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42:イワンのまとめ3
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イワンの話は続く。
「さて、友情も深まったことだし。これから一致団結、ミズリィの未来のためにみんなで知恵を絞ろうじゃないか」
「なかなか試験明けにハードねえ」
「オデット、あなたはしてないのではなくって?」
とは言っても、あまり進展がないのはみんなも承知だ。
おさらいであり、今後の方針を決めるためのものらしい。
「ともかく、みんなと認識を一緒にしよう。まずは――」
ミズリィは、未来で周囲の人間から冷遇され、何故か悪魔として捕まり、処刑された。
今のところその悪魔として処刑される間違いは、なにが原因かは分からない。
「重要だけど番外にするしか出来ないのは、なんでミズリィがこの過去に戻ってきたのか、だけれども」
「そんな現象や魔法、聞いたことがないですからね……」
「ただ、ミズリィ自身が記憶を覚えていて、行動が変われば未来も変わる。どうやらただの過去の再現ではないようだね」
過去に戻ってきたことが、何を意味するのかは分からないけれど――ミズリィは、ただみんなと幸せに過ごしたいだけだ。
「目標はこの通り、ミズリィの家族や我ら友人が離れることなく、また、つらい処刑から回避すること」
「帝国の一大事でもあります。公爵令嬢で当時皇太子になっていたテリッツ様の婚約者が、教会に悪魔としてして捕まり、処刑される。おかしいのは皇家が反発しなかった可能性が高いということです」
捕われる前、ミズリィの周りから人がいなくなっていった理由も良く分からない。
ただ、会えなかったイワンは同じく命を狙われていたかもしれず、一年も前に国を出たオデットはなにか知っていたのではないかということ。
「教会ですものねえ……神殿のことは敵とまではいかないのでしょうけれど、気に入らないって顔をしているのはそういうことなのよねえ」
「どういうことですのはっきりおっしゃい」
「ええ?アリッテルがイワンを気に入らないと一緒よぉ」
「なるほどですわ」
イワンが何やらショックを受けていた。
つまるところ。
オデットは教会の動きを知っていたのではないかということだ。
なにせ、ミズリィの友人だったのだから。
「私も、命を狙われていたか、あるいは迷惑になると思って、出ていったかもしれないわぁ」
メルクリニは、自らミズリィを拒んだ友人だった。
「……分からない。不満や怒ってることなんて、私はすぐ口に出すだろう?それで解決できなかったということか……?」
メルクリニは自分のことがわからないといったふうに首を傾げている。
「もしかしたら、ミズリィ様はメリー様が怒ってらしたことをお忘れになったかもしれませんね」
「……いいえ、覚えているとは思いますわ。けれど……ええ、たぶん、わたくしは理解ができなかったかもしれませんわ。メリーがわたくしのなにに怒っていたか……」
そう、家族や、使用人たちもだった。
事件の数年前に、メイドのフローレンスも怒って出ていったのだ。
普通なら、ありえない。
主人に逆らうということだからだ。
ミズリィが許しても、当主である父ロンバルドが何か罰を与えているかもしれない……いや、屋敷から追い出したのが、罰だったかも。
それに、その後ミズリィ付きのメイドがいなかった。
「え!?」
「ありえないぞ……またこれも問題になったな」
「公爵家もおかしいということか……?」
家族。
一番は、妹のミルリィだ。
やはり数年前から疎遠になり、最期に会ったのは牢屋の中でだった。
憎々しげに睨まれて、それでようやく、嫌われていることに気がついたのだ。
「これも……私が悪いのですわ。異変に気づかず、見ないふりをして……もっと真剣に、ミルリィに向き合っていれば……」
今のスミレにしたように。
父ロンバルドは、その頃屋敷に帰ることが少なくなっていた。忙しそうで、帰ってくるたびに書斎に引きこもっていた。
