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25:『輪舞曲』の勉強会2
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しかし、なにやらイワンは困った顔だった。自分が持ってきた本を、テーブルの上に置いて数えている。
「とは言っても、もしガヴァネスを雇ってて、教えが良かったら進捗の確認だけになりそうだけど……」
ガヴァネスは、貴族子女には小さな頃にはつけてもらうことが多いけれど、教育機関に通うようになると雇っている家は少なくなる。
今のように、長期休暇になると、ガヴァネスを雇い勉学が遅れないようにすることはあるようだが。
メルクリニもなんだか美味しくないものを食べたような顔をして腕を組んだ。
「うーむ、皆はどうだ?」
オデットは嬉しげに両手を胸の前で合わせた。
「今年は当たりだったわぁ。けれど休んでる間の学院の講義のことは全然わからないから、それを聞きたいのよねえ」
「私はガヴァネスにいい思い出がなくって、学院に入ると決まったときにお断りして、それっきりですわ」
アリッテルはつんといつものようにすましている。
「なるほど」
イワンが苦笑した。
「僕も去年から同じガヴァネスを付けてもらってるけど、正直教えがうまいかと言うと……ちょっとね。メリーは?」
「私も夏期休講のときと同じガヴァネスだが、悪くもないが特別いいわけでもない。復習にはもってこいだったが」
「――ミズリィは?」
微妙な顔のまま、イワンはこちらを見た。そして全員の目がミズリィに集まって、ちょっとどきりとする。
「ガヴァネスは……おりますわ。これでもう3年は教えていただいているのですけれど……」
「ううん、さっきわからないまま試験が来るって言ってたし、その感じだと、成果は上がってないようだね」
イワンは分かっていたとばかりにうなずく。
「確か、ワトリット男爵夫人……だったよな?」
「よくご存知ですわね」
「そりゃまあ、本人も乗り気で……」
イワンがはっとして、途中で咳払いをした。
「んん、……けど、あの人と君は合わないんじゃないかな?」
「と、言いますと?」
「あの人は貴族社会に精通しているから、どちらかというと、礼儀作法の方面は得意だけど、学問の方だと……貴族主義もいいところだと思うよ」
「どういう意味ですの?」
「ああ、四角四面の貴族の知識しか持っていないわけだな」
メルクリニはイワンの言いたいことがわかったらしい。
「こう、柔軟さにかけるというか、ホーリースの貴族社会内部でなら通じるのだが、外の……例えば平民だとか、外国の話は論外なんだ」
「貴族出身のガヴァネスってみんなそんな感じですの?」
アリッテルが呆れたようにため息をつく。
「質問しても答えがちゃんと返ってこなくってよ。そのように決まっているから、とか、そういうものです、とか。常識ですと言いいたげなあの態度は頭にきますわ」
「そのとおり。結局、彼らのお得意の勉強といえば初代皇帝から皇家がどうだった、貴族がどう力を持っていったか、いいところで魔術師の変遷くらいかな。それでいてどうしてそうなったか、って聞いても教会の教えだとか帝国ではそうだとか、ずっとそうだと言われてるとか、そんなのばっかりさ」
どう?とイワンに聞かれて、ミズリィはうなずく。
ガヴァネスの言っていることが良く分からなくて、ただぼうっと聞いていただけだったので覚えていないが、よく皇家がどうのとは言っていた。
「そして、他のことはいまいちだ。数学と言ってもおそらく帳簿をつける程度の算術で、あとは理論で攻めてくる感じ、だろうな、それこそそういうものですって言われるんじゃない?」
「……その、わたくし、算術はどうしても……」
「大丈夫、詳しくは言わなくてもいいよ。スミレが得意だから、彼女に聞きながらやっていけばいい」
「でも、私もテストのための勉強って感じですよ?」
スミレは自信がなさそうに言う。
「わたくしには何がなんだかわからないのだから、教えてもらうだけで一歩進んだ気がするのですわ」
「だ、そうだよ、スミレ。僕もガヴァネスの及ばないところを君に聞きながらやりたいんだよね」
笑ったイワンがウインクすると、スミレは苦笑した。
「責任重大すぎません?」
「結果がどうであれ、文句は言わないさ」
「もう、知りませんよ?もちろん頑張るつもりですけど」
