、かっこいい。
グレオルのローブを、彼の体の線を手のひらでなぞりながら剥ぐ。
熱い肌。滑らかに動く筋肉のかたちを覚えて、うっとりしてしまった。
大きい背中だ、両手で探っていると、うう、と低く唸る声が聞こえて、足の内側からぐいと開かれた。グレオルの腰が、デイルの足の間に入っていた。
「あ、あっ!?」
「い、1回……いっかい」
ぶつぶつと聞こえる呪文のような単語に目を白黒させていると、太ももの付け根にこつんと固いものが当たった。ゆっくりと付け根を固いものになぞられて、ぶるりとデイルは震えた。
「グレオル、様……」
「だいじょうぶだ……大丈夫」
低い声が、やはり呪文のようだ。
グレオルが体を起こし、乱暴にばさりとローブを腕から引き抜いた。顔は強張って、するどい目がデイルを見下ろす。
「大丈夫だ、ひどいことは絶対にしない」
「……っ」
はい、とうなずくのがせいいっぱいだった。
X◆X◆X◆X◆X
しばらくR18続きます
ついでに、あのあとの薬の副作用以外の不調の理由も知って、その場でひっくり返りそうになった。
王太子の部屋は細かく内部屋が分かれていて、執務室に休憩室に寝室、クローゼット、使用人部屋があった。使用人部屋は普段は使っていなかったが、たまに夜通しの作業のさい、仮眠室として使っていた。デイルも何度か使わせて頂いた。
そして、浴室。浴室と言っても、湯を持ってきてもらい大きな桶に貯めるだけだが、誰にも見られず床は濡れて大丈夫というだけで気が楽になるのは、デイルが下っ端気質だからだろうか。
グレオルに張られたばかりの温かい湯を使ってもらい、後にデイルが覚えたばかりの準備をする……ものすごく、恥ずかしかった。
バスローブを身に着け、気合を入れて寝室に続く扉を開けた。
ベッドに腰掛けていたグレオルが、弾かれたように立ち上がった。
「デイル」
「は、はい」
びくっとしたのは、たんに勢いがよくて驚いたからだ。それを、何を勘違いしたのかグレオルはうなだれて顔を片手で覆う。
「……すまん、気が急いで……」
「え、あ、大丈夫です……」
これはだいぶ神経質になっているなとデイルはむずむずとする。
仕方がないので、ベッドにさっさと近寄った。
「グレオル様」
顔から手を外すように引っ張って、かわりに自分の顔を近づけた。まだ、自分から口づけるにはかなりの勇気がいる。それを分かってくれているのか、デイルが戸惑った瞬間にキスをくれた。
キスは、たぶん好きだ。
口の中をくすぐられて、啜られる。熱い息が離れるのも惜しいと口や鼻にかかる。
頭がぼうっとして、体に力が入らなくなりそうだ。
「んっ……う、むっ」
「……ん、ふ、ぅ……っ」
グレオルのバスローブの袖を引っ張ると、またぬるっと喉の近くまで分厚い舌が戻ってきて焦った。何度か手前と喉の近くまで行き来して、それから離れた。
こちらは息もできないのに、すぐさま余裕そうに顎や首筋に唇を触れさせてくる彼に、呆れるやらびっくりするやら。
「ん、っ、グレオ、ル様……っ」
「……ん、」
そっと、デイルの腰にたくましい腕が回りゆっくりと後ろに押される。
すとん、と腰掛けた先はベッドで、グレオルは並んで座り、ぴったり体をくっつけて何度も首や頬に唇で触れられた。
「ん、デイル、……1回だけ、それ以上はしないから」
「え、……っ、1回ですか?」
「1回だ……それ以上は、また俺は、何をしでかすか……ああ、1回の意味は分かるか」
ふと顔を上げて聞いてくるので、真顔になってしまった。
「そこまで無知じゃ……僕、男ですよ?一応成人してる年齢ですけど。経験もないわけがないですし」
「は、」
グレオルは固まった。
なぜかビックリしたような顔が、面白くない。
「えっと、貴方の中の僕って、どうなってるんですか?こども?」
「……あ、女性か」
「……?あっ!当たり前ですよ!あんなことされたの殿下が初めてです!」