ミズリィが捕まったのは、屋敷に押し入ってきた教会の兵にだった。
その時も父は不在だったと記憶している。
「公爵様が敵とは考えにくいな」
「ええ、冷静ですし、お考えはしっかりした方ですわ。もし……自分の娘(わたくし)を敵とするにしても、こう、なにか違う行動を取られると思いますわ。ただ、何度か呼ばれたときは……ひどく焦っていらして……そう、不思議なことを仰っていたわ」
「なんですか!?」
「皇宮で粗相をしたのは本当か、とか、とある令嬢に乱暴をしたというのはどういうことか、とか」
そう、今思い出した。
不可解なことを聞かれた。主に父からだ。
スミレが不安そうにしている。
「それはもちろん、ミズリィ様はそんなことなさっていらっしゃいませんよね」
「ええ、身に覚えがないので、違います、しておりません、と答えましたわ」
「……社交界での噂か?」
イワンが不快そうに眉を寄せた。
「なにか関わりがあると思って良さそうだな」
「他には?なにか覚えてらっしゃいますか?噂でもなんでも」
「……思い出せないですわ。お話を続けてくださったほうが思い出すかも……」
『悪魔』と言われたミズリィ。
ペトーキオ公爵令嬢の皮を被った悪魔であるという。根拠として挙げられたのはその数ヶ月前に起こった、聖山に封印された大精霊の復活。帝都周辺を狂った天候にして被害を出した、それが、ミズリィが企んだことだという。
聖オラトリオ学院の学長や、その魔術師たちが大勢山に登り、ミズリィも混じって大精霊の鎮圧に向かい、戦ったのに、だ。
怪我人も多く出て、もう少しで死者も出るところだった。
それもまるごと、ミズリィのせいにされた。
「大精霊の復活も怪しいけれど、もっと重要なのは、鎮圧、撃退をした討伐隊を組んだのは皇家で、オラトリオ学長とミズリィ公女が皇太子に報告したのに、それがなかったことにされているのかもしれないってことだ」
「皇家がなにを考えていたかってことですよね……?」
「まあ、あるいは、教会が皇家から聞いていても聞き流したか。ただ、それでも教会の虚偽を黙認していたことになるんだよなあ……」
真剣なイワンの顔を見て……後でこのあたりのことをもう一度詳しく聞こうと、ミズリィは心のメモに書き込んだ。
「さて、友情も深まったことだし。これから一致団結、ミズリィの未来のためにみんなで知恵を絞ろうじゃないか」
「なかなか試験明けにハードねえ」
「オデット、あなたはしてないのではなくって?」
とは言っても、あまり進展がないのはみんなも承知だ。
おさらいであり、今後の方針を決めるためのものらしい。
「ともかく、みんなと認識を一緒にしよう。まずは――」
ミズリィは、未来で周囲の人間から冷遇され、何故か悪魔として捕まり、処刑された。
今のところその悪魔として処刑される間違いは、なにが原因かは分からない。
「重要だけど番外にするしか出来ないのは、なんでミズリィがこの過去に戻ってきたのか、だけれども」
「そんな現象や魔法、聞いたことがないですからね……」
「ただ、ミズリィ自身が記憶を覚えていて、行動が変われば未来も変わる。どうやらただの過去の再現ではないようだね」
過去に戻ってきたことが、何を意味するのかは分からないけれど――ミズリィは、ただみんなと幸せに過ごしたいだけだ。
「目標はこの通り、ミズリィの家族や我ら友人が離れることなく、また、つらい処刑から回避すること」
「帝国の一大事でもあります。公爵令嬢で当時皇太子になっていたテリッツ様の婚約者が、教会に悪魔としてして捕まり、処刑される。おかしいのは皇家が反発しなかった可能性が高いということです」
捕われる前、ミズリィの周りから人がいなくなっていった理由も良く分からない。
ただ、会えなかったイワンは同じく命を狙われていたかもしれず、一年も前に国を出たオデットはなにか知っていたのではないかということ。
「教会ですものねえ……神殿のことは敵とまではいかないのでしょうけれど、気に入らないって顔をしているのはそういうことなのよねえ」
「どういうことですのはっきりおっしゃい」
「ええ?アリッテルがイワンを気に入らないと一緒よぉ」
「なるほどですわ」
