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絶望の朝(3)※R18
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自分の背中を覆うそれが、さっきまで触れるのを嫌がったあのマキアだと信じられない。
細い腕だ。腹にがちりと回っている。ぎゅうぎゅうに締められて、すこし苦しい。
「……マ、キア、おい、どうし、」
「離れないで……」
頼りないか細い声といっしょに、すり、と肩口になにか擦り付けられる。
背中が温かい。マキアの……体温。
かっと、腹の底から上がってきた熱に、ビクトルは硬直する。
「……分かった、どこにも行かねえから……一回、離せ、」
「いやだ……!」
あの、マキアが。
涙声でビクトルにしがみついている。
くらくらしながら、彼の腕を叩く。
「大丈夫だ、な、落ち着け」
さらにぎゅうっと抱きしめられて、すこしはやい息づかいが聞こえた。
「マキア……」
困る。うれしいだけに困る。
ビクトルは、マキアのことが好きなのだ。
彼には言っていない。やっと友人だと認めさせた、そんな時なのに。
人に接するのが苦手なマキアに嫌われたくないのもある。けれど、それ以上に、彼の負担になりたくない。つらそうな顔は見たくない。
だから――
(落ち着け俺!マキアはおかしくなってる!)
絶対にあちらから触れてこないのに、今はべったりだ。しかも離れないで、なんて。
あの鏡、とんでもないことをしてくれた。
おかげで窮地だ。
体中が敏感になって、マキアの身体を感じようとしている。吐息に、細い身体、体温、感触。
全部が、ビクトルを興奮させる。
「マキア、頼むから、一度だけ離、」
「だめ」
「……あのな、俺、必死にこらえてるんだから」
「何を」
「……実は、正気か?」
声の鋭さが、いつもと変わらない気がした。
「……思ったより正気じゃない」
「ほら!なんで、いきなりこんなこと」
「離れたくない……」
またぐっと力を込められて密着して、腰のあたりにしびれが走った。
「……マキア、お願いだから離れてくれ」
「だめだ……」
「……~~あのなあ!俺は、お前が好きなんだ!」
言ってしまった。けれどそんなことより、すり寄ってくる可愛い男に手を伸ばさないことが一番だった。
傷つけたくない。苦しませたくない。
「こういうの、まずいんだよ!分かれ!お前が好きなんだ!」
「……」
黙り込んだマキアは、動かない。
だんだん腹が立ってきた。
「おい……いいかげんにしねえとほんとに襲うぞ」
「……」
「マキア」
「お前が離れないなら」
途方に暮れたような、かすれた声。
「いい」
離れないで、というのは本当にそのままで、正面から抱きしめるために引き剥がすのも一苦労だったし、服を脱がそうにも、がっちりと抱きしめられてほとんど脱がせられなかった。
「ぁあ……ぅ」
少し苦しそうな、けれどふにゃふにゃの吐息がビクトルの首筋にかかってぶるりとする。
ベッドに座り込んだビクトルの膝の上に、マキアが足を開いて乗っている。
ズボンの前をくつろげて、おたがいのものをビクトルの手が掴んでいっしょに擦っている。
「は、んん……っぁ」
マキアはずっとビクトルの肩に腕を回して、離れようとしない。
徹底している。始めたときからこれで、見えていないだろうに、なにをされているのかわかっているのだろうか。不安だ。
擦ってやって、何度か粘ついたものを吐き出しているのに、抵抗もしない。たまに気持ちよさそうに声を上げるので、ビクトルはますます興奮してしまう。
「あ、あ、あ――っん」
「は、あ、ぐ……っ!」
また熱いものがビクトルの手にかかる。すでに何度も出しているので、股間はぐちゃぐちゃだった。