そもそも多分、本当はデイルは女の子が好きだ。恋はしたことがなかったが、困らないようにと教育されていたし、実際一度必要になった。嫌悪も違和感もなかったとだけは言える。
それをねじ曲げたのがこの初恋のお方である。
「本当に、いつか言われましたけど、僕はそんなに純粋じゃないですよ?間諜ですよ……言えないことも、たくさんしています」
「そう、だな……安心して良いのか嫉妬すべきか……分からんな」
「何の話ですか?」
たまに、王太子の考えていることが分からない。
いつもは単純なのに、変なところで変な横道にそれる気がする。それがやらかしの原因なんだろう。
はあああ、と大きなため息をついたグレオルは、デイルを抱き締めた。
「ともかく、嫌なことがあったり痛かったりしたら言ってくれ。無理を……するものじゃない。俺が言っても……信用できないだろうが」
「まあ、そうですね」
「うぐ、……こ、今回は、今は……」
すり、と耳のあたりに顔を押し付けられ、くすぐったい。
「……あのとき、出来なかった分、優しくしたい」
「……お願いします」
期待半分、不安半分。
けれど、進むと決めたのはデイルだ。
そっと、グレオルの大きな手が袂に入ってきた。すりすりと胸や腹をさすられ、首や肩口には口づけられる。
触れられたところが熱くて、むずむずする。
思わず身を捩ると、吐息だけで笑われて、鎖骨のあたりを強く吸われた。
「んっ……」
「は、デイル……」
低く、ゆるりと名前を呼ばれ、耳が溶けるかと思った。
ゆっくりと、後ろへと、押し倒される。
何も強引なことはなかった。
なのに、天井と見上げた王太子のうっすらとした笑みを見たら……自分でも気づかないうちに震えていたらしい。
「デイル……怖いか」
心配そうにグレオルがデイルの手を取る。
覆いかぶさられただけで、この反応か。
先が思いやられるな、と1度目を閉じて深呼吸する。
「大丈夫です……」
ダーニャは助かった。この人に助けられた。
ちゃんと自分を見て、言葉をくれる人がいる。
自分から望んでここに来た。
目を開いて、痛ましげな顔の美しい人へ、抱きついた。
「続けてください」
「……デイル、愛している」
耳に直接吹き込まれる低く柔らかな声に、つきんと背筋が疼く。
バスローブを袂から開かれる。デイルもグレオルの襟に手をかけたら、ふっと嬉しそうに黒い目が笑った。
グレオルがデイルのローブを脱がしている間も、黒い頭が忙しなく上半身を行き来して、つんつんと首や胸のあたりに痛みが走る。それらはじん、とちいさく体の内側に響いて、背中がゾワゾワする。
「殿下……、ぅ、っ、ふ」
「ん……?」
「そ、んな、ていねいに、しなくても、僕、」
「俺がしたいだけだ」
ちゅ、と音を立てて胸を吸われて、上目遣いにされる。
色っぽくて、かっこいい。
グレオルのローブを、彼の体の線を手のひらでなぞりながら剥ぐ。
熱い肌。滑らかに動く筋肉のかたちを覚えて、うっとりしてしまった。
大きい背中だ、両手で探っていると、うう、と低く唸る声が聞こえて、足の内側からぐいと開かれた。グレオルの腰が、デイルの足の間に入っていた。
「あ、あっ!?」
「い、1回……いっかい」
ぶつぶつと聞こえる呪文のような単語に目を白黒させていると、太ももの付け根にこつんと固いものが当たった。ゆっくりと付け根を固いものになぞられて、ぶるりとデイルは震えた。
「グレオル、様……」
「だいじょうぶだ……大丈夫」
低い声が、やはり呪文のようだ。
グレオルが体を起こし、乱暴にばさりとローブを腕から引き抜いた。顔は強張って、するどい目がデイルを見下ろす。
「大丈夫だ、ひどいことは絶対にしない」
「……っ」
はい、とうなずくのがせいいっぱいだった。
X◆X◆X◆X◆X
しばらくR18続きます
11
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる