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第三話 本音を言うためのアップルパイ
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学校から帰ると、リビングでお母さんが洗濯物を畳んでいた。わたしを振り返って、おかえり、とにっこりする。
「その様子だと、いろいろ解決したみたいね」
「え? わかるの?」
「そりゃ、わかるわよ。芽衣が何もないで学校をサボるような子じゃないって、お母さんわかってるし。自分から話してくれるまで、待っていようと思ってたけど……その必要もなかったみたいね」
「――お母さん、昨日はわたしの気持ちなんてわからないとか、ひどいこと言っちゃってごめん。そもそもわたし、お母さんに何も話してこなかったのに……」
いつから、お母さんに自分の気持ちを言わなくなったんだろう。
たぶん、ぼっちになってからだ。学校はどう、と聞かれるたびに、いつもひとりだなんて言って心配させたくなったから、ふつう、とか、まあまあ、とか、適当に流していた。
でも本当は、お母さんとだって、ちゃんと向き合わなきゃいけなかった。
心配させたくないから、とかじゃなくて。大切な家族なんだから、親なんだから、自分のことを知ってもらおうと、努力しないといけなかった。
お母さんだって、学校にいる時のわたしのことは、知らない。だから、自分で話すしかない。
お母さんは少し思案顔になった後、語りだした。
「芽衣の頃はね、お母さんも実は苦労したのよ。芽衣の年頃の女の子って、インケンでしょう? お母さんは直接巻き込まれたことないけれど、いじめみたいなものもあったし。でもそんな目に遭ってる子を助ける勇気もなくて。そういうの、すごく嫌だったな」
「そう、なんだ」
意外すぎる。わたしとはぜんぜん違うキャラの、明るくてやさしいお母さんにそんな過去があったなんて、想像つかなかった。
当たり前だけど人はすぐ大人になれるものじゃないし、青春にはきらきらした明るい面もあれば、同じくらいどろどろとした暗い面もある。
大人たちが青春を振り返って「あの頃はよかった」っていうのは、なんか信用できなかったけれど、時が経てば思い出も美化されて、つらかったことを忘れてしまうものなのかもしれない。
でも本当はどの人にも、痛くてつらい青春の記憶があるんだろう。
「これからはつらいことや悲しいこと、学校に行きたくないと思うようなことがあったら、すぐ言ってほしい。どこまで力になれるかわからないけれど、お母さん、一緒に考えるから。それが親の役目だもの」
「……うん、ありがとう」
「というわけで、今夜はビーフシチューだから、芽衣も手伝ってちょうだい」
わたしは勢いよくうなずいて、お母さんと一緒にキッチンへ向かった。
これからのわたしの人生には、まだまだ大変なことがたくさんあるはず。友だちと喧嘩することもあれば、進路に悩むこともあるだろうし、またお母さんを心配させてしまうことだって、きっとあるだろう。
でもわたしは、もうぼっちじゃない。
まだ不器用だけど、一歩一歩、進んで行こう。
本当の意味で、ひととつながれる人間になれるように。
「その様子だと、いろいろ解決したみたいね」
「え? わかるの?」
「そりゃ、わかるわよ。芽衣が何もないで学校をサボるような子じゃないって、お母さんわかってるし。自分から話してくれるまで、待っていようと思ってたけど……その必要もなかったみたいね」
「――お母さん、昨日はわたしの気持ちなんてわからないとか、ひどいこと言っちゃってごめん。そもそもわたし、お母さんに何も話してこなかったのに……」
いつから、お母さんに自分の気持ちを言わなくなったんだろう。
たぶん、ぼっちになってからだ。学校はどう、と聞かれるたびに、いつもひとりだなんて言って心配させたくなったから、ふつう、とか、まあまあ、とか、適当に流していた。
でも本当は、お母さんとだって、ちゃんと向き合わなきゃいけなかった。
心配させたくないから、とかじゃなくて。大切な家族なんだから、親なんだから、自分のことを知ってもらおうと、努力しないといけなかった。
お母さんだって、学校にいる時のわたしのことは、知らない。だから、自分で話すしかない。
お母さんは少し思案顔になった後、語りだした。
「芽衣の頃はね、お母さんも実は苦労したのよ。芽衣の年頃の女の子って、インケンでしょう? お母さんは直接巻き込まれたことないけれど、いじめみたいなものもあったし。でもそんな目に遭ってる子を助ける勇気もなくて。そういうの、すごく嫌だったな」
「そう、なんだ」
意外すぎる。わたしとはぜんぜん違うキャラの、明るくてやさしいお母さんにそんな過去があったなんて、想像つかなかった。
当たり前だけど人はすぐ大人になれるものじゃないし、青春にはきらきらした明るい面もあれば、同じくらいどろどろとした暗い面もある。
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でも本当はどの人にも、痛くてつらい青春の記憶があるんだろう。
「これからはつらいことや悲しいこと、学校に行きたくないと思うようなことがあったら、すぐ言ってほしい。どこまで力になれるかわからないけれど、お母さん、一緒に考えるから。それが親の役目だもの」
「……うん、ありがとう」
「というわけで、今夜はビーフシチューだから、芽衣も手伝ってちょうだい」
わたしは勢いよくうなずいて、お母さんと一緒にキッチンへ向かった。
これからのわたしの人生には、まだまだ大変なことがたくさんあるはず。友だちと喧嘩することもあれば、進路に悩むこともあるだろうし、またお母さんを心配させてしまうことだって、きっとあるだろう。
でもわたしは、もうぼっちじゃない。
まだ不器用だけど、一歩一歩、進んで行こう。
本当の意味で、ひととつながれる人間になれるように。
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