マキアの萎えたそれを、指先で撫でてやるとビクトルの足の上で腰がブルリと震えた。
「はぁ、ぅ」
「……マキア、なあ、一生こうやって俺から、離れないつもりか?」
「いやだ……」
「どういう嫌、なんだ……ああ、わかったから」
ぎゅうっと、首が締まりそうなほど抱きつかれて、胸と腰が疼く。
かわいい。
けれど、そうやってもう似たようなことをくりかえして、そのたびにビクトルが欲を膨らませるので、きりがない。
――この先があるのを知っている。
意外と男同士だとか、そういう話は隊でよく聞く。
マキアに惚れたと気づいて、速攻ビクトルは同僚に聞いた。ただ興味が湧いただけだ、具体的にマキアとどうこうするというのはまだ想像もできなかった。
その聞いた話が、ぐるぐると頭を回る。
「……マキア」
そっと髪に埋もれた耳に囁く。
「このままだと、これ以上、しちまうんだが」
「……ぅん……?」
ビクトルの手に自分のものを弄ばれて、ぴくぴくと腰を震わせているマキアは、ちゃんと聞こえているのだろうか。
「これ、いじょう、」
「……ああ」
「いい……」
くん、とマキアの腰がビクトルの手に押し付けられる。
「……っ!」
「離れないで。なんでもいい、おまえなら」
「好きだぞ、マキア」
本当に、何をされるのか分かっているのだろうか。
心配なのに、ビクトルは聞き返さなかった。
自分ならいい――なんてもう、たまらなかった。
熱い、苦しい、焼けそう。
腹の中に、何か大きいものが入っている。
普通なら痛いだろうと思うのに、マキアには痛みよりも、どくどくと自分の中でもう一個の心臓みたいに動くそれが不思議だった。
いる、中に何かが……熱い。
「……っ、痛くない、か」
耳元で甘い声が聞こえる。
痛くはない。
ただ、不思議で。
「は、ぁ……なに」
「はいった……な」
すげえ、とビクトルが感動する声が耳をくすぐる。
入った。ああそうだ、ビクトルの、一部が。
マキアの中に、ビクトルがいる。
ようやく理解したとたんに、ぞくぞくと体が震えた。
中に、いる。
こんな近くに。
うれしくて、涙が出た。
「……マキア?」
「これで、……離れないよな」
こんな奥に来ているのだから。
熱い身体をさらに抱きしめる。もうずっとくっついているから、同じ温度で触れている肌は溶けて一緒になっているはず。
そんな夢想と一緒に、マキアの中に入ったビクトルを力を込めて締め付けた。もう、出ていかないように。
なのに。
「――っ」
「あ、あ!?出てくな、抜くの、や……」
腰をつかまれ、上へ持ち上げられる。
ずる、と抜けていくビクトルに、マキアはもっと腹に力を込めて引き止めようとした。
「あ、ぐ、マキア……っ!」
「……っ!?ぁぁあ!?」
中身がなくなった腹が寂しくて、きゅうっと狭くなったところに、また、大きなものがずぷりと戻ってきた。
「う、はぁっ!?ん、んー、や、ぬかな、ぃああ!?」
「だいじょぶ、お前ん中、俺のちゃんと入れとくからな……」
「ぁ、ぁ、ぁ……あひっ?」
「……ここ、ここ最後、お前のここ、俺のすげえ好きなんだろ。吸ってくる」
抜ける寸前、入るところをビクトルの先っぽがぐりぐりぐりとほじるようにする。腰が甘く疼いて、足がガクガクと震える。
「や、やぁ……」
「……はあっ、たまんね」
「ぁ……ああ!」
腰が落ちて、ずん、と奥までビクトルが入ってきた。
「あ、ひ、おく……きて、びくとる、いる」
「……っ」
ハッ、と鋭い呼吸の音が聞こえた。
奥を何度も突つかれ、そのたびにマキアの目の前が白くなる。
びりびりと体の芯が痺れて、頭がばかになる。
ああ、これで、ビクトルはマキアから離れていかない。
「あう、あぁっ、ビクトル、びくと、ん、ぅーー!」
「……う、あ……はあっ」
腹の奥に、濡れた感触。
少しちいさくなったビクトルに、マキアの内側が甘えて絡んだ。無意識だった。
じくじくと疼く腹の中で、ビクトルがぴくぴくと震え始める。
ぎゅっと腰を太い腕に抱かれる。
「ビクトル……」
「ん、まだ……」
ゆっくりと、体を揺らされた。肌が擦れて、また新しい熱を生む。
うれしい。まだ、彼が中にいてくれる。
うっすらと青い光が部屋を照らしているのに気づく。
「……マキア、もう、」
「……ん、や……あ、」
だめ、と、マキアは今にも夢の世界に旅立とうとする顔で、必死にビクトルにしがみつく。かわいくて、また腰がピリッとしてマキアに押し付ける。
マキアは絶対に離れなかった。ともかく少しでも放そうとすると、いやだといっそうくっついてくる。
かわいいが、かわいすぎて大変だった。ろくに顔も見れなかったし、姿勢が同じで大変だった。
それにかなり心配だった。
普通じゃない。あのマキアだ、素直に気持ちすら出せず固まるような。それが涙声でビクトルを必死に呼び、甘えたように全身を絡ませてくる。
けれど、あまりにも必死にビクトルにくっつく彼にどうしてもやめようと言い出せなかった。いや、半分はビクトルの願望だ。
もう、夜明けだ。
「ぁ……っ、……っ」
マキアのビクトルの背を抱いた腕に力は入っていないし、一晩お邪魔した彼の腹の中はふわふわのどろどろで、たまにぴくりとするだけ。
「……、……」
最後に、ぐっと奥の奥にビクトルを押し付けられ、マキアは小さく震えて、かくりと力を失った。
途中からベッドに押し倒して、ずっとマキアと上半身は離れないように気をつけていた。眠ったマキアはそのままシーツに仰向けになっている。
「……はあー」
すうすうと寝息を立てるマキアを、ようやく満足するまで眺めて、ビクトルはしみじみと鍛えておいてよかったと思った。
「……すごかった」
天国と、ほんのちょっぴり地獄を見た。
ビクトルにもジタバタする体力はもうなくなったが、心はまだ跳ね回っている。
可愛かった、気持ちよかった。ともかく最高で……不安だ。
泣き濡れた顔を、そっと拭ってやる。
鏡のせいだというのは分かるが、一体どんな影響でこうなったのか。
半分は正気だろうというようなことは、マキア自身が言っていた。けれど、本当にビクトルとこんなことをして、後悔しないかは分からない。
マキアが傷つくことにならないか、ビクトルはそれが怖い。
さすがに疲れて、マキアを抱きしめてギリギリのベッドを使わせてもらい。
数時間後――
さめざめとマキアは泣く。
「お前に嫌われたらもう生きていけない……」
どんな殺し文句だ。
細い腕だ。腹にがちりと回っている。ぎゅうぎゅうに締められて、すこし苦しい。
「……マ、キア、おい、どうし、」
「離れないで……」
頼りないか細い声といっしょに、すり、と肩口になにか擦り付けられる。
背中が温かい。マキアの……体温。
かっと、腹の底から上がってきた熱に、ビクトルは硬直する。
「……分かった、どこにも行かねえから……一回、離せ、」
「いやだ……!」
あの、マキアが。
涙声でビクトルにしがみついている。
くらくらしながら、彼の腕を叩く。
「大丈夫だ、な、落ち着け」
さらにぎゅうっと抱きしめられて、すこしはやい息づかいが聞こえた。
「マキア……」
困る。うれしいだけに困る。
ビクトルは、マキアのことが好きなのだ。
彼には言っていない。やっと友人だと認めさせた、そんな時なのに。
人に接するのが苦手なマキアに嫌われたくないのもある。けれど、それ以上に、彼の負担になりたくない。つらそうな顔は見たくない。
だから――
(落ち着け俺!マキアはおかしくなってる!)