「了解。さて、前座が長くなったけど、第一回の勉強会だ、今日は……課題も出てるし、歴史、かな?」
イワンが書籍のひとつを手に取った。
「とは言っても、もしガヴァネスを雇ってて、教えが良かったら進捗の確認だけになりそうだけど……」
ガヴァネスは、貴族子女には小さな頃にはつけてもらうことが多いけれど、教育機関に通うようになると雇っている家は少なくなる。
今のように、長期休暇になると、ガヴァネスを雇い勉学が遅れないようにすることはあるようだが。
メルクリニもなんだか美味しくないものを食べたような顔をして腕を組んだ。
「うーむ、皆はどうだ?」
オデットは嬉しげに両手を胸の前で合わせた。
「今年は当たりだったわぁ。けれど休んでる間の学院の講義のことは全然わからないから、それを聞きたいのよねえ」
「私はガヴァネスにいい思い出がなくって、学院に入ると決まったときにお断りして、それっきりですわ」
アリッテルはつんといつものようにすましている。
「なるほど」
イワンが苦笑した。
「僕も去年から同じガヴァネスを付けてもらってるけど、正直教えがうまいかと言うと……ちょっとね。メリーは?」
「私も夏期休講のときと同じガヴァネスだが、悪くもないが特別いいわけでもない。復習にはもってこいだったが」
「――ミズリィは?」
微妙な顔のまま、イワンはこちらを見た。そして全員の目がミズリィに集まって、ちょっとどきりとする。
「ガヴァネスは……おりますわ。これでもう3年は教えていただいているのですけれど……」
「ううん、さっきわからないまま試験が来るって言ってたし、その感じだと、成果は上がってないようだね」
イワンは分かっていたとばかりにうなずく。
「確か、ワトリット男爵夫人……だったよな?」
「よくご存知ですわね」
「そりゃまあ、本人も乗り気で……」
イワンがはっとして、途中で咳払いをした。
「んん、……けど、あの人と君は合わないんじゃないかな?」
「と、言いますと?」
「あの人は貴族社会に精通しているから、どちらかというと、礼儀作法の方面は得意だけど、学問の方だと……貴族主義もいいところだと思うよ」
「どういう意味ですの?」
「ああ、四角四面の貴族の知識しか持っていないわけだな」
メルクリニはイワンの言いたいことがわかったらしい。
「こう、柔軟さにかけるというか、ホーリースの貴族社会内部でなら通じるのだが、外の……例えば平民だとか、外国の話は論外なんだ」
「貴族出身のガヴァネスってみんなそんな感じですの?」
アリッテルが呆れたようにため息をつく。
「質問しても答えがちゃんと返ってこなくってよ。そのように決まっているから、とか、そういうものです、とか。常識ですと言いいたげなあの態度は頭にきますわ」
「そのとおり。結局、彼らのお得意の勉強といえば初代皇帝から皇家がどうだった、貴族がどう力を持っていったか、いいところで魔術師の変遷くらいかな。それでいてどうしてそうなったか、って聞いても教会の教えだとか帝国ではそうだとか、ずっとそうだと言われてるとか、そんなのばっかりさ」
どう?とイワンに聞かれて、ミズリィはうなずく。
ガヴァネスの言っていることが良く分からなくて、ただぼうっと聞いていただけだったので覚えていないが、よく皇家がどうのとは言っていた。
「そして、他のことはいまいちだ。数学と言ってもおそらく帳簿をつける程度の算術で、あとは理論で攻めてくる感じ、だろうな、それこそそういうものですって言われるんじゃない?」
「……その、わたくし、算術はどうしても……」
「大丈夫、詳しくは言わなくてもいいよ。スミレが得意だから、彼女に聞きながらやっていけばいい」
「でも、私もテストのための勉強って感じですよ?」
スミレは自信がなさそうに言う。
「わたくしには何がなんだかわからないのだから、教えてもらうだけで一歩進んだ気がするのですわ」
「だ、そうだよ、スミレ。僕もガヴァネスの及ばないところを君に聞きながらやりたいんだよね」
笑ったイワンがウインクすると、スミレは苦笑した。
「責任重大すぎません?」
「結果がどうであれ、文句は言わないさ」
「もう、知りませんよ?もちろん頑張るつもりですけど」
「了解。さて、前座が長くなったけど、第一回の勉強会だ、今日は……課題も出てるし、歴史、かな?」
イワンが書籍のひとつを手に取った。
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