イワンが何やらショックを受けていた。
つまるところ。
オデットは教会の動きを知っていたのではないかということだ。
なにせ、ミズリィの友人だったのだから。
「私も、命を狙われていたか、あるいは迷惑になると思って、出ていったかもしれないわぁ」
メルクリニは、自らミズリィを拒んだ友人だった。
「……分からない。不満や怒ってることなんて、私はすぐ口に出すだろう?それで解決できなかったということか……?」
メルクリニは自分のことがわからないといったふうに首を傾げている。
「もしかしたら、ミズリィ様はメリー様が怒ってらしたことをお忘れになったかもしれませんね」
「……いいえ、覚えているとは思いますわ。けれど……ええ、たぶん、わたくしは理解ができなかったかもしれませんわ。メリーがわたくしのなにに怒っていたか……」
そう、家族や、使用人たちもだった。
事件の数年前に、メイドのフローレンスも怒って出ていったのだ。
普通なら、ありえない。
主人に逆らうということだからだ。
ミズリィが許しても、当主である父ロンバルドが何か罰を与えているかもしれない……いや、屋敷から追い出したのが、罰だったかも。
それに、その後ミズリィ付きのメイドがいなかった。
「え!?」
「ありえないぞ……またこれも問題になったな」
「公爵家もおかしいということか……?」
家族。
一番は、妹のミルリィだ。
やはり数年前から疎遠になり、最期に会ったのは牢屋の中でだった。
憎々しげに睨まれて、それでようやく、嫌われていることに気がついたのだ。
「これも……私が悪いのですわ。異変に気づかず、見ないふりをして……もっと真剣に、ミルリィに向き合っていれば……」
今のスミレにしたように。
父ロンバルドは、その頃屋敷に帰ることが少なくなっていた。忙しそうで、帰ってくるたびに書斎に引きこもっていた。
ミズリィが捕まったのは、屋敷に押し入ってきた教会の兵にだった。
その時も父は不在だったと記憶している。
「公爵様が敵とは考えにくいな」
「ええ、冷静ですし、お考えはしっかりした方ですわ。もし……自分の娘(わたくし)を敵とするにしても、こう、なにか違う行動を取られると思いますわ。ただ、何度か呼ばれたときは……ひどく焦っていらして……そう、不思議なことを仰っていたわ」
「なんですか!?」
「皇宮で粗相をしたのは本当か、とか、とある令嬢に乱暴をしたというのはどういうことか、とか」
そう、今思い出した。
不可解なことを聞かれた。主に父からだ。
スミレが不安そうにしている。
「それはもちろん、ミズリィ様はそんなことなさっていらっしゃいませんよね」
「ええ、身に覚えがないので、違います、しておりません、と答えましたわ」
「……社交界での噂か?」
イワンが不快そうに眉を寄せた。
「なにか関わりがあると思って良さそうだな」
「他には?なにか覚えてらっしゃいますか?噂でもなんでも」
「……思い出せないですわ。お話を続けてくださったほうが思い出すかも……」
『悪魔』と言われたミズリィ。
ペトーキオ公爵令嬢の皮を被った悪魔であるという。根拠として挙げられたのはその数ヶ月前に起こった、聖山に封印された大精霊の復活。帝都周辺を狂った天候にして被害を出した、それが、ミズリィが企んだことだという。
聖オラトリオ学院の学長や、その魔術師たちが大勢山に登り、ミズリィも混じって大精霊の鎮圧に向かい、戦ったのに、だ。
怪我人も多く出て、もう少しで死者も出るところだった。
それもまるごと、ミズリィのせいにされた。
「大精霊の復活も怪しいけれど、もっと重要なのは、鎮圧、撃退をした討伐隊を組んだのは皇家で、オラトリオ学長とミズリィ公女が皇太子に報告したのに、それがなかったことにされているのかもしれないってことだ」
「皇家がなにを考えていたかってことですよね……?」
「まあ、あるいは、教会が皇家から聞いていても聞き流したか。ただ、それでも教会の虚偽を黙認していたことになるんだよなあ……」
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