絶対にあちらから触れてこないのに、今はべったりだ。しかも離れないで、なんて。
あの鏡、とんでもないことをしてくれた。
おかげで窮地だ。
体中が敏感になって、マキアの身体を感じようとしている。吐息に、細い身体、体温、感触。
全部が、ビクトルを興奮させる。
「マキア、頼むから、一度だけ離、」
「だめ」
「……あのな、俺、必死にこらえてるんだから」
「何を」
「……実は、正気か?」
声の鋭さが、いつもと変わらない気がした。
「……思ったより正気じゃない」
「ほら!なんで、いきなりこんなこと」
「離れたくない……」
またぐっと力を込められて密着して、腰のあたりにしびれが走った。
「……マキア、お願いだから離れてくれ」
「だめだ……」
「……~~あのなあ!俺は、お前が好きなんだ!」
言ってしまった。けれどそんなことより、すり寄ってくる可愛い男に手を伸ばさないことが一番だった。
傷つけたくない。苦しませたくない。
「こういうの、まずいんだよ!分かれ!お前が好きなんだ!」
「……」
黙り込んだマキアは、動かない。
だんだん腹が立ってきた。
「おい……いいかげんにしねえとほんとに襲うぞ」
「……」
「マキア」
「お前が離れないなら」
途方に暮れたような、かすれた声。
「いい」
離れないで、というのは本当にそのままで、正面から抱きしめるために引き剥がすのも一苦労だったし、服を脱がそうにも、がっちりと抱きしめられてほとんど脱がせられなかった。
「ぁあ……ぅ」
少し苦しそうな、けれどふにゃふにゃの吐息がビクトルの首筋にかかってぶるりとする。
ベッドに座り込んだビクトルの膝の上に、マキアが足を開いて乗っている。
ズボンの前をくつろげて、おたがいのものをビクトルの手が掴んでいっしょに擦っている。
「は、んん……っぁ」
マキアはずっとビクトルの肩に腕を回して、離れようとしない。
徹底している。始めたときからこれで、見えていないだろうに、なにをされているのかわかっているのだろうか。不安だ。
擦ってやって、何度か粘ついたものを吐き出しているのに、抵抗もしない。たまに気持ちよさそうに声を上げるので、ビクトルはますます興奮してしまう。
「あ、あ、あ――っん」
「は、あ、ぐ……っ!」
また熱いものがビクトルの手にかかる。すでに何度も出しているので、股間はぐちゃぐちゃだった。
マキアの萎えたそれを、指先で撫でてやるとビクトルの足の上で腰がブルリと震えた。
「はぁ、ぅ」
「……マキア、なあ、一生こうやって俺から、離れないつもりか?」
「いやだ……」
「どういう嫌、なんだ……ああ、わかったから」
ぎゅうっと、首が締まりそうなほど抱きつかれて、胸と腰が疼く。
かわいい。
けれど、そうやってもう似たようなことをくりかえして、そのたびにビクトルが欲を膨らませるので、きりがない。
――この先があるのを知っている。
意外と男同士だとか、そういう話は隊でよく聞く。
マキアに惚れたと気づいて、速攻ビクトルは同僚に聞いた。ただ興味が湧いただけだ、具体的にマキアとどうこうするというのはまだ想像もできなかった。
その聞いた話が、ぐるぐると頭を回る。
「……マキア」
そっと髪に埋もれた耳に囁く。
「このままだと、これ以上、しちまうんだが」
「……ぅん……?」
ビクトルの手に自分のものを弄ばれて、ぴくぴくと腰を震わせているマキアは、ちゃんと聞こえているのだろうか。
「これ、いじょう、」
「……ああ」
「いい……」
くん、とマキアの腰がビクトルの手に押し付けられる。
「……っ!」
「離れないで。なんでもいい、おまえなら」
「好きだぞ、マキア」
本当に、何をされるのか分かっているのだろうか。
心配なのに、ビクトルは聞き返さなかった。
自分ならいい――なんてもう、たまらなかった。
熱い、苦しい、焼けそう。
腹の中に、何か大きいものが入っている。
普通なら痛いだろうと思うのに、マキアには痛みよりも、どくどくと自分の中でもう一個の心臓みたいに動くそれが不思議だった。
いる、中に何かが……熱い。
「……っ、痛くない、か」
耳元で甘い声が聞こえる。
痛くはない。
ただ、不思議で。
「は、ぁ……なに」
「はいった……な」
すげえ、とビクトルが感動する声が耳をくすぐる。
入った。ああそうだ、ビクトルの、一部が。
マキアの中に、ビクトルがいる。
ようやく理解したとたんに、ぞくぞくと体が震えた。
中に、いる。
こんな近くに。
うれしくて、涙が出た。
「……マキア?」
「これで、……離れないよな」
こんな奥に来ているのだから。
熱い身体をさらに抱きしめる。もうずっとくっついているから、同じ温度で触れている肌は溶けて一緒になっているはず。
そんな夢想と一緒に、マキアの中に入ったビクトルを力を込めて締め付けた。もう、出ていかないように。
なのに。
「――っ」
「あ、あ!?出てくな、抜くの、や……」
腰をつかまれ、上へ持ち上げられる。
ずる、と抜けていくビクトルに、マキアはもっと腹に力を込めて引き止めようとした。
「あ、ぐ、マキア……っ!」
「……っ!?ぁぁあ!?」
中身がなくなった腹が寂しくて、きゅうっと狭くなったところに、また、大きなものがずぷりと戻ってきた。
「う、はぁっ!?ん、んー、や、ぬかな、ぃああ!?」
「だいじょぶ、お前ん中、俺のちゃんと入れとくからな……」
「ぁ、ぁ、ぁ……あひっ?」
「……ここ、ここ最後、お前のここ、俺のすげえ好きなんだろ。吸ってくる」
抜ける寸前、入るところをビクトルの先っぽがぐりぐりぐりとほじるようにする。腰が甘く疼いて、足がガクガクと震える。
「や、やぁ……」
「……はあっ、たまんね」
「ぁ……ああ!」
腰が落ちて、ずん、と奥までビクトルが入ってきた。
「あ、ひ、おく……きて、びくとる、いる」
「……っ」
ハッ、と鋭い呼吸の音が聞こえた。
奥を何度も突つかれ、そのたびにマキアの目の前が白くなる。
びりびりと体の芯が痺れて、頭がばかになる。
ああ、これで、ビクトルはマキアから離れていかない。
「あう、あぁっ、ビクトル、びくと、ん、ぅーー!」
「……う、あ……はあっ」
腹の奥に、濡れた感触。
少しちいさくなったビクトルに、マキアの内側が甘えて絡んだ。無意識だった。
じくじくと疼く腹の中で、ビクトルがぴくぴくと震え始める。
ぎゅっと腰を太い腕に抱かれる。
「ビクトル……」
「ん、まだ……」
ゆっくりと、体を揺らされた。肌が擦れて、また新しい熱を生む。
うれしい。まだ、彼が中にいてくれる。
うっすらと青い光が部屋を照らしているのに気づく。
「……マキア、もう、」
「……ん、や……あ、」
だめ、と、マキアは今にも夢の世界に旅立とうとする顔で、必死にビクトルにしがみつく。かわいくて、また腰がピリッとしてマキアに押し付ける。
マキアは絶対に離れなかった。ともかく少しでも放そうとすると、いやだといっそうくっついてくる。
かわいいが、かわいすぎて大変だった。ろくに顔も見れなかったし、姿勢が同じで大変だった。
それにかなり心配だった。
普通じゃない。あのマキアだ、素直に気持ちすら出せず固まるような。それが涙声でビクトルを必死に呼び、甘えたように全身を絡ませてくる。
けれど、あまりにも必死にビクトルにくっつく彼にどうしてもやめようと言い出せなかった。いや、半分はビクトルの願望だ。
もう、夜明けだ。
「ぁ……っ、……っ」
マキアのビクトルの背を抱いた腕に力は入っていないし、一晩お邪魔した彼の腹の中はふわふわのどろどろで、たまにぴくりとするだけ。
「……、……」
最後に、ぐっと奥の奥にビクトルを押し付けられ、マキアは小さく震えて、かくりと力を失った。
途中からベッドに押し倒して、ずっとマキアと上半身は離れないように気をつけていた。眠ったマキアはそのままシーツに仰向けになっている。
「……はあー」
すうすうと寝息を立てるマキアを、ようやく満足するまで眺めて、ビクトルはしみじみと鍛えておいてよかったと思った。
「……すごかった」
天国と、ほんのちょっぴり地獄を見た。
ビクトルにもジタバタする体力はもうなくなったが、心はまだ跳ね回っている。
可愛かった、気持ちよかった。ともかく最高で……不安だ。
泣き濡れた顔を、そっと拭ってやる。
鏡のせいだというのは分かるが、一体どんな影響でこうなったのか。
半分は正気だろうというようなことは、マキア自身が言っていた。けれど、本当にビクトルとこんなことをして、後悔しないかは分からない。
マキアが傷つくことにならないか、ビクトルはそれが怖い。
さすがに疲れて、マキアを抱きしめてギリギリのベッドを使わせてもらい